古澤健(映画監督/脚本家)
映画『トワイライトシンドローム デッドクルーズ』について
8月2日(土)より、シアターN渋谷他全国順次ロードショー
古澤 健(監督/脚本家)
1972 年10 月22 日生まれ。「超極道」(01)、黒沢清監督の「ドッペルゲンガー」(03)、「こっくりさん日本版」(05)の脚本などを執筆。04年に「映画番長シリーズ」の中の「ロスト☆マイウェイ」で監督デビューを果たす。06年には松竹配給のホラー映画「オトシモノ」が公開。その後も「先生、夢まちがえた」を発表し、ガンダーラ映画祭にも参加、映画美学校での講師など多方面で活躍している。
黒沢清監督の「ドッペルゲンガー」での共同脚本で名前を知った古澤健監督が「オトシモノ」以来の商業劇場公開作となる「トワイライトシンドローム デッドクルーズ」が8/2より公開される。古澤監督らしいホラー/スラッシャー映画への趣味もよく出た作品なので是非観てほしい。
「生きていることも自体がひどいことかもしれない」という想いはあります。
――素直に古澤監督が好きなスラッシャー趣味を出しているのがよかったです。
古澤 プロデューサーとも話したのですが、今さらJホラーのようなホラーはやりたくないというのがありました。Jホラーとは違って、ホラーとして別の方向性を探ろうということです。
――実際のゲームには今作は近い設定なのでしょうか?
古澤 設定は劇中にゲームが出てきて、ゲームが恐怖の原因になればいいということだったので、ゲームと離れて映画は作っています。始めにプロデューサーから呈示された設定は「船の中で拾ったゲームを終わらせないと死ぬ」というものでしたが、より面白い設定を思いついたのでそちらに変えました。
――リセットして何度でも生き返るが、痛みなどの記憶は残る設定ですね。
古澤 例えば、ゲームのスーパーマリオブラザーズでもマリオは死んだように見えても、リセットすれば、またすぐにゲームを開始できますよね。それはプレイヤーが死んだと思っただけで、マリオは半永久的に死なない。一種の不死です。マリオ側からの視点で見て、マリオに死んだときの記憶が残っていたらどうなるだろうと思っていたんです。
――一種のゾンビ映画にもなっていますね。
古澤 設定が船内で閉じ込められた密室と聞いたときに、まず思い浮かんだのが「デモンズ」(85/aa)だったんです。
――「デモンズ」は映画館に閉じ込められる一種のゾンビ映画ですよね。
古澤 「デモンズ」シリーズが好きなわけではないんですけどね(笑)。
――「デモンズ95」(94)は素晴らしいじゃないですか。
古澤 「デモンズ95」(aa)は傑作でしょう! ただ、「デモンズ95」は日本で勝手にタイトルつけて「デモンズ」シリーズにしているだけですから(笑)。
――「デモンズ95」のミケーレ・ソアビ監督は好きですか?
古澤 好きですね。「アクエリアス」(87/aa)もいいですね。
――ホラー/スラッシャー映画の要素として、一番怖いモンスターの造詣が「13日の金曜日」シリーズのジェイソンや「バーニング」のバンボロのようだと思いました。あのただれたような皮膚などです。
古澤 造形師のマイケル・T・ヤマグチさんがクリエイトしてくれたのですが、あのモンスターには満足しています。こちらが提案したのは、フリークスであって、クリス・カニンガムのPV、「マッドマックス2」のヒューマンガス、「悪魔の毒々モンスター」、「ヘルレイザー」などの作品です。左右非対称にもしてほしいと伝えました。ゲームのキャラクターで言うと「サイレントヒル」や「バイオハザード」のようなデザインも出てきたけど、それは違うと思いました。マイケル氏がそういうゲームのキャラも含めてまぜて出してきたので挑戦だと思いましたね。「これしかないだろう!」というものを選んだら、彼もその通りでした(笑)。後、気付く人は気付くと思うのですが、有名なキャラクターへの言及もあるモンスターです。
――「インディ・ジョーンズ」的な大きなボールや鋭利なものがついた壁が迫ってくるのもゲーム的でいいですね。特に後者は人が押しているのが映るのがいいです(笑)。
古澤 そうでしょう! あそこで人が押しているのがポイントです(笑)。
――船での撮影は狭いので大変だったと思います。
古澤 船の中というのは、どうしても縦構図ばかりになってしまうので、陸地でのロケセットなどを混ぜながらどう絵にメリハリをつけようかと思いました。
――先ほども出たリセットの設定が今作の独自性だと思いますので、この設定に関してもう少し聞かせてください。1日を何回も繰り返す秀作「恋はデジャブ」や寝ると殺人鬼が表れる「エルム街の悪夢」などを想起しました。
古澤 「生きていることも自体がひどいことかもしれない」という想いはありますね。映画で善人が救われる「生きていればいいことはある」という映画も好きなのですが、努力が報われるということがあったとしても、それってその登場人物にしかあてはまらないことで、人生の真実というわけではない、同様に生きていること自体がひどいってこともあるかもしれない、人生万事塞翁が馬だということです。また、以前からタイムリープものをやりたいと思っていました。「内的な時間は持続され、一方外的な時間が見た目には繰り返されるような状況」という設定です。
――ネタバレするわけにはいけないので詳しくは書けないですが、最後の突き放し方がとても印象的でした。古澤監督も大好きな「悪魔のいけにえ」のようでもありました。
古澤 そう言ってもらえると嬉しいですね。平穏なラストの後に島に着いたら、そこでもまた・・・というようなホラー映画の定番のオチも考えたのですが、やはり印象に残る独自のオチをつけたくてあのラストにしました。とても満足しているラストです。
――そのラストも含めて、主演の関めぐみさんの演技がよかったです。
古澤 彼女は本当にプロの俳優ですね。集中力がすごい。撮影期間も一週間の作品で、もちろん順撮りでもないのですが、各シーンの意味をよく理解していて見事な演技をしてくれました。
――野久保直樹さんはいかがでしたか?
古澤 野久保くんは「羞恥心」でも活躍していますが、経験豊富だし、現場のムードメーカーでしたね。忙しいのにベタで現場についてくれたし、感謝しています。
――ここは是非よく見てほしいというシーンはありますか?
古澤 関めぐみさんと寺島咲さんの対決のシーンですね。大きな見せ場ですし、迫力があるシーンに仕上がっています。
――こちらも行った記者会見で古澤監督自身も言っていましたが、新たな代表作である今作に関して読者に最後にメッセージをお願いします。
古澤 今作にはとても満足していますし、手応えを感じています。新たな代表作になる作品ができたので、劇場に足を運んでいただいて是非観ていただきたいです。
取材/文:わたなべ りんたろう
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主なキャスト / スタッフ
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