(2003 / アメリカ / フィル・レイアネス)
18年前の忘れ物

百恵 紳之助

 O嬢とは実に18年振りの再会となる。
中学一年からもう18年の歳月が経ってしまったことに改めて驚いてしまうが、18年前のO嬢がどんな人だったのかはさっぱり覚えていない。
 初めて出会ったのは18年前の夏休みの暑い日だった。部活の練習を終えた坊主頭の中一のガキンチョ四人でビデオ屋に行ったのだ。
元々は普通の映画を借りてみんなで鑑賞するつもりだった。だが筆者の頭の中には、ある一本の洋画のパッケージがチラついていた。それが 「O嬢の物語」だ。アダルトのコーナーに行く勇気はなかったし「エマニエル婦人」はテレビで見たことがあった。「卍」 にはすでに騙されていた。残るは黒っぽい写真に目隠しされた女が椅子に座っている(確かそんな感じだった)「O嬢の物語」 しかなかったのである。。

 四人は誰も見たことがない作品という条件でそれぞれ一本ピックアップし、ジャンケンで勝った者のビデオを見るという話でまとまった (なにせ当時は一本千円くらいしたし)。みんな「ランボー」とか「ゴーストバスターズ」とか普通の映画を選ぶので筆者も「おいおいマジかよ・ ・・」と思いながらも仕方なく適当な洋画を選んでジャンケンした結果、筆者が勝った。「・・・」となる筆者。 気持ちはどんどんO嬢に傾いていく。「やっぱこれ見たくないからやめる。もう一回ジャンケンでいいよ」 と持ってまわった言い方ながらも素直になれない(と筆者が決め付けた)みんなに再びチャンスを与えたのだが、またも誰もO嬢を選ばない。 逡巡している筆者に次第に罵声が飛び、筆者はまたも普通の映画を選んでしまった。で、再びジャンケンした結果、 今度は別の奴が勝ってしまったので、すかさず「すまん、俺それ見てた」とウソをついてもう一回ジャンケンに持ち込んだ。

 仕方ないので、今度は恥を忍んでO嬢を差し出したところ、みんな百万ドルの笑顔を浮かべて「そんなの見たくないがなー」 と汚い鳥取弁でのたまいやがった。だがその後、 筆者が勝つまで連中はなんだかんだと上記と似たような理由をつけてジャンケンを繰り返したのだ。(俺、 遅出しだったからと全然遅出しじゃないのに言ったりしてた)あくまでO嬢でいいとは誰も言い出さなかった。時間にして二時間、 我々はビデオ屋でジャンケンを繰り返していた。ようやく筆者が勝ったとき、「結局それかいやー」 と連中はとても嬉しそうな顔で不満を漏らしていた。しかしさらにその二時間後(正確には早送りが多かったので一時間後)、 連中の不満は本物の不満に変わっており、筆者は罵詈雑言を浴びたのである。もちろんどんな話だったのかはさっぱり覚えていない。 と言うよりは、そんなものにはハナから興味がなかった。とにかくセックスシーンがとても少なかった。
動いている女の裸にたどりつくまでに、果てしない道のりがあった時代の話だ。

 で、18年振りに再会したO嬢だが、これがまったくなんつーか魅力的なオナゴじゃなかった。原作がどんな話なのかは知らないが、 この映画に出てくるO嬢は、単なる援助交際バリバリ女でしかなかったのである。 自分のスポンサーになってくれるんならちょっとくらいの変態趣味付き合ってあげるわよ。という女の話で、その快楽に溺れて行き・・・ なんてことも丸っきりなし。平気で流しているのだ。つーかむしろガンガン自分からという感じさえある。 SMシーンもセックスシーンも単調で18年前の忘れ物を取りに行った気分の筆者としては完全に期待はずれでありました。

 が、しかし。もしこの作品に18年前のあの日に遭遇していれば大変に満足しているデキだった。セックスシーンが単調とはいえ、 それは汚れ切った今見ているから当り前のことであり、オッパイ揉みしだき映像があれば勝ちみたいな18年前なら楽勝どころか、 画面に釘付け間違いなしだった。それくらいにはセックスシーン満載だったとは思う。 この手の映画につきもののある種の役割は充分に果たしたと言いたいところだが、今の13歳はこんなもんじゃ満足できねーか。まあ、 ようやく文芸ポルノは大人のものだけになれたのか。つってもこの作品じゃ誰一人幸福にはなれないけど。

(2004.6.28)

2005/04/30/19:08 | トラックバック (0)
百恵紳之助
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