ATG映画大特集
( 2007年11月3日(土)よりシネマート六本木にて開催 )
ATG映画特集上映開催に寄せて

わたなべ りんたろう

 

ヒポクラテスたち『ヒポクラテスたち』(C)1980 ATG 11月3日から11月いっぱいにかけて、六本木シネマートでATG映画の特集上映が行われる。この特集上映に関わっている者としての依頼をうけたので、序文になるようなものを書いておきたい。
まず、今回の上映は日本映画の貴重な財産でもあるATG映画をスクリーンで観る機会を提供するのが大きな目的である。年配の方にはリアルタイムでATG映画をスクリーンで観てきた方もいると思うが、今の若い人は多くがビデオやDVDで見たことはあっても、スクリーンでATG映画を観たことはほとんどないだろう。やはり映画はスクリーンで観てほしいこともあるので、是非、この機会に観にきてほしいと思う。そのための第一弾として、まずスクリーンで体験してほしいATG映画の代表的な作品を揃えている。今回の特集が成功すれば、まだ続いていく特集なので、多くの人に来ていただきたいし、周りの方にも知らせてほしい。

ガキ帝国『ガキ帝国』(C)1981 ATG ここで簡単にATG映画の歴史を振り返っておこう。まず、良質のアート系映画をより多くの人々に届けるという趣旨のもとに「日本ア-ト・シアター運動の会」が作られ、この会が発展してできたのがATG(アート・シアター・ギルド)である。始めの活動は良質ながら興行的判断で日本では上映されなかった洋画を公開することだった。そのときの作品には「尼僧ヨアンナ」、「去年マリエンバードで」、「8 1/2」などがあった。60年代から70年代始めの学生運動やベトナム反戦運動、自主演劇などの盛り上がりに加えて、中心になった映画館の新宿文化がある新宿が若者文化の中心となっていて、時流が一致したこともあり、話題の映画の上映となると満員の盛況であった。やがて、松竹を飛び出した大島渚監督が作った短編「ユンボギの日記」の上映が成功したこともあって、三島由紀夫の短編「憂国」をブニュエルの「小間使いの日記」と組み合わせて公開すると、ATG始まって以来の大ヒットになった。ここから、1000万円という枠組みの製作費で作り手の自由を最大限に尊重する「ATG映画」が製作されることになっていった。この中には、今回の特集でも上映される羽仁進監督の「初恋・地獄篇」、松本俊夫監督の「薔薇の葬列」などがあった。これらの作品は低予算から製作には困難も伴ったが、多くの作品がキネマ旬報ベストテンに選定されるなど高い評価を受けていった。初恋:地獄篇『初恋:地獄篇』(C)1968 ATG
薔薇の葬列『薔薇の葬列』(C)1969 Matsumoto Production
やがて、新人の監督第一作も撮らせるようになり、その端緒が長谷川和彦監督の峻烈な傑作「青春の殺人者」であった。長谷川監督は今村昌平監督や神代辰巳監督の助監督出身だったが、ピンク映画出身の高橋伴明監督の「TATTOO<刺青>あり」や井筒和幸監督の「ガキ帝国」、学生映画出身の大森一樹監督の「ヒポクラテスたち」や石井聰互監督に「逆噴射家族」などにも監督の機会をATGは与えていき、後の日本映画を担う多くの人材が育っていった。森田芳光監督の「家族ゲーム」や配給のみ担当した伊丹十三監督の「お葬式」などのヒット作もあったが、1992年の新藤兼人監督の「墨東綺譚」(墨は本来旧字体のサンズイに墨)を最後に活動を停止した。

 公式Webの以下のページにもあるように、多くの豪華なゲストを迎えたトークショーなどのイベントがあるので、気軽に観に来てほしい。今の日本映画にはない輝きを持った映画に出会えるのだから。

(2007.10.30)

2007/10/31/16:10 | トラックバック (1)
わたなべりんたろう ,ATG特集
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