『闇刻の宴』監督陣インタビュー最終回
国沢 実 (監督)『岩』について
2016年4月8日(金)~4月15日(金)、下北沢トリウッドにて連日19:00より上映
『心中エレジー』で知られる亀井亨監督が中心となって製作されたオムニバスホラー映画『闇刻の宴』が、4月8日(金)から4月15日(金)にかけて(※12日火曜日は定休日)、下北沢トリウッドにて上映される。本作は、亀井監督を含む5人の監督が、「女性の怖さ」をそれぞれの感性で切り取った6編のショートホラーを、オムニバスとして纏めた作品。前回の亀井亨監督に続き、今回は『岩』のメガホンを取った国沢実監督のインタビューをお届けする。
( 取材:岸 豊)
STORY 男(三貝豪)と女(水井真希)は、ゴミ溜めのような部屋に身を寄せ合い、荒んだ暮らしを送りながら深く愛し合っていた。しかし、男はどうしても、女の怨みがましい面相が好きになれず……。
国沢実監督
――どういった形でストーリーを練っていきましたか?
国沢監督 事件の奥底に隠された真相は、結局のところその当事者にしか分かりません。報道された事実から零れ落ちた犯罪者の真意を妄想する事が、私がフィクショナルなストーリーを考える切っ掛けになります。例えば新聞の片隅に記されたDV殺人の小さな記事。その裏側に隠された、ある男女の奇妙な愛の物語を描きたいと思いました。醜悪なビジュアルの向こう側に、それと対極を成すピュアな愛を見出したかったのです。
――本作は、破滅的な男女の物語です。男に殴られることを望む女に「女性の怖さ」を感じる一方、男には女に暴力を与えることで自身を破滅させる、屈折したマゾヒズムを感じました。
国沢監督 劇中の女は、ただひたすらに愛される事だけを求めています。その思いが男を突き動かし、二人は破滅へとひた走って行く。男は女を支配しているつもりでいても、結局は女の思惑に翻弄されてしまう。そして男もまた密かにそれを望んでいる。女の手によって破滅させられる事は、男にとって究極の快楽ではないでしょうか。実を言えば、劇中の男は私自身の投影でもあります。
――男が女の顔面の左側(こちらから見て右側)だけを殴る理由は?
国沢監督 男のセリフに、「滴り続ける水滴が、やがては固い岩をも穿つように、俺の拳はお前を破壊してしまうかも知れない」とありますが、彼の放つ一撃一撃には、女の顔に対する憎悪と、女を愛し続けたいという切実な思いが混在しています。このアンビバレントな愛を象徴的に表現しているのが、崩れていく女の顔そのものなのです。彼の暴力は常に一点に集中し続けていなくてはならなかった。彼等の中では、世間で言う美と醜が逆転しているのです。
――キャストに要求したこと、撮影中の困難をお聞かせください。
国沢監督 ありえないシチュエーションを設定し、そこに真実味をどれだけ盛り込めるか。これが私が常に追求しているドラマツルギーです。鍵を握るのは、一にも二にも役者の表現力。二人の役者には、一瞬たりともテンションを落とさないことを要求しました。しかし、撮影前にこちらの意図は全て伝えてありましたので、現場で私が声を荒げる必要はありませんでした。一番骨が折れたのは、女を「お化け!」と罵る男の子です。彼は全くの素人ですので、演ずるという概念そのものが無い。おかげ様で、いい勉強をさせてもらいました(笑)。
( 取材:岸 豊 )
プロデューサー:あぶかわかれん/企画:金村英明、平田慎司
「うつしえ」 監督・脚本:坂元啓二 出演:河嶋遥伽 太三 星野ゆず YOSHIHIRO 櫻井信太郎
「子の棲む家」 監督・脚本:菊嶌稔章 出演:藤堂海 くわの空 田中良一 和田光沙
「36℃の視線」 監督:三宮英子 出演:こうのゆか 松下愛子 星野佳世 オオタブンペイ 大澤雄一 三宮英子
「幽閉confinement」 監督:亀井亨 出演:アカリ 綾乃テン
「岩」 監督・脚本:国沢実 出演:水井真希 三貝豪
「ひなげし」 監督・脚本:坂元啓二 出演:谷川みゆき 三宮英子 むう
© 映画「闇刻の宴」製作委員会
2016年4月8日(金)~4月15日(金)、下北沢トリウッドにて連日19:00より上映
- 出演:河嶋遥伽, 藤堂海,
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- 監督:国沢☆実
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