新舌先三寸日記
CFディレクター/映画「MASKDE41」監督

村本 天志

声をなくして癌で声をなくした作家がいる。永沢光雄氏。
多分3年前…いや4年前かな…永沢さんの短編集を
オムニバスの連作映画みたいなものにしたくて、
映画化の許可を頂きたく突然電話して、
氏の住む新宿二丁目に押し掛けた。
まだ日の高い夕方に二丁目の通り沿いで待ち合わせ
……それから5軒くらい梯した。
3軒めからは明るく朗らかな奥様も合流したと記憶している。
無口な永沢さんと酒を飲めないオレの間に入って愉快な夜にしてくれた。
確か最後に入った店のカウンターで

『あの小説はあなたにあげます。最初に電話で声を聞いた時に決めてましたから。』

と照れたように言って下さった。
声を聞いた時に決めた……?
オレは恐縮しまくり薄く作ってもらった焼酎を何度も口に運び、
ひたすら感謝を述べた。
どこの店に入っても永沢さんは常連で、
必ず『オレの小説を映画にしたいって監督……』とオレを紹介した。
そうすると、ことの他喜ぶのは店の美形の男達であり、
永沢光雄作品が、永沢光雄氏が
この街でいかに愛され大切にされているかが伝わってきた。

以来……オレは新宿二丁目を訪ねていない。
不義理をただ続けている。
昨年、映画がようやく公開されたので失礼ながらTicketを送った。
届いた、ありがとう……の手紙に、
僕と会ってしばらくして癌になり声をなくした事が書いてあった。
オレはその手紙を読みハラハラと泣いた。
なんとも暖かいユーモラスな手紙だった。
オレを友人と書いてあった。
たった一晩酒を飲んだだけなのに友人になれることを知った。
一年が過ぎ……永沢氏の記事を朝日新聞で見つけた。
知り合いの出版社で永沢氏が再び筆を取ったことは耳にして、
コピーを少もらっていた。
その文章が本になるという記事であった。
オレは嬉しくなりその夜ファックスを送った。
手紙にするのが照れたからだ。しかもたいした文章ではない。
今、オレの手の中には永沢光雄『声をなくして』 (昌文社・刊)がある。
相変わらずやさしくユーモラスで、
映画に例えるならマイク・リー監督作品のような小さな手応えのある文章である。
もし、人生についてのささやかな事柄について
何か読んでみたくなったら永沢光雄作品を読めばいい。
小さな小さなロウソクの灯のような話が散りばめられている。
そして、オレは永沢さんとの約束を果たせないままでいる……
だからオレはまだ新宿二丁目に住む大切な友人に会いにいけない。

2005/06/15/13:14 | トラックバック (1)
村本天志 ,新舌先三寸日記
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