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少女ヨジンとともにめぐる旅。
その純粋なまでの残酷さが心に焼きついて離れない。

サ マ リ ア

サマリア

http://www.samaria.jp/


ふたりの少女の憧れにも似た友情が導く、 美しく残酷な物語
女性なら誰でも覚えがあるであろう、少女の頃の親友との関係。 まるで世界にふたりしか存在しないかのように、つねに行動をともにし、まだ異性への恋も知らずに、 憧れに似た感情を互いに抱きあう。
そんな絶対的な信頼関係のままに、 ふわふわと漂うように本作の主人公であるヨジンとチェヨンは援助交際をし始める。
客を取る事をさして問題とせずに、屈託のない笑顔でインドの伝説の娼婦バスミルダ気取りのチェヨン。 そんな親友を心配して見張り役を買って出たヨジンだったが、 チェヨンが客のひとりに恋をしたことにより、チェヨンが恋する相手への嫉妬、 そして親友においてゆかれてしまうことへの不安といった複雑な感情を抱きはじめる。
代の少女の心の動きを丁寧に切り取ることで、 ヨジンとチェヨンの普通の女の子としての姿を刻みこむ。 それがその後の悲劇的な展開をより残酷に彩ることとなる。


世界三大映画祭制覇にもっとも近いキム・ギドク監督が放つ、
ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞の最高傑作

さまざまなジャンルでヒット作を続出させている韓国映画だが、その中でもキム・ ギドク監督は異色な存在だ。韓国ではテレビの討論番組に出演し、 若者たちの間ではカリスマ的な人気を誇る一方で、『魚と寝る女』『悪い男』と作品を発表するたびに、 そのスキャンダラスな作品世界が賛否両論を巻き起こしてきた。しかし、前作『春夏秋冬そして春』 では人生を四季にたとえて美しく描き、全米・ヨーロッパでもヒットを記録。 早くから各国の国際映画祭で注目されてきたオリジナリティと確かな演出力に加え、 映像美も高い評価を集めた。
その作家性を確固たるものとしたのが、 本年度ベルリン国際映画祭で最優秀監督賞である銀熊賞を受賞した本作『サマリア』である。
サマリア1を犯してしまった少女たちに対する、 独自の人生観に裏打ちされた温かな視線。そしてギドク監督が「内面に怒りを抱え、 その憤りに震える季節」と定義する秋を物語の舞台として選んだ、 その映像の美しさはさすがである。
以前より、ヨーロッパでの評価が高い監督ではあったが、本作はパリでは最大のシネコンで初日を迎え、 その後はペドロ・アルモドバルやクェンティン・タランティーノ監督作品のセレクトで定評ある劇場で、 カルト的人気を誇る作品としてロングラン上映され続けている。本作に続く『3-Iron(空き家)』 も先ごろ開催されたヴェネツィア国際映画祭で、銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞するなど、 いま世界がもっとも注目をする監督のひとりであることに間違いない。


ヨジン、チェヨン、そしてヨジンの父。 三人の視点から描かれた三部構成
本作『サマリア』は一つの物語が三つの章に分けて語られており、 それぞれに印象的なタイトルが付けられている。
まず第一章「バスミルダ」。インドの伝説の娼婦の名前が付けられたこの章では、 ヨジンとチェヨンそれぞれの視点で友情が語られる。続く第二章「サマリア」は、 聖書に登場する"サマリアの女"をモチーフに、親友を失い独りになったヨジンが自らを見つめる。 そして第三章「ソナタ」では、娘の行いを知った父ヨンギの苦悩に焦点が絞られる。 ちなみにソナタとは交響曲の三部形式のことを指すが「バスミルダ」「サマリア」 で奏でられたそれぞれの主題が「ソナタ」でひとつに終結してゆく様は、まるで交響曲そのもの。 三部構成の見事さを感じさせる。ちなみに「ソナタ」は韓国の大衆車の名前でもあり、 第三章は韓国の社会常識という視点から描かれた、とも言えそうだ。


純真な狂気を秘めた、ふたりの女優
キム・ギドク監督は、 これまでも無名でも魅力ある人物をキャスティングするためにオーディションを重視してきた。本作 『サマリア』は十代の少女ヨジン、そしてチェヨンとして役柄を生きてくれる女優を探すことに専念し、 ヨジン役にはクァク・チミン、チェヨン役にはソ・ミンジョン(現在ハン・ ヨルム)という二人の新人女優を大抜擢した。
チェヨン役のソ・ミンジョン(現在ハン・ヨルム)は、母性と子供っぽさを併せ持つ笑顔が印象的。一方、 ヨジン役のクァク・チミンは演技の枠を超えて、十代の危うさと、 女性への成長の記録をダイナミックにフィルムに刻みつけた。 精神的にも肉体的にも演じることが困難な役柄に果敢に挑むことで、彼女たちが醸し出したのは、 純真さの中にこそある狂気。それが『サマリア』を美しく残酷に加速させる結果となった。


ヨジンは父と二人暮らしの女子高生。彼女の親友は同級生のチェヨン。
いつからだろうか、援助交際をしている。
ヨジンはそれを嫌いながらも、チェヨンが心配で見張り役として行動をともにすることに。 そんな矢先ヨジンが見張りを怠った隙にホテルに警官の取締りが...その手から逃れようとチェヨンは窓から飛び降りてしまう。
いつもどおりの笑顔を浮かべたままチェヨンは死に、ヨジンはひとつの重大な決心をする。
「チェヨン、あなたの罪滅ぼしのためにお金を返してあげる」
そして、そんな自分の行動を父が見守っていることに、ヨジンはまだ気づいていない...
親友の死から始まったちいさな掛け違いは、 少女ヨジンを成長と罪の償いというサマリア2名の旅へと誘う。
先には果てしない絶望しかないとしてもすべてを受け入れ、未来へ向かって歩き始めるヨジン。
いつしか観る者も旅の同行者として、ヨジンの瞳に映る小さくも確かな希望を道しるべに、 まだ誰も到達したことのない結末を心に焼き付けることになるだろう。


ソ・ ミンジョン(現在ハン・ヨルム)(チェヨン役)
1983年10月25日生まれ。
高3の時、ソウルの繁華街ミョンドンで遊んでいるところを雑誌記者にスカウトされる。 数々の雑誌の表紙を飾りCMに出演しながら、演技の世界へ進む。インターネット映画、ドラマ 「サンドゥ、学校に行こう」、「ニューノンストップ4」に出演。以前からキム・ ギドク監督作品が好きだったため、『サマリア』のオーディションには大きな期待を持って挑んだ。 実年齢よりもベビーフェイスで、オープンなキャラクターが監督の思うチェヨンのイメージと一致し、 役を射止めている。撮影中は、チェヨンにしっかり同化したいと思っていたが、監督から「そう、 そんな風に笑ってて」と言われるたびに、 キャラクター作りよりも自分とチェヨンとの境がなくなってゆくことが不安になり、 役に向き合うのが恐くなったほど。チェヨンの笑顔の裏にある悲しみを、みごとに表した。
『サマリア』後に映画のオファが押し寄せたが、次作は未定。その一方で、 念願のファッションの勉強を始めている。

を売る行為を通じて、 男性たちに仏教の教えを伝えたというインドの女性、パスミルダ。 21世紀におけるパスミルダの再現ともいえるチェヨンは、 友人ヨジンとヨーロッパ旅行に行く費用のために、ためらいなく体を売る女子高生だ。
彼女にとって体を売るつかのまの時間は、相手の男性と共感する瞬間であり、 ほんの短い時間であったとしても、生を共にする大切な時間だった。温かな母性愛で、 自分と関係した男性を包み込むチェヨン。ヨジンは客の男たちを不潔だと感じるが、 彼女はそんなヨジンを逆に慰め、いたわる。



 

イ・ オル(ヨジンの父親ヨンギ役)
1964年4月5日生まれ。
大学在学中から小劇場の舞台に立ち、シェークスピアや韓国の若手作家の作品など演劇の世界で長く活躍。 90年代より、『49日の男』('94/未)、イム・ゴンテク監督の『祝祭』('96) と映画にも出演するようになり、'01年にイム・スンレ監督の『ワイキキ・ブラザース』 に主演に抜擢される。地方周りのミュージシャンの悲哀を表現し、大きな注目を集めた。 これがきっかけとなり、本格的に映画界に進出。'02年には『純愛中毒』でイ・ビョンホン、イ・ ミヨンと共演。兄弟と1人の女の間の複雑な愛情関係にあって、静かで揺るがぬ愛を捧げる夫を演じた。 また同年、心理ミステリー『H』にも出演。'03年は新人監督ヨン・イの『春の熊は好きですか』(未) で、大人の恋を演じた。どの作品でも、精神性の深い、安定感のある演技力を発揮。 今や韓国映画界になくてはならない演技派俳優だ。最新作『レッド・アイ』では、再びクァク・ チミンと共演している。

と死別した後、 娘と二人暮しをする刑事。ヨジンの父親。
毎朝、朝寝坊の娘を起こして学校に送り出すことと、 海外のニュースを娘に語って聞かせることがその日の一番の楽しみという、 愛情こまやかな父親である。
殺人事件の起こったホテルで、偶然娘を目撃し、たいへんな衝撃を受ける。 そのショックと娘に対する失望はやがて怒りに変わり、 この世の中と援助交際をする男たちに向けられる。 彼の行動により物語は引き返すことのできない悲劇へ向かって走り出す。



 

クァク・ チミン(ヨジン役)
1985年2月13日生まれ。
言葉を使う仕事をしたい、と高2のときに母親を説得し芸能界に入る。ドラマ「私の美しい初恋」、 「ちゃんと生きろ」、映画『狐階段』に出演。高3で『サマリア』のオーディションを受けたが、キム・ ギドク監督作品はほとんどが韓国では18歳以下観覧不可のため、それまで一本も見たことがなかった。 オーディションでは、外見と内面のアンバランスさが鬼才監督の心を捉え、初の大役を得る。彼女は、 撮影直前までキム・ギドク監督を「周りからいろいろ聞かされ、恐ろしい監督かもと怖じ気づいていた」 と言う。
'03年10月に11日間で撮影が順調に完了。彼女がモデルになったポスターが、 センセーショナルな話題を振りまいた頃には、彼女自身は受験勉強に没頭していた。 '04年2月には今作がコンペ部門に出品され、十代の韓国人俳優として初めて、 ベルリン国際映画祭のレッドカーペットを踏んだ。この時世界のマスコミから、 韓国人初のヴェネチア映画祭主演女優賞受賞俳優にちなみ、"第2のカン・スヨン"と呼ばれた。 ベルリン映画祭監督賞受賞後は、「気持ちがすごく軽くなった。 高校の友人たちの誤解もすっかり融けたみたい」とコメントしている。 ベルリン映画祭のため高校の卒業式には出席できず、殺到するオファには受験勉強で応えられなかったが、 大学進学後に芸能活動を再開。ドラマ「恋をしようか」、韓国で'05年公開予定の映画『レッド・アイ』 に主演している。

ジンは父親と二人暮らしで純粋な心を持つ少女。 チェヨンの代わりに援助交際の約束を取り付け見張りをし、お金の管理をするが、 金で女子高生の体を買おうとする男性たちを憎悪している。しかし、チェヨンが死んだ後、 彼女が出会った男たちにお金を返すことで、彼らを許すようになる。男たちはヨジンと出会うことで、 生の真の意味を悟る。


ヨンギ(ヨジンの父) イ・オル    Young-gi, Yeo-jin's father LEE Uhl
ヨジン クァク・チミン        Yeo-jin KWAK Ji-min
チェヨン ソ・ミンジョン(現在ハン・ヨルム)  Jae-young SEO Min-jung
センサー商1 クォン・ヒョンミン   Censor Seller 1 KWON Hyun-min
ミュージシャン オ・ヨン       Musician OH Young
爽やかな男 イム・ギュノ       Neat Guy IM Gyun-ho
タフな男 チョン・ユンソ       Tough Guy JUNG Yoon-soo
ラッキーな男 イ・ジョンギル     Lucky Guy LEE Jong-gil
自殺する男 シン・テッキ       Guy who kills himself SHIN Taek-ki
殺される男 パク・チョンギ      Guy who get killed PARK Jung-gi
センサー商2 キム・グィソン     Censor Seller 2KIM Gui-seon
30代の男 ソ・スンウォン      Guy who is in his thirties SEO Seung-won


監督、脚本 キム・ギドク   Written and Directed by KIM Ki-duk
製作総指揮 キム・ドンジュ  Executive Producer KIM Dong-joo
       キム・ユンホ  Co-Executive Producer KIM Yoon-ho
プロデューサー ベ・ジョンミン  Produced by BAE Jeong-min
撮影 ソン・サンジェ       Cinematographer SUN Sang-jae
照明 イ・ソンファン       Lighting LEE Sung-hwan
編集 キム・ギドク        Editor KIM Ki-duk
美術監督 キム・ギドク      Art Director KIM Ki-duk
音楽 パク・ジウン        Music PARK Ji
衣装・メイクアップ イム・スンヒ Costume & Make-up LIM Seung-hee
録音 ソン・イェジン       Recording SONG Ye-jin
助監督 ジャン・チャルス     Assistant Director JANG Chul-soo
ライン・プロデューサー ジョン・ヒュン  Line Producer JEONG Hyun

『サマリア』ノベライズ / アドニス書房
関連書籍「キム・ギドクの世界?野生もしくは贖罪の山羊?」/ 白夜書房
『サマリア』Samaritan Girl
2004年 / 韓国 / ヴィスタ / SRD / 1 時間35分 / 字幕翻訳 : 根本理恵 / R-15
提供 / ハピネット・ピクチャーズ、東芝エンタテインメント、テレビ東京、テレビ大阪
配給 / 東芝エンタテインメント
公式HP

 

2005/04/28/22:55 | トラックバック (1)
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