言わずと知れたジーン・ウェブスターの児童小説「あしながおじさん」を現代の韓国を舞台に翻案。
『ボイス』『恋する神父』のハ・ジウォンが快活さと繊細さを併せ持ったヒロインをキュートに演じている。相手役には、TVドラマ
「悲しき恋歌」で主演のクォン・サンウのライバル役を演じ、日本でも高い人気を集めたヨン・ジョンフン。
甘いマスクにマッチョな肉体というパーフェクトなルックスのサンウに対し、
隣のあんちゃん的な親しみやすさを持ったジョンフンを起用したことで、ファンタジックな物語にほどよい生活感が加味された。
監督は、これがデビュー作となるコン・ジョンシク。インターネット・コミュニティで“あしながおじさん”
というIDを使うほど原作に深い愛着を持つキム・ヒョンジュンが手がけた脚本は、
ふたつの恋物語が時空を越えて交錯するというトリッキーな構造になっている。
天涯孤独の身の上であるヨンミ(ハ・ジウォン)は、会ったことはないけれど、いつもどこかで自分を見守り、励ましの手紙をくれる
“あしながおじさん”の資金援助を受け、大学を卒業。念願の放送作家となる。
地方局からソウルの中央ラジオ局に栄転し、病気療養中だという社員の家を借り受けて新生活をスタートさせたヨンミだったが、
慣れない職場と先輩作家の冷たい態度に戸惑うばかり。そんなある日、先住者が使っていたパソコンを開いたヨンミは、
Eメールに綴られた女性の一途な想いに心動かされる。その女性は、
学生時代から憧れ続けてきた男性の後を追って局に入社したが、不治の病に冒され、自分の思いを告げられずにいた。
女性が想いを寄せる男性を探し出そうとするヨンミだったが、やがて彼女自身も、局の資料室で働くジュンホ(ヨン・ジョンフン)
という青年に惹かれるようになる……。
“あしながおじさん”の正体が明かされると同時にふたつの恋がひとつの物語へと収束していく後半の展開は、 韓国映画の十八番である過剰なまでにセンチメンタルな演出がてきめんに効果を上げ、なるほど盛り上がる。しかし、 近年の韓国ラブストーリーの宿命というべきか、 感動のベクトルを病あるいは死というモティーフに集約させてしまったことが逆に本作のテーマである“無償の愛” を安直に消化してしまったような印象が残るのも事実。Eメールの特性も生かされているとは言えず、シニとチョン・ ジュンハが演じるドタバタカップルのラブコメ的挿話(これはこれで笑えるのだが)のバランスも悪い。 基礎となるプロットには充分に創意工夫が感じられただけに、現代のお伽話としてもう一捻りほしかったところだ。
(2006.6.22)
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