Text By フィリップ・ゴドー（製作)

『八日目』が終わって、ジャコは私にこう言った、「次の作品は、もっとシンプルでコストがかからない作品にするから、それほど時間がかからないと思うよ」（笑）。それが、時が経つにつれてまったく異なる展開になったんだ……1本の映画は生き物だから、つねに変化していくものだ。そして生み出されるまでに長い時間がかかった。なぜかというと、ジャコという人間は、やらなければという理由で仕事をするタイプではないからだ。彼は映画監督である前に、アーティストなんだ。彼の大志に到達するまでに時間が必要なのだ。

出資

最初に脚本を読んだのは2004年のカンヌ国際映画祭の時だった。5000万ユーロもの予算になりそうだったので、資金調達はとても無理だった。そこで我々はより経費のかからない企画を考えていった。その後、パテとワイルド・バンチが参画し、その理由もキャスティングではなく（というのは我々はこの時点でまだどの俳優とも契約していなかったから）、こんな規模のプロジェクトに乗ってくれるなんて、ジャコが高い評価をされていたからだ。投資される予定の総額は、予算をカバーするにはほど遠い金額ではあったのだけれど。私は製作の途中ではきっと障害物にもぶつかるだろうけれど、ジャコとこの企画ならば一緒にそれに向かい合っていけるだろうと確信していた。

ジャコと私

ジャコと私は、『トト・ザ・ヒーロー』で出会い、『八日目』で一緒に働いた。どちらの作品も質は異なるが、よりどころとしていることは同じだ。つまりお互いを信頼すること。我々はお互いそれぞれの時間を必要とする。ジャコは彼の芸術的な目標を追求する必要があるし、私はその目標が資金的に可能になるように努力する。その間もずっと顔を突き合わせてはいるが、たいていは他の話題しか話さないんだ。もしお互いがそれぞれ前進していれば、報告し合う必要はないということがわかっている。我々の関係はとても自然なのだ。私が彼の撮影カメラのうしろに立ってあれこれ言うことはないし、彼も資金調達面に介入することはない。

撮影

撮影は、６ヶ月を1日たりとも超過することはなかった。予算は当初の計画よりオーバーしたが、それはある程度の範囲内だった。
振り返ってみると、撮影がもっとも楽しい時間だった。もちろんその期間は長く、スケジュールもベルギー、カナダ、ドイツの間を駆け巡る気違いじみたものだったが……でも大きな問題は発生しなかった。すべての困難な問題は、チーム全体が本当に楽しく仕事をしてくれたおかげでクリアされた。ジャコはそれほど多くの作品を撮っていないにもかかわらず、親しい仲間に囲まれていたんだ。『ミスター・ノーバディ』の撮影現場におけるように幸せそうな彼を観たことがなかった。だから、彼にはもっと頻繁に仕事をしてもらおうとけしかけているんだよ！

ポスト・プロダクション

この手の作品としてはポスト・プロダクションに長い時間がかかっている。編集は1年にも及んだ。長い期間、身動きできない間は、ゆるがない洞察力を持つことが課題だと思う。編集段階で最も多くの話し合いをしなければならなかったのも驚くべきことではない。ジャコのような完全主義者にとって、この期間は錯綜していた。彼はもしかすると10年かけて編集に取り組み、あらゆる可能性、編集を試して、いくつものまったく異なる作品を提案してくるかもしれなかったのだから。でもなんとか切り抜けて、我々は最終的な結論を迎えられてよかった。ジャコは技術的な頂点を極めつつ、詩的な趣きを失わず、彼独自のヴィジョンを保ち続けたのだ。彼の手によってすべてがすばらしくブレンドされている。

結末

『ミスター・ノーバディ』によって、あとに続く監督たちや同時代の監督たちが、より遠くを目指し、リスクを冒してもいいと思えるようになれば、嬉しいことだ。ジャコと私は共同制作ということに甘んじてはいなかった。それは、我々それぞれの道をより先へと、たとえそれが不可能に見えても、ずっと先へ進むことを後押ししていった。もし私が彼の他の作品の制作を手がけていなかったら、そしてもし彼の仕事術に慣れていなかったら、この映画を制作することは無理だったろう。

最後に言いたいのは、私は満足しているしこの作品に誇りを持っている。それはつまり、この作品がかつて観たことがない種類の作品だからだ。人生や選択を迫られるといった、自分の子供たちに話してみたいような数多くのことをうまく伝えているからだ。ジャコは押し付けがましくなく、観る者に感じさせ、体験させ、追体験させてくれるのだ。この作品は大傑作なんだ！