~新春特別企画~

2010年度マイ・ベストムービー【2/3】

鎌田絢也 佐野亨 鈴木並木 富田優子 夏目深雪 藤澤貞彦 若木康輔


パリ20区、僕たちのクラス [DVD]
パリ20区、僕たちのクラス [DVD]
発売日: 2011-03-26
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富田 優子

  • 1.『エリックを探して』 ▶レビュー
  • 2.『パリ20区、僕たちのクラス』
  • 3.『冬の小鳥』
  • 4.『瞳の奥の秘密』
  • 5.『ミレニアム3部作(ドラゴンタトゥーの女、火と戯れる女、 眠れる女と狂卓の騎士)』
  • 6.『第9地区』
  • 7.『17歳の肖像』 ▶レビュー
  • 8.『告白』
  • 9.『終着駅 トルストイ最後の旅』
  • 10.『シチリア!シチリア!』
  • 次点 『闇の列車、光の旅』『オーケストラ!』
  • 特別賞 『レフェリー 知られざるサッカーの舞台裏』 ▶レビュー
    『相棒-劇場版Ⅱ-警視庁占拠!特命係の一番長い夜』

2009年は『愛を読むひと』『グラン・トリノ』など、断然完璧!なハリウッド映画が多かったことに比べると、2010年はそれなりに良い作品はあったが、どうしても小粒感は否めないところだ。それでもベスト10を選ぶ作業は悩ましかったが、何とか上記の結果に落ち着いた。次点はベスト10に入れたかったが、苦慮のうえ外してしまった作品を、特別賞はベスト10には入らないが、印象深い作品を挙げてみた。
こうして見ると、アカデミー賞受賞作(『ハート・ロッカー』『しあわせの隠れ場所』など)が選外という意外な(?)結果に(例外は外国語映画賞のアルゼンチン映画『瞳の奥の秘密』)。もちろん『第9地区』『17歳の肖像』『終着駅 トルストイ最後の旅』など賞レースを賑わせた作品は食い込んだとはいえ、2010年は筆者の嗜好とアカデミー会員のそれが一致しなかったよう。という以前に、ハリウッド映画が1本もランクインしていない・・・!

昨年はサッカーW杯が開催され、サッカー命!な筆者は大会期間中はもうワクワク、ドキドキしっぱなしで、生活のほとんどがサッカーに占められていた。そんなわけで、どうしてもサッカー贔屓になってしまうのだが、サッカー関連の映画『エリックを探して』を2010年のベスト1に、W杯開幕直前に公開された『レフェリー 知られざるサッカーの舞台裏』には特別賞を贈呈。『エリックを探して』は映画の冒頭からラストに至るまで終始ニコニコしながら見られる稀有な映画だった。『レフェリー・・・』は、W杯決勝で主審を務めたハワード・ウェブ氏を中心にしたレフェリーの苦悩と責任と誇りを描いたドキュメンタリーで、臨場感に溢れ、鳥肌が立つくらいの興奮を覚えた。だが南アW杯では、イングランドやメキシコに対して明らかな誤審もあり、映画のような結末にならなかったのは残念だったが。

また、偶然ではあるが、子供が主役の映画(『パリ20区、僕たちのクラス』『冬の小鳥』『闇の列車、光の旅』)を多く選んでいたのには、自分でも驚いた。筆者は子供超大好き!というわけではないのだけど、彼らの、大人にはないひたむきさやきらめきには、否応なしに心打たれてしまったようだ。

小粒感は否めないと前述したが、今後注目していきたい2人の女優に巡り会えたのは収穫だった。1人は『17歳の肖像』のキャリー・マリガン。思春期の少女の起伏に富む感情を豊かに演じ、彼女こそオスカーに相応しかったのではないかと今でも思っている。また、昨年の東京国際映画祭で上映された『わたしを離さないで』(劇場では今春公開)では、逆に抑制の効いた演技を見せていて、すでに大物の風格すら漂う。もう1人は、『ミレニアム』のスウェーデン人女優ノオミ・ラパス。鼻ピアスに全身タトゥーの小柄な体で巨悪と戦うヒロイン、リスベット役で、ノオミの体を張った熱演がなければ、このミステリーは成り立たなかったであろうと思うくらい鮮烈な印象を残した。2人のさらなる活躍を期待したいと思う。

2011年は果たしてどんな1年になるのか・・・。最も楽しみにしているのは、自他共に“ポッタリアン”と認める筆者が『ハリー・ポッター』シリーズの最終作『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』を見終わったとき、どんな思いがこみ上げてくるのか・・・ということ。まるで未知の領域に踏み込むようで、自分でも想像がつかないのだ。そんな楽しみがある一方で、ミニシアター系の映画館が相次いで閉館するなど残念なニュースが続き、これからどんな影響が出てくるのかと思うと、不安でもある。それでも素敵な映画に出会えることを期待しつつ、今年も引き続き貪欲に映画を観ていきたい。

ケンタとジュンとカヨちゃんの国 [DVD]夏目 深雪

    邦画ベスト10
  1. 『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』(大森立嗣) ▶レビュー
  2. 『Lost&Found』(三宅伸行) ▶レビュー
  3. 『犀の角』(井土紀州)
  4. 『泥の惑星』(井土紀州)
  5. 『海炭市叙景』(熊切和嘉)
  6. 『SRサイタマノラッパー2~女子ラッパー☆傷だらけのライム~』(入江悠)
  7. 『アヒルの子』(小野さやか)
  8. 『アメリカ-戦争する国の人びと-』(藤本幸久)
  9. 『結び目』(小沼雄一)
  10. 『ベオグラード1999』(金子遊)
    洋画ベスト5
  1. 『彼女が消えた浜辺』(アスガー・ ファルハディ)
  2. 『レバノン』(サミュエル・マオス)
  3. 『ソフィアの夜明け』(カメン・カレフ)
  4. 『ブロンド少女は過激に美しく』(マノエル・ド・オリヴェイラ)
  5. 『オーケストラ!』(ラデュ・ミヘイレアニュ)

今年は本当に邦画がよい作品が多かったので邦画と洋画を分けてみた。時期により暇がなくて見逃した作品もあるし、優れた作品ももっとあるような気もするが、挙げた邦画ベスト10の10本の共通点と言えば、人々が傷つき、もがいていることであろう。格差社会、過疎化する地方、閉塞感からのカルト的宗教や急進的政治団体への傾倒、戦争の残した傷跡、障害や介護に喘ぐ人々。スクリーンにかつてなく傷ついた人々が多く登場した気がしたのは、息切れしている世相を反映しているのか。
挙げた10本は、傷ついた人々が登場しているだけでなく、その映画なりの回答を示しているところが素晴らしいと思う。『ケンタ…』の疾走感、『Lost&Found』の(本家の『わたしを離さないで』などよりもよっぽど)カズオ・イシグロ的な落し物コーナーの暖かさ、『犀の角』のポーシャが最後呟く自身の本名のせつなさ、『泥の惑星』の(『ノルウェイの森』などよりもよっぽど)夢のようでいてリアルという矛盾した「青春」感、『海炭市叙景』の日の出や人々の吐く白い息がただそれだけで素晴らしいという生活がそのまま映画になった感じ、『SR2』の豆腐を作ったり風俗やったりしている女の子たちがラップし始める瞬間、『アヒルの子』のさやかが幼い時の自分を発見する過程の素晴らしさ、『アメリカ…』の脅されても決して引かない戦死者の母親たちの組むスクラムの力強さ、『結び目』の絢子が恋に狂い爆発した後に辿り着く境地、『ベオグラード1999』の金子が自死した恋人が笑っている写真をバックに朴訥な声で呟く「私は…」の先にあるもの。
洋画は上位3位は同じような文脈で語れるだろう。いずれもイラン、イスラエル、ブルガリアのそれぞれの世相をリアルに、ほとんど抉っているといえるほど、映画の力によって現している。『彼女が…』は古い因習、『レバノン』は戦争、『ソフィア…』は格差社会が中心にあるのだが、それにどのように抗うかということで人間を描いている。邦画10本と同じように、人間の弱さや愚かさとともに、崇高な部分も描いているところが評価の理由だ。
今、自分も含め心細くてどうやって生きていったら分からないような人が、多くいるのだと思う。あわよくば答えが見つかったりするのだから、やっぱりいい映画を観てほしいと思う。そのために今年も書きたい。
あと個人ブログに映画祭公開作品ベスト10、未公開映画ベスト7を発表しているのでよかったら。

鎌田絢也 佐野亨 鈴木並木 富田優子 夏目深雪 藤澤貞彦 若木康輔
2011/01/16/13:42 | トラックバック (0)
富田優子 ,夏目深雪 ,年度別ベスト
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