第十六回
暁の脱走(1950年・東宝) | |
■スタッフ 監督:谷口千吉 脚本:谷口千吉 黒澤明 |
■キャスト 池部良 小沢栄 山口淑子 ほか |
下等兵卒と慰問団の美貌の歌手とラブストーリーで戦争や軍隊を批判するというオーソドックスなスタイルながら、
そこはさすがに黒沢明の脚本。場面場面で飽きさせない構成だ。谷口千吉の演出もなかなか冴えている。
ラストシーンで山口淑子と池部良がマシンガンに蜂の巣にされるのは、さながら後年の『ボニー・アンド・クライド』のよう。
それにしても、美貌の色気狂い女がまじめ一点張りの男の足を踏み外させ、最後には死に追いやってしまうという物語は悲惨すぎる。つくづく、
自ら近寄ってくる女に関わるとろくなことがないと教えられる。きわめて道徳的な映画だ。
なお、あくまでも憶測だが、チアン・ウエインの『鬼が来た』は、この映画を参考に作られているのでは?
皇軍が中国の広野を行軍するシーンや『ツーツーレロレロ』を歌い踊るシーンはまるでそっくり。
似顔絵を描いた腹踊りのカットに至ってはまったく同じだ。
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