……10億円があったら何ができたんでしょうねえ。
てゆーか、絶対10億かかってないでしょ、これ。だって、出てくるのはどっかのショッピングモール(何度も使い回し)に学校、商店街、
高級そうな住宅街、セットっぽい教会、どっかの林、どっかの海岸、それに田んぼ。ザッツオールなわけですよ。
「CGにお金取られちゃいましたー」と言い訳するつもりなんでしょうが、そのCGが涙を誘うくらいショボイときては――。
「テレビドラマだってもちっと凝ったロケハンすんじゃねーの」と誰もが思うであろう安っぽさに、ただただ呆然ですわ。
本作については公開前から、主演のジュノンボーイズが大根過ぎるとか、CGがプレステ並みで寒すぎるとか、ニワトリコスプレ&
乳を出さないシレーヌ、ガッデム!とか、無駄に熱演をかます大量のカメオ出演うざすぎるとか、
もう散々言われとるんでいちいち繰り返しませんし、繰り返す気力もないんですが、この作品について言われる批判、非難、
罵詈雑言に誇張はありません。
一 言 一 句 真 実 で す。
もうねー、普通の映画ファンには堪えられない内容と品質で、これを作品として胸を張れる人々の破廉恥さには二の句が継げませんって。
なんと言うか、映画以前に「お話」にすらなっていないんですから。ストーリーテリングがどうこうとかいうレベルではなくて、
5W1Hってあるじゃないですか、小学生が作文習う時に最初に教わる。
この脚本を書いた那須真知子はそこからやり直せっ!
と声を大にして言われたって仕方がないお粗末さなわけですよ。構成力の無さ、原作を理解する読解力の無さだけでも話にならないわけですが、
更に悪いことに、この那須真知子という人は、想像力というものを持ち合わせていないみたいなんですよね。
デーモンの大量出現によって、国家間に混乱が生まれ、遂にTVではニュースキャスター(なぜかサップ)が「日本が攻撃されました。
戦争が始まりました(なぜか英語)」と報じる事態に……。といった具合に、そこらじゅうの国と国が攻撃し合ってるらしいんです。
つまり第三次世界大戦が勃発してるわけですよ、核ミサイルを撃ち合ったわけですよ。
それなのに、次の家のシーンでは蛍光灯が皓々と灯り、以前と同様の変わり映えしない日常が平然と営まれてるんで、
観てるこっちの頭は???????なワケです。
もうね、ノリは湾岸戦争やイラク戦争で戦況を報じるニュースを茶の間で見ながら「この先どうなっちゃうの?(他人事)」
なんて呟いてるようにしか見えないんで、切迫感とかそういったものなんか醸されるわけがないんですよ。
これじゃ、那須真知子という人は、
ニュースの先に兵隊や市民が実際に死んでいるということを想像したことがなんじゃないかと疑いたくもなりますわな。
政府はどうなっているのかとか、戦時下の社会の混乱や人心の荒廃とか描くべきことはいくらでもあるのに、
そういう部分は完全黙殺(と言うか処理しきれてない)、
そのくせ群集心理と疑心暗鬼に駆られてデーモン狩りを始める人間という部分に焦点を無理矢理当ててるんで、
全体的に全く意味不明になっているんですよね。
しかもその場面の繋ぎ方が牧村一家の平穏な家族プレイ→デーモン跋扈&都市崩壊→牧村一家の平穏な家族プレイ→デーモン狩りの狂気、
といった具合に冗談みたいに単調に繰り返されるだけなんで、折に触れて挿入される壊滅した都市風景やデーモン狩りによる犠牲者の山、
というカタストロフ的な光景もとってつけたようにしか見えない有様。瓦礫と化した都市を徐々に俯瞰してみせられても、「……
なんでこうなってんの?」としか思えませんって。
台詞なんかも伝説化しそうな勢いで酷い。まともな演技ができない役者陣による相乗効果で、
もはや臭いを通り越して一発フリーズの極悪っぷり。稚拙とかじゃなくて、まさしく「幼稚」な表現のオンパレードで、
時々息を吐くのを忘れること請け合いですわ。
このように、無能な人々が奇跡のように集結しているんで、
(デビルマン造形デザインの寺田氏は除く)本作の失敗はするべくして失敗したという感じなんですが、最大の元凶は、
バイオレンス性が強い原作をPG12の枠内で収めようとした馬鹿げた戦略にありますね。
子供向けに撮りたいんだったらジャンプ漫画でも原作にすりゃよかったのに。今日日の子供は人間に裏表があることを熟知しているし、
そこら辺の青年よりも遥かに先鋭的に
人間や社会を見つめてたりするわけで。大人の中にしかいないような幻想上の子供を取り込むために去勢されたんじゃ、
デビルマンが不憫でなりませんです。
(2004.10.16)
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