グッドモーニング!ラピュタ阿佐ヶ谷
第十六回

槙原 啓二

暁の脱走(1950年・東宝)
■スタッフ
監督:谷口千吉
脚本:谷口千吉
   黒澤明
■キャスト
池部良
小沢栄
山口淑子 ほか

 下等兵卒と慰問団の美貌の歌手とラブストーリーで戦争や軍隊を批判するというオーソドックスなスタイルながら、 そこはさすがに黒沢明の脚本。場面場面で飽きさせない構成だ。谷口千吉の演出もなかなか冴えている。 ラストシーンで山口淑子と池部良がマシンガンに蜂の巣にされるのは、さながら後年の『ボニー・アンド・クライド』のよう。
 それにしても、美貌の色気狂い女がまじめ一点張りの男の足を踏み外させ、最後には死に追いやってしまうという物語は悲惨すぎる。つくづく、 自ら近寄ってくる女に関わるとろくなことがないと教えられる。きわめて道徳的な映画だ。
 なお、あくまでも憶測だが、チアン・ウエインの『鬼が来た』は、この映画を参考に作られているのでは?  皇軍が中国の広野を行軍するシーンや『ツーツーレロレロ』を歌い踊るシーンはまるでそっくり。 似顔絵を描いた腹踊りのカットに至ってはまったく同じだ。

2006/01/04/13:46 | トラックバック (0)
槙原啓二 ,グッドモーニングラピュタ阿佐ヶ谷
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