村本 天志

ヤモリを家森と漢字で書くのか知らないけれど、
我が家には随分長く二匹のヤモリがいる。
いつも深夜に灯のついた仕事部屋の窓に張り付き
明かりに誘われた虫をぱくつくのを狙っている。
廊下の窓の庭に向けた灯にもう一匹がスタンバイしている。
たまにボンヤリしながらヤモリを見ていて
虫を食べる瞬間に出くわすと凄く得した気分になる。

さて何故か二匹の間に子供が生まれ
家の中に子ヤモリが現れるようになった。
しかしさすがに家の中には生き餌はいないから
死んだら嫌だなと思っていたが、そうそうすばしっこい、
まして小さなヤモリを捕獲するのは困難である。
ある晩、水を飲みにきたのかバスルームで子ヤモリに遭遇。
オレはチャンスだと思いなんとか、柔らかく捕まえ外に逃がした。
子ヤモリよ、しっかり生き餌食べて元気に育て！
そして我が家を守り続けてくれ！
庭の蚊を全て食べ尽くしてくれ。
今どき下北沢で玄関先に蚊取り線香焚いてるのは家くらいなもんだ。
隣家の池のせいらしいが。
育て！子ヤモリ！
また深夜型生活に戻ってしまった。
うだうだと何軒も梯茶する日々。
周りだけが酔っていく。
財布が軽くなっていく。
入るものなく出ていくばかり…ひたすら不毛な夏である。