『午前十時の映画祭』 国内外未ソフト化映画『フォロー・ミー』がスクリーンで上映！

『午前十時の映画祭　何度見てもすごい50本』
国内外未ソフト化　映画『フォロー・ミー』がスクリーンで上映！

根強いファンを持ちながら、いまだソフト化されていない映画『フォロー・ミー』。この名作が、2月6日より全国東宝系映画館で開催の「午前十時の映画祭」で上映されることが決定した。

『フォロー・ミー』ロンドンの街並みをバックに、ジョン・バリーのメランコリックなテーマ曲が流れる。フォロー・ミー、フォロー・ミー……。典型的な英国エリートで会計士のチャールズ（マイケル・ジェイストン）は、ある悩みを抱えていた。アメリカ人の妻ベリンダ（ミア・ファロー）の言動がこのところおかしい。ひょっとしたら、ほかに好きな男ができたのではないか。自分が仕事をしているあいだに、隠れてその男と逢っているのではないか。チャールズは、探偵事務所にベリンダの素行調査を依頼する。数週間後、チャールズのもとに風変わりな探偵、クリストフォルー（トポル）が現れ、調査の報告を始めるのだが……。

『邪魔者は殺せ』（47）『第三の男』（49）などで知られるキャロル・リード監督の遺作。映画史上の名匠が、そのフィルモグラフィーの最後に、これほどみずみずしく、また良い意味で肩の力の抜けた小品をものしたことに感嘆する。
筆者がこの映画を初めて観たのはTVの深夜放送だったが、観終わったあとの言い知れぬ幸福感はいまも忘れられない。当時は子どもだったので、トポルとミア・ファローが言葉も交わさず、楽しげにロンドンの街を歩くシーンが印象に残った。いま再見すると、夫婦の関係性、男女の機微をきわめてデリケートにみつめた作品であることにあらためて気づかされる。いつの時代も、どの世代にとっても、深い感動をもたらしてくれるという意味で、まさしく本作は、「何度観てもすごい」一本である。
なにより探偵を演じるトポルの瓢逸としたたたずまいがいい。真っ白なファッションに身を包み（コートのポケットにはいつもマカロンが入っている）、少し離れたところからヒロインに笑いかける。この映画の幸福感は、彼のその無邪気な笑顔によるところが大きい。
そして、ミア・ファロー。ウディ・アレン映画のミューズになる以前、60年代末から70年代にかけて、時代のアイコンだった彼女のチャーミングな魅力が、本作には凝縮されている。見知らぬ街を物憂げな表情でさまよう姿には、探偵ならずとも心惹かれてしまうだろう。

よく知られるように、本作は、世界のどの国でもいまだソフト化が実現していない。そのことが、ファンの偏愛をより濃密なものにしている。周防正行監督の『Shall we ダンス？』に登場する探偵（柄本明）が本作のトポルを参考にしていることは有名だし（あの作品の探偵は、調査をつづけるうちに、尾行の対象者＝役所広司ではなく、その役所がのめりこむダンスに興味を持ってしまうわけだが）、江戸木純、川勝正幸など本作をオールタイム・ベストの一本に挙げる批評家も少なくない。そして、だれもが、この映画を自分だけの宝物のように大切にしている。
フォロー・ミー、フォロー・ミー……。いつまでも、静かに、寄り添っていたい。そんな名作だ。

(2010.01.29)

午前十時の映画祭　何度見てもすごい50本　
主催：一般社団法人映画演劇文化協会　後援：文化庁、モーションピクチャーアソシエーション、社団法人外国映画輸入配給協会、財団法人川喜多記念映画文化財団、社団法人日本映画製作者連盟　協力：佐々木興業株式会社、株式会社松竹マルチプレックスシアターズ、株式会社ティ・ジョイ、TOHOシネマズ株式会社、東宝東和株式会社、株式会社エイガ・ドット・コム　運営：「午前十時の映画祭　何度見てもすごい50本」実行委員会
【上映劇場】■北海道札幌：札幌シネマフロンティア　■東北秋田：TOHOシネマズ秋田　宮城：MOVIX利府 ■関東・甲信越新潟：T・ジョイ新潟万代　栃木：TOHOシネマズ宇都宮　埼玉：MOVIXさいたま　千葉：TOHOシネマズ市川コルトンプラザ　東京：TOHOシネマズ六本木ヒルズ／TOHOシネマズ府中　神奈川：TOHOシネマズららぽーと横浜／TOHOシネマズ海老名　■東海静岡：TOHOシネマズ浜松　愛知：TOHOシネマズ名古屋ベイシティ　■北陸富山：TOHOシネマズファボーレ富山　■近畿京都：TOHOシネマズ二条　大阪：TOHOシネマズなんば　兵庫：TOHOシネマズ西宮OS　■中国岡山：TOHOシネマズ岡南　広島：広島バルト11　■四国愛媛：シネマサンシャイン衣山　高知：TOHOシネマズ高知　■九州福岡：天神東宝　長崎：TOHOシネマズ長崎　熊本：TOHOシネマズ光の森　鹿児島：TOHOシネマズ与次郎