村本 天志

その日はかなり気分的に消耗していた。
朝一番からのスタジオでの改訂作業の上（寝不足である）、
ポケットの中が寂しいもんだから大人買いもできず、
暇つぶしに入ったショップでもただ眺めるだけ。

次の打ち合わせが三時からで、三時間空いた。
空腹でもないが文明堂でバウムクーヘンとミルクティ。
ひたすら路地を歩き、あと二時間……。

コリドー街まで来た。
来たけどあと二時間は潰せそうにない。
どうしよう……。

またぐるぐる路地を歩く。
昔の銀座らしい小さな路地があり入ってみた。
感じがいい店が並んでる。
このあたりは夜の路地だからどこも開いてはいないのだが、
ちいさなjazz&coffeeの看板を見つけたので、
まさかな……と思いつつも地下に降り扉を開ける。
いきなりトランペットの大音量が迎え入れてくれる。
中には常連らしきベテランjazzファンの煙草の煙。
パイプふかしてる人までいるし……。

レコード盤サイズのメニューは、
手書きの雰囲気といい内容といい、これぞ正調jazz喫茶、である。
coffeeを注文。
出てきたのは、あの懐かしい酸味のある不味いやつ。
水道水な感じのコップのお冷やもまんまだ。
マイルスががんがんかかってる。
内装もソファーも砂糖壺もスイングジャーナルも曲間の盤のパチパチも、昭和の世界。

さすが銀座。

しかしこんな店知らなかったなぁ。

ムラモト☆☆タイシ