ワン・チュアンアン(王全安)監督作品
トゥヤーの結婚
- 中国第6世代のイメージを破る作品、多くの作品が眠気を誘う中、この作品は常に笑いと涙がある。中国第6世代に見られる冷たさはなく、ユーモア、母性の輝きと人間の温かみに溢れている作品。――北京娯楽信報(中国)
- セリフがとても面白く、個性のある作品。――影音娯楽世界(中国)
- 重く悲しいテーマにも関わらず、主人公トゥヤーのように、作品は苦悩にふけることなく、厳しい現実との向き合いをリアルに描いている。かといって人間の感情や同情に欠ける作品ではなく、優しいユーモアがあり、とても人間味のあるキャラクターたちを描いている。面白く、感動的でユニークなストーリーである――BeyondHollywood.com(米国)
- 現実的、聡明で上品。脇を固める役者たちも素人でありながら、演技が素晴らしい。――Green Cine Daily(米国)
- ユー・ナンはスクリーンの中でオーラがあり、国際的に活躍する女優になるだろう。撮影のライテマイヤーの存在が光る作品である。――Chlotrudis(米国)
- シンプルかつ魅力のある率直な物語。女優ユー・ナンの美しさは厚いコートに包まれ、赤いスカーフで頭が覆われているのにも関わらず、輝かしい。素人役者たちの演技は驚きである。――The Hollywood Reporter(米国)
- 優しく、複雑な物語。絶えぬユーモアで飽きることなく面白い。撮影が美しく、色鮮やかな衣装や小道具が厳しい大地の色に良く映えて対照的である。――Eye for Film(イギリス)
2008年2月23日(土)より
Bunkamuraル・シネマにてロードショー他全国順次公開
2007年ベルリン国際映画祭は、内モンゴルの荒野で、凛(りん)として生きる美しいヒロインをグランプリに選んだ。ダイナマイト事故で下半身が麻痺した夫。幼い子供。砂漠化する草原。過酷な労働が、美しいトゥヤーを蝕んでいく。夫の絶望。家族への愛。
生きるために彼女が選択した、ひとつの決断。
みなに祝福されるその日、彼女は初めて涙を見せた…。
2007年ベルリン国際映画祭。張芸謀(チャンイーモウ)監督、コン・リー主演の『紅いコーリャン』(87)から19年を経て、《金熊賞》グランプリは、たくましく生きるひとりのヒロインの頭上に輝いた。美しいトゥヤーは、中国内モンゴル自治区の西北部の草原で暮らしている。ダイナマイト事故で下半身が麻痺してしまった夫バータル。幼い子供たち。朝から夜までわずかな畑を耕し、羊を放牧していた。かつては青々としてた草原も、今では砂漠に浸蝕され、水も十キロ以上離れた井戸まで汲みにいかなくてはならない。力強く凛として働くトゥヤー。しかし、寝たきりの夫を抱える厳しい生活と、重労働は、美しい彼女の体を蝕んでいく…。バータルの孤独。自殺未遂。死んで行く羊たち。トゥヤーは、家族への愛から、ひとつの決断をする。生きていくために。夫への愛のために…。
ヒロインに“母”の姿を重ねて描き出した
涙を誘うワン・チュアンアン(王全安)監督のストーリー。
監督は、脚本家として活躍し、フイルムノワール的なミステリーであるデビュー作『月蝕』(00)と決められた結婚から逃げるヒロインを描いた第2作『驚蟄』が、フランス、ロシア、ドイツをはじめとする世界の国際映画祭で注目を集めたワン・チュアンアン(王全安)。ヒロイン・トゥヤーの姿に、内モンゴルで生まれた彼の母親の姿を投影させ、この土地で実際に起きたひとりの女性の結婚を巡る事件を取材して、厳しい自然の中で力強く生きるヒロインを、ユーモアを交えながら感動的な物語として描き出した。涙を誘うそのストーリーは、「母性の輝きと人間の温かみに溢れている」と、世界中から賞賛を寄せられている。
『トゥヤーの結婚』の世界を支える
『さらば、わが愛/覇王別姫』『活きる』の名脚本家ルー・ウェイと
ルッツ・ライテマイヤーの「驚くべき映像美」。
監督と脚本を共同執筆したのは、陳凱歌(チェンカイコー)監督の傑作『さらば、わが愛/覇王別姫』(93)、張芸謀(チャンイーモウ)監督『活きる』の名脚本家ルー・ウェイ。ルー・ウェイは、草原に実際に生きる人々の中から、バータルを見いだし、撮影にも同行するなど、共同脚本という枠を超えて若い監督を支えた。また、ワン・チュアンアン監督のデビュー作『月蝕』に感銘を受け、2作目である『驚蟄』からワン・チュアンアン監督作品に参加するようになったドキュメンタリー出身のドイツ人カメラマン、ルッツ・ライテマイヤーが、今回も撮影を担当。光に溢れる荒野と、色鮮やかなトゥヤーの衣裳を対照的にとらえた映像は、「驚くべき映像美」と高い評価を受けている。
トゥヤー=《光》という名前を持つヒロイン。
ユー・ナンの放つ《光》は、世界を魅了する!!
ウォシャウスキー兄弟は、彼女を「アジア最高の女優」と絶賛した。
ベルリン国際映画祭は、中国映画から、コン・リーに続く純粋で力強いヒロインを見いだした。トゥヤー=《光》という名前を持つこのヒロインを演じたのは、ユー・ナン。ワン・チュアンアン(王全安)監督の『月蝕』、『驚蟄』に主演し、中国国内だけでなく、パリ国際映画祭などで主演女優賞を受賞するなど、その美しさと演技力は、国際的にも高い評価を受けている。また03年には、Karim Dridi監督のフランス映画“FUREUR”のヒロインに抜擢。『マトリックス』のウォシャウスキー兄弟の最新作『スピード・レーサー』(08)にも出演し、ウォシャウスキー兄弟は、彼女を「アジア最高の女優」と賞賛を惜しまない。コン・リー、チャン・ツィイーに続く、中国出身の国際女優として活躍が期待されている。
都会への移住を余儀なくされる草原の人々。
砂漠化がすすむ中国内蒙古自治区の西北部で行われた撮影の後、
彼らの生活は永遠に失われた。
『トゥヤーの結婚』の撮影が行われたのは、中国内モンゴル自治区の西北部、アラシャ盟。中国で最も降水量が少ないとされるこの地域は、近年、乾燥がますます強まり、草原の砂漠化がすすんでいる。トゥヤーの物語の舞台として選ばれたのは、中国政府が環境の劣化に対してここで生きる遊牧民を強制的に都市へ移住させる、“生態移民”と呼ばれる政策をすすめる“苦難の地”なのである。トゥヤーを演じたユー・ナン以外には、実際にアラシャ盟で生きる人々がキャストとして選ばれた。そして、ワン・チュアンアン監督は、“生態移民”がすすみ、遊牧民の生活が永遠に失われてしまう前に、彼らの生活を、この土地で生きる彼らの喜び、悲しみ、怒りをフィルムに定着させようとしたのだ。2ヶ月にわたる撮影の後、遊牧民たちは移住させられ、この映画に記録された人々の暮らし、風景は、永遠に失われる事となった。
広く果てしない中国内モンゴルの西北部の草原に、トゥヤーの一家が住んでいる。水を汲む為に、井戸を掘っていたところ、夫のバータルはダイナマイト事故によって下半身不随になってしまう。トゥヤーは二人の幼い子供を抱えながら、家族を養う為の重荷を背負い始める……。
毎日十キロ以上離れた場所へ水を汲みに行き、家畜の世話をするのが、トゥヤーの日課だ。何故なら渇ききった井戸の中には一日分の水しか貯められず、二日目に水を加えられないと、家畜たちはのどの渇きによって死んでしまう危険性があるからだ。猛暑の夏であろうと吹雪き舞う厳しい冬であろうと、トゥヤーは駱駝を引いて水を汲みに行かねばならない。
妻の苦難を見ていたバータルは、生きていくために、離婚に同意するようトゥヤーを説得しようとする。バータルは自分の姉と住むと主張し、トゥヤーと子供たちのために、解決となる一本の道を見つけようとする。過酷な現実を前にしたトゥヤーは、悲しみと憤りを胸に、障害を負った夫を支えながら、仕方なく裁判所へ行く。そこでトゥヤーは、家族への愛からひとつの決断をする。生きていくために。夫への愛のために……。
裁判所は、バータルの請求に基づいてトゥヤーとの離婚を認めた。しかしそこでトゥヤーが出した離婚への条件は、新しく見つける夫は障害を負ったバータルとも一緒に生活し養ってくれる人に限るということだった。こうしてトゥヤーの前に結婚を求める男性が次から次へと現れることになるのだが……。
■内モンゴル自治区について
内モンゴル自治区(内蒙古自治区)
中華人民共和国の北方にある自治区。大相撲の朝青龍たちの出身国モンゴル国とは国が違う。中国北部の内陸に位置し、モンゴル国、ロシア連邦と国境を接している。東北には標高1500mの大興例安嶺山脈が南北に伸び、南には標高1000~2000mの高原が広がっている。高原の大部分は草原だが、西にはパタンチリンなどの砂漠がある。気候は大陸性気候で、南北に長いため冬は北方でマイナス30度、南方ではマイナス10度と気温の差がある。夏は20~25度と過ごしやすい。しかし、砂漠地帯では40度を越える日もある。
歴史的にはチンギス・ハーンで有名なモンゴルだが、1915年モンゴル・ロシア・中国の間で交わされたキャフタ条約で、内モンゴルと外モンゴルに分かれ別々の歴史を歩むようになる。辛亥革命後、1924年外モンゴルはソ連の援助でモンゴル人民共和国となり、内モンゴルは1939年日本の援助により徳王が張家口に蒙古連合自治政府を成立させた。内モンゴルは日中戦争後、徳王が追われ1947年中国共産党の下、内モンゴル自治区人民政府を樹立、1949年中華人民共和国建国後、内モンゴル自治区となる。中華人民共和国の自治区としては最も早い成立である。映画の舞台は、首府フフホトから西南に8000km、中国寧夏回族自治区に接する賀蘭山の麓である。
面積 1,183,000k㎡(日本の3.1倍)
人口 23,840,000人(2004年)
民族 漢民族79% モンゴル族17% 満州族2% 回族0.9% ダウール族0.3%
首府 フフホト市(呼和浩特市) 一人当たりGDP 780ドル(2001年)
産業 広大な草原では牧畜が盛んである。しかし、生態環境を休ませ活力を回復させるためさらに貧困からの救済のため、2001年から行なわれた「生態移民計画」の実施で、以前のような遊牧のスタイルはほとんどない。現在では、集落に定住して行なうようになり、観光用以外パオ(遊牧民の使う移動式テント)は見られなくなった。中国からの入植者も多く、平原では農業が営まれ、ジャガイモ、ゴマ、テンサイ、雑穀、小麦を生産し、場所によっては稲作も行なわれている。石炭、鉄鉱石等鉱物資源も豊富で、中国が世界の産出量の90%を占める希土類の生産は中国一である。希土類はスカンジウム族とランタノイドを合わせた希土類元素の呼び名で、水素吸蔵合金、二次電池原料、光学ガラス、強力な永久磁石等に使われる。日立のテレビ「キドカラー」は、輝度を上げるためにブラウン管内の蛍光体材料に希土類が用いられたことから、輝度と希土をもじってつけられたネーミングである。
砂漠化 内モンゴルでは、1960年頃から急速に砂漠化が進行し、1960年には82万k㎡あった使用可能な草原は、1999年には38万k㎡に減少している。中国北方はかつて海や湖があったことから、草原の下には砂が堆積している。そのため、植生が破壊し、表土が剥がれると砂の層が露出して保水力を失い乾燥し、強風に砂が流される。そうすると、砂丘が形成され流動が起こり、砂漠化が加速する。内モンゴルの砂漠化の原因は、土地の再生能力を超えた過剰な開墾・放牧という人為的なものである。
【STAFF Profile】
1965年生まれ。北京電影学院を卒業後、西安映画スタジオに配属。たくさんの脚本を書き、2000年には、デビュー作『月蝕』が、フランス、ロシアをはじめとする世界の国際映画祭で注目を集めた。才能ある若手監督として、彼の作品は変貌する中国社会の現実に注目し、力のある内容と脚本で、現代中国を新鮮及び独特に描いている。本作にて2007年ベルリン国際映画祭 金熊賞(グランプリ)受賞。
私の母は、内モンゴル自治区の、まさにこの映画の撮影ロケ地近辺で生まれました。ですから、私は昔からモンゴル人、そしてモンゴル人の暮らしや彼らの音楽にとても好意を抱いておりました。急速な産業拡張が及ぼす牧草地の更なる砂漠化、そして行政の政策によるモンゴル牧畜民が自分たちの故郷から去らなければいけない移住計画のことを聞いたとき、私は彼らの暮らし方を記録するためにこの映画を撮ることを決心しました。すべてが永遠に消え去ってしまう前に。
1950年生まれ。中国で最も有名な脚本家の一人。主な代表作に、『さらば、わが愛/覇王別姫』(93年/チェン・カイコー監督)、『麻花売りの女』(94年/チョウ・シャオウェン監督)、『活きる』(94年/チャン・イーモウ監督)、『レッドチェリー』(95年/イエ・イン監督作品)などがある。97年には、子供たちを連れ、契丹軍の攻撃をかわしつつ西夏を目指す兵士の一行に、奪われた子を追う一人の女が加わって繰り広げる道中を、青蔵高原での壮大なロケーションで描く大歴史絵巻『遥か、西夏ヘ』でオリジナル脚本による劇映画監督デビューを果たした。2008年3月にクランクインが予定されている「三国志演義」を原作としたジョン・ウー監督のアクション大作『赤壁』にも脚本として参加している。
1962年生まれ。TV、ドキュメンタリー作品のカメラマンとして活躍した後、2001年にベルリン国際映画祭にてワン・チュアンアン監督のデビュー作『月蝕』を観て感動。03年、ワン・チュアンアン監督の第2作『驚蟄』で撮影を担当。06年、ワン・チュアンアン監督作品に再び合流し、『トゥヤーの結婚』の撮影を担当した。代表作に、ベルリンの演劇学校「エルンスト・ブッシュ演劇大学」に入学した俳優の卵4人を、入学試験から卒業後プロの役者になるまでの約7年間を追ったアンドレス・ファイエル監督のドキュメンタリー作品『芝居に夢中』(04)がある。
【CAST Profile】
彼女の美しさは厚いコートに包まれ、赤いスカーフで頭が覆われているのにも関わらず、輝かしい。 「The Hollywood Reporter」(アメリカ)
1978年、中国・遼寧省生まれの29歳。幼稚園で映画に初出演し、1995年に北京電影学院入学。2000年『月蝕』、2003年『驚蟄』の好演で知名度を上げ、中国金鶏奨最優秀主演女優賞やパリ国際映画祭主演女優賞などの受賞歴がある。2001年にはフランス映画、Karim Dridi監督“FUREUR”に出演。2006年の『トゥヤーの結婚』でベルリン国際映画祭グランプリ獲得。クリスティーナ・リッチ、韓流スターのRain(ピ)、真田広之らの出演がきまっている『マトリックス』のウォシャウスキー兄弟最新作『スピード・レーサー』に、香港の有名女優スー・チーや韓国実力派女優チョン・ドヨンを押しのけて大抜擢され出演が決定した。本年度(2007年)の韓国・釜山映画祭では審査員として招聘されている。英語とフランス語に堪能。コン・リー、チャン・ツィイーに続く、中国出身の国際女優として活躍が期待されている。モンゴルの遊牧民。ワン・チュアンアン監督と脚本のルー・ウェイは、草原で生活している彼と偶然に出会い、英雄という意味を持つバータル役に抜擢した。彼は映画に出演出来たことを今でも信じられないとコメントしている。政府は彼の家族に対して、砂漠化している牧草地を退去するよう勧告している。撮影後、移住し遊牧民から商人となった。
競馬場でワン・チュアンアン監督に見いだされたモンゴルの遊牧民及び騎手。撮影後、プロの騎手になる予定である。
製作:コン・ターシュン
製作総指揮:ユアン・ハンユエン、ワン・ルー、チェン・ツーチョン
制作:ヤン・チュイカン
脚本:ルー・ウェイ、ワン・チュアンアン 監督:ワン・チュアンアン 撮影監督:ルッツ・ライテマイヤー
録音:チアン・ポン 美術:ウェイ・タオ 編集:ワン・チュアンアン
トゥヤー:ユー・ナン(余男) バータル:バータル(蘇合巴特尓) センゲー:センゲー(森格)
2006年/中国映画/北京語/35mm/カラー/96分/ドルビーSR/アメリカンヴィスタ
原題:図雅的婚事/英題:Tuya’s Marriage/日本語字幕:田村祥子、加藤浩志
後援:中華人民共和国駐日本国大使館文化部 協力:フォーカスピクチャーズ
配給:ワコー+グアパ・グアポ 宣伝協力:スローラーナー
公式HP http://www.tuya-marriage.jp/
2008年2月23日(土)より
Bunkamuraル・シネマにてロードショー他全国順次公開
主なキャスト / スタッフ
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