以下の文章は、ジェット・リーとジェイスン・ステイサム主演『ローグ・アサ シン』鑑賞後の、あるアクション/クライム・ムーヴィー・ファンの二人―― 仮に黒岩と大門と呼びます――の雑談の抜粋であります。
大門 いやあ、クロさん、どーすか?あのオチは?
黒岩 フムー…コレだけのカードが揃ってる割に前評判がよくなかったのが気にはなっていたんだが、思いのほかスカっとしない仕上がりだったな。まあ、相変わらず「弱肉強食」とか「掃き溜めに鶴」とかよくわからない掛け軸が飾ってある東洋人街を舞台にヤクザ、警察、殺し屋が入り乱れての大戦争と、脳ミソは家においてきて楽しむべき映画なのに、やけに考え込まされてしまう感じで。
大門 しかし、その無茶苦茶なディテールもあまり振り切れてませんでしたね。そこを渋いと、言っていいのかいけないのか。『ロック、ストック&トゥースモーキングバレルズ』のステイサムとジェット・リー、それにデヴォン青木に石橋凌、ケイン・コスギと揃ってますからねえ。みんなソコソコ暴れどころはあるんですが…全部ソコソコなんですよ。デヴォン青木はあの長い手足をふりまわしてナンボだろと思うんですがね。
黒岩 まあ、ケインは今までに比べて幾分顔が締まってカッコよかったけどな。とはいっても、実質アクションタイムは3分あるかないかという…。まあ、彼らの扱いはともかく主役の二人がいまひとつ活かせていない感じが否めなかったな。
大門 あれだけ動ける役者集めつつ、つい銃撃戦とかカーチェイス入れたがる辺りハリウッドの悪い癖ですかね。
黒岩 もっとカラダ張れよと。ステイサムも日本語に挑戦する前に挑戦するものがあるだろうと(笑)。なんじゃ、あの「ホネダッタ。ゴメン」っつーのは(笑)。
大門 いやあ、まったく何言ってるか聞き取れませんでしたね。それに比べるとデヴォンの日本語の流暢なこと。
黒岩 思いっきり吹き替えだったじゃねえか!イヤミか(笑)。まあ、その日本語も、なんだかいわゆるアニメ声で違和感ありありだったな。作品全体としては、お笑いやぶっ飛びに逃げずに、ハード一辺倒で押してくる辺り監督の確信のようなものが見えて好感が持てたが、そこを支えるにはやはり骨組みがモロかったな。これは、細かい日本の描写やアクションの仕掛けなんて瑣末な点にこだわる以前の問題だろうね。まあ、件のドンデン返しも含め、主人公二人が行動することでストーリーを紡いでいく感じではなくて、プロットに飲まれてしまっているという感じが最後まで残ったというのが正直なところ。
大門 確かに、冒頭の小気味いい演出に画面に惹きこまれたのが、時間が経つにしたがって乗れなくなってくるんですよね。あれ、こんなはずじゃないのにみたいな。監督のフィリップ・G・アトウェルがMTV出身の技巧派というのも裏目に出てしまいましたね。
黒岩 心地いい驚きではなくて、まさかこんな趣味の悪いことにならねえよなってタカをくくってると本当にそうなってしまうという。まあ、ぶっちゃけ、話ヒネる前に、他にこだわったほうがよかったんではないかと思うね。
大門 それはやっぱり、肉弾戦ですか。
黒岩 その通り。最近はびこってる、最後はハチャメチャに逃げちゃうなんちゃってアクション映画に比べれば500倍は高い志の映画だったことは認めるよ。ただ、それを提示するにあたって、やけに小賢しいプロットを用意してしまったのが残念な結果になったと思う。この映画に足りなかったのは唯一、熱狂ですよ。考える前に突っ走るという熱狂ですよ!
(2007年10月某日 西部新宿駅構内・「イタリアン・トマト」にて)
(2007.10.23)
ローグ・アサシン 2007年 アメリカ
監督:フィリップ・G・アトウェル
脚本:リー・アンソニー・スミス,グレゴリー・J・ブラッドリー 撮影:ピエール・モレル 美術:クリス・オーガスト
出演:ジェット・リー,ジェイスン・ステイサム,ジョン・ローン,デヴォン青木,石橋凌,ルイス・ガスマン 他
配給:アスミック・エース=東映 (c) 2006 Lions Gate Entertainment, All rights reserved
2007年10月6日(土)東映系にて全国ロードショー
主なキャスト / スタッフ
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