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『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』
ジャパンプレミア舞台挨拶レポート

『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』ジャパンプレミア舞台挨拶レポート http://herbanddorothy.com/jp/

2013年3月30日(土)より新宿ピカデリー他、全国順次ロードショー!

現代アートのコレクションというごく小さな世界を描きながら、普遍的な感動を呼んで2010年に日本でもロングラン・ヒットを記録したドキュメンタリー映画の続編『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』のジャパンプレミア試写会が、3月26日に新宿ピカデリーにて行われた。(取材:深谷直子)

ドロシー・ボーゲルさん
ドロシー・ボーゲルさん
前作『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』(08)は、NYに暮らすともに公務員のハーバート&ドロシー・ボーゲルさんご夫婦が、「お給料で買えること、アパートに収まるサイズであること」を基準にこつこつアート作品を集め、やがて全米有数のコレクションとなる様子を描いたもの。ふたりの姿に感銘を受けたNY在住の佐々木芽生監督は、映画作りの経験もないままにカメラを回し始め、苦労の末に1本の映画を作り上げた。無名の監督の作品ながら多くの映画祭で絶賛を受けたが、日本では有志の力によりようやく公開へ。しかしふたを開けると驚きに満ちた夫婦の物語が幅広い層へと伝わっていった「つながり」でできた映画だった。
今作はハーブさんとドロシーさんが膨大なコレクションを全米50州の美術館に50作品ずつ寄贈するという「50×50プロジェクト」を追うことから始まる作品。NYを飛び出すこの壮大なチャレンジに、佐々木監督がクラウドファンディングで寄付を募ると、日本でもじわじわと「コレクター」(出資者)は増えて最終的には915人、目標金額の1000万円を突破する1463万円が集まった。実は製作中にハーブさんの逝去という悲しい出来事にも見舞われたが、それを乗り越えて映画を完成させた佐々木監督に、この大きな人の力はとても励みになっただろう。日本を訪れることを夢見ていたドロシーさんの渡航費用もここから捻出され、佐々木監督に寄り添われたドロシー・ボーゲルさんと、サプライズ・ゲストとして映画コメンテイターのLiLiCoさんが舞台挨拶に登壇した。

佐々木芽生監督
佐々木芽生監督
あたたかい拍手に迎えられた佐々木監督は、「前作を作ってから2本目を完成させるために、結局同じ4年間かかってしまいました。でも今回の映画が1作目と全然違っているのは、世界中から1900人近いみなさんの応援をいただいて完成させ公開することができたことです。心から感謝しております」とお礼の言葉を述べた。
ドロシーさんは、登壇のときにはピンクの杖をついてゆっくりと歩いていたが、佐々木監督からマイクを向けられると好奇心たっぷりに会場を見渡し、「みなさん、今日はご来場いただきましてありがとうございました。この映画の製作費の一部と、私の渡航費を寄付によってサポートしていただき、こうしてみなさんに会えて嬉しいです。桜も楽しみました。人生でいちばんエキサイティングな出来事です」と、映画でのハーブさんとの会話を思い出させるよく通る声で挨拶した。
前作から熱烈にこの映画を応援してきたLiLiCoさんは、「前作でハーブさんとドロシーさんに惚れてしまい、監督がもう1本お作りになると聞いて私も一緒に応援したいとずっと思っていました。おふたりの夫婦愛、アートに対する愛はもちろんですが、ドキュメンタリーは監督が追いかけるというパターンが多い中、佐々木監督はともに生きているという感じがして、そこにもすごく感動しました。素晴らしい作品です」と最後には涙声で想いを語った。
佐々木監督も前作の公開時のことを振り返りながら感極まったようで、「こんなちっちゃな、と卑下するわけではないんですけどドキュメンタリー映画が、まさか新宿ピカデリーのような大きなところで公開させていただけるなんて信じられないことです。1本目の映画を日本に持ってきたときは、配給会社の方に断られ続け、『絶対に成功しないから、おカネを損するだけだからやめなさい』って言われたのが、今回はたくさんの方に支援していただいて奇跡のようだと思います」と噛みしめるように語った。さらに映画の完成を待たずにこの世を去ってしまったハーブさんに想いを馳せ、「ハーブは残念ながら一緒にここに来てみなさんにご挨拶することはできなかったんですけど、ハーブの魂はきっと私たちと一緒にいてくれていると思います。亡くなったあともずっと見守っていてくれて、完成できたのはハーブのおかげだと思っています。2作目は1作目とは違う意味で辛い映画だったんですけど、これでハーブとドロシーの物語を自分の中で完結できたなって満足しています」と深い愛情をにじませた。
LiLiCoさん
LiLiCoさん
少ししんみりした中、舞台挨拶の最後はドロシーさんの言葉で。訪日を本当に楽しみにしていたというドロシーさんに、佐々木監督が「勉強した日本語を話してみて!」と実の娘のようにお願いすると、「サヨナラ、アリガトウ、それから食べる前に言う言葉……、イタダキマス? 日本に来るために言葉を猛特訓しました。いちばん言いたい言葉はアリガトウです。たくさんの素晴らしい人たちに出会えて嬉しいです。ここには600人ものお客さんがいるの? こんなに大きなスクリーンで上映していただけて……、私のアパートと同じ大きさです(笑)。とっても素晴らしい体験をしています。アリガトウ」と、機転たっぷりのスピーチをして、会場を明るい笑いで包んでくれた。魅力的な人柄が溢れ出て、佐々木監督がおふたりに夢中になるのもよく分かる、素敵な舞台挨拶だった。ハーブさんとドロシーさんの生き方と、おふたりが愛した本物のアートの輝きを、またも本作は多くの人に共有させてくれることだろう。

(2013年3月26日 新宿ピカデリーで 取材:深谷直子)

Story
ごく普通の一般市民でありながら世界有数のコレクションを保持し、ついにはアメリカ国立美術館にそれらを寄贈するまでに至った有名アートコレクターのハーブ&ドロシー夫妻。コレクション開始から半世紀を経て、5,000点近くの膨大な作品群は、全米50の美術館に50作品ずつ寄贈されることになる(通称・「50×50(フィフティ・バイ・フィフティ)」)。この前代未聞のアート寄贈計画を、夫妻とアーティストたちはどんな思いで受けとめるのか?また、ふたりのアートが様々な土地でどのように受け入れられるのか?そして、ついにコレクションの幕は閉じられ、ふたりに別れの時が訪れる……。
『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』 『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』場面1
CREDIT
監督・プロデューサー:佐々木芽生
出演:ハーバート&ドロシー・ヴォーケル,リチャード・タトル,クリスト,ロバート・バリー,
パット・ステア,マーク・コスタビ,チャールズ・クロフ,マーティン・ジョンソン 他
原題:HERB & DOROTHY 50X50
制作・配給:ファイン・ライン・メディア 製作年:2013年/アメリカ/カラー/英語
©2013 Fine Line Media,Inc. All Rights Reserved.
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2013年3月30日(土)より新宿ピカデリー他、全国順次ロードショー!

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  • 監督:佐々木芽生
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2013/03/29/16:45 | トラックバック (0)
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