ええ、持ち球としましてはいわゆる一つの真っ直ぐのストレート、曲がるカーブ。にですね、ええ、振りのスィング・・・はないですね。
ま、彼らはですね、どんなボールを投げても一流と。ええ、そう認識しております。あ、今度はスクリューボールですか?ほう。ウチのですね、
あの左のサウスポーの、ええ高橋尚ですか。彼なんかもスクリューボールは投げるんですがね。ええまぁ、結果は出てませんが。ま、
それほどにですね。スクリューボールというのはですね。ま、ディフィカルトといいますか。ええ。彼らがそんなスクリューボールを持ったと。
これはですね、私としても是非一度味わってみたいなと・・・。
本作品はスクリューボールコメディという振れ込みだが、
スクリューボールコメディとは一体どんなジャンルのことなのか筆者も正確には言えない。大雑把に言って、
上流階級の風変わりな男女がおりなすラブコメと言っておく。キャプラの「ある夜の出来事」とかホークスの「赤ちゃん教育」
などという映画がそのジャンルの代表的な作品とも言われている。ちなみに野球のスクリューボールからきたとも言われており、
野球のスクリューボールとは、どんな変化をするのやら投げてみないとよく分からんといったような球だ。
そうするとスラップスティックコメディともそんなに変わらんじゃんとも思うのだが、体で笑わせる違いと言葉で笑わせる違いである。
大雑把に言って・・・。で、そのジャンルをコーエン兄弟が撮ったと。
「弁護士さんは歯が命」なやり手の離婚訴訟専門弁護士ジョージ・クルーニーと、
金持ちバカ男を騙くらかして財産をふんだくろうとするキャサリン・ゼタ・ジョーンズが騙しあいまくり、やがては・・・。と言ったお話しだ。
ウィットに富んだ会話、二転三転するストーリー!なんて使い古しの売り文句がつきそうだが、確かにセリフは面白い。
そしていつものごとく脇役たちが濃い味出していてかなり笑える(特にビリー・ボブはケッサク)。でも物語がちっとも面白くないのだ。
あまりに予定調和というのか先が読めるというのか、いや予定調和大いにケッコーなんだがスクリューボールというよりはションベンカーブ。
予定調和ならば剛速球を投げ込んで欲しいものですよ。
二人の騙しあいはガンガンやってくれてケッコーなのだが、騙しあいが始まるのがちょっと遅いんじゃないだろうか。
そりゃ二人が延々と騙しあってるのも飽きるかもしれないし、前半のエピソードがないと困るのだが、この二人一応離婚訴訟で食ってきた、
なおかつそれを楽しんでる男&計画離婚のプロの女というある意味「離婚」というもののプロフェッショナル同志の対決なわけでしょう。
それまでの自分にもうちっとプライドというか意地みたいなものがあって、互いに宿敵見つけたり!なんて思ったりしないかな?で、
ダマくらかし合戦してるうちに、いつの間に惹かれあっていた。「あ、運命の人だった」なんて思うんじゃないだろうか。
離婚のプロが結婚してしまった。で、そんな二人が離婚したら互いに全財産は寄付するなんて婚前契約を結んでおしまい。
やっぱり離婚よりは結婚だよねー!なんて気持ちにさせてくれるジャンルではないのだろうか。全くそんな気持ちになれないどころか
「正直不快っちゃー不快?」みたいな悪態の一つでもつきたくなるのである。原因は全てキャサリン・ゼタ・ジョーンズの役だ。
はっきり言ってこの人、悪女には見えるのだが、ホントにこれじゃただの悪女でこんな女ぶち殺してやりてーとしか思えないのである。
それが確信犯なら文句は言えないが、
ラストに二人が結ばれるというオチを用意しているのであればやはりホンマモンの性悪女ではちょっと困ってしまうのだ。
キャラクター作りが足りないのか、演技が下手なのか、本人自体がこの映画の題材である「婚前契約」をマイケル・
ダグラスと結んでいるくらいのダサイ女だからか、おそらくその全てが原因なのだろうが、全く魅力的に描かれていないのである。
だからラスト二人がくっついても「ウソでしょー!まだ何か企んでるでしょー、この女」と思ってしまう。悪い意味で。
どうせならホントに確信犯で悪女にしてまたまた騙して欲しかったくらいである。
男から見ればこのジャンルの映画には(ま、どのジャンルでもだけど)
特に魅力的な女を用意して頂かないと全くを持って不快な気分になるだけであったのだが、ひょっとしてコーエン兄弟はこの「婚前契約」
という言わば愛の保証の契約というヤボの極地のようなことを実際にしたキャサリン・ゼタ・
ジョーンズを最初から魅力的に描く気はなかったのかも知れないとすら思ってしまうのでありました。
(2004.4.25)
主なキャスト / スタッフ
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