岩名 雅記 (監督)
公式インタビュー 映画『シャルロット すさび』について【2/2】
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2018年10月6日(土)より、新宿K’s cinemaにてロードショー!
――舞踏家であった岩名監督が映画製作を始めたきっかけ、理由を教えてください。
岩名 約40年踊って来ましたがこの20年ほどは即興的な要素/物語性に頼らない踊りに変わってきています。一方で、もともと僕はテレビ局でドラマの演出をやりたかった人間です。ですから(恐らく)踊りで物語性を描けない分、映画で物語を展開しようとしているのかも知れません。もう一つ。映画が生フィルムで撮られていた時代には「フィルムは死んだ俳優さんたちを生きたまま保存する」ということが舞踏の「死の哲学」と共通していると言えたのですが、今やデジタル画像は何度でも消したり、録画できるのでそれも言えなくなってしまいました(苦笑)。ちなみに最初の2作は16ミリで撮っています。
――現役の舞踏家である岩名監督が映画製作で注意しているところは何ですか?
岩名 注意しているというよりも自然にそうなってしまうのですが、人間の身体の動き、特に身体の部分へのこだわりがあります、指とか顎とか眼とかね。もっと言うと身体をモノとして捉えているところがあります。机や椅子、水や石と、身体は繋がっているという感じ方です。もっとも昨今のプラスチック製のモノには興味がない。何故ならプラスチックは最初から「時間の成熟」を拒否しているからです。古くなったプラスチック製品に魅力はないけれど古い机や椅子や老人には魅力がある。それは「熟成した時間」をたっぷりと湛えているからです。
――監督の作品は多くの海外映画祭で招待を受け、賞を授与されています。海外で監督の作品はどのように受け止められていますか?また、日本での反応、受け取り方の違いなどを感じたりしますか?
岩名 「平成の不在者」である僕は日本の映画世界を知らないので外国の映画祭に応募しているだけなんですが(笑)。最近は日本も世界も「商業主義」という点では一致しているので、ますます多様性やユニークさは遠ざけられています。ただ外国の場合は日本に比べてはるかに許容力が大きい。例えば日本では舞踏家と聞けば<何する者ぞ?>という感じがありますが、外国ではアーティストとして認めてくれる。それと映画作品を許容する姿勢には共通点があります。
――昭和が終わる頃日本を離れ、平成の終わり日本に戻ってきた監督に「平成」はどのように見えますか?また、平成が終わることをどのように感じますか?
岩名 正確には「戻って来た」わけではなく、一時滞在ですけれど(笑)。……そうですね、僕は戦中生まれで日本の戦後をある程度知っています。モノのない分だけ心が豊かであった時代をね。それが高度成長を実現していく中でだんだん傲慢というか、「豊かで当たり前」になってしまった。ですから成長の止まってしまった平成の30年間は、そのしっぺ返しの30年とも言えます。やはり今こそ「モノと心がバランスの取れた時代」を取り戻すべきです。この映画にも古い時代へ戻っていくシーンがありますが、これは単なるノスタルジーではなく強い願望を込めたつもりです。
――この記事を読んでいる読者へ、メッセージをいただけますか。
岩名 何といっても「自由に生きてほしい」ということですね。生活が大変なのはわかりますが、何も定められた道を誰もが辿る必要はないと思うのです。好きなようにやればいい、好きなことができれば苦労は苦労でなくなるということです。それともう一つ。おとなしい羊になるな、クレージーホース(狂った馬)になれという事です。嫌なことは嫌だとはっきり言うべきです。もの言わぬことが今の日本をダメにしているのです。
――最後に何か言い残したことがあれば、おっしゃってください。
岩名 是非、この映画を観てください!
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監督・脚本:岩名雅記
出演:クララエレナ・クーダ(シャルロット)/成田護(カミムラ)/高橋恭子(朝子)/大澤由理(スイコ)
企画・製作: Solitary Body 配給: Solitary Body
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