インタビュー
闇刻の宴 [DVD]

『闇刻の宴』監督陣インタビュー第1回
坂元 啓二 (監督)
『うつしえ』『ひなげし』について

2016年4月8日(金)~4月15日(金)、下北沢トリウッドにて連日19:00より上映

『心中エレジー』で知られる亀井亨監督が中心となって製作されたオムニバスホラー映画『闇刻の宴』が、4月8日(金)から4月15日(金)にかけて(※12日火曜日は定休日)、下北沢トリウッドにて上映される。本作は、亀井監督を含む5人の監督が、「女性の怖さ」をそれぞれの感性で切り取った6編のショートホラーを、オムニバスとして纏めた作品。公開を直前に控え、作品に込められた思いやテーマについて、坂元啓二監督、三宮英子監督、亀井亨監督、国沢実監督に話を聞くことができた。今回は、『うつしえ』と『ひなげし』のメガホンを取った、坂元監督へのインタビューをお届けする。( 取材:岸 豊)
坂元 啓二 代表作に「たがをり」など。2003年東京国際ファンタスティック映画祭600秒コンペでグランプリ受賞。
STORYうつしえ』 シーズンオフの旅館にやって来た仲居(河嶋遥伽)は、一人で誰かと話す管理人(太三)の声を聞く。不気味に思う仲居だったが、さらに彼女を不安にさせたのは、見覚えのある少女の面影を宿した一枚の絵。再び管理人の声を聴いた仲居は、部屋を覗きに行くのだが……。
STORYひなげし』 旦那に先立たれ、寝たきりの義母(谷川みゆき)の介護に縛られる義娘(三宮英子 )は、義母に対する殺意を、残虐な空想によって抑えながら介護を続けていた。しかし、次第に現実と空想が混濁していき……。
坂元啓二監督
坂元啓二監督 『うつしえ』
『うつしえ』 『ひなげし』
『ひなげし』
――『うつしえ』の物語は、どういったプロセスを経て完成されたのでしょう?

坂元監督 まず、題名のもう一つの意味でもある、絵にのり憑った少女をモチーフにしたいと思いました。過去に撮ったホラー短編が人形にのり憑った女性の話だったので、自分なりにシリーズっぽく狙ったつもりです。次に、その絵に一人で話しかけている男のイメージが浮かんだので、絵に取り憑かれ、少女に恋をした男を出そうと決めました。冷静に見たら、二次元の少女に向かってただ独り言を言っている、イタい中年男ですね。

――鑑賞者は、仲居の視点で物語を見届けることになりますね。

坂元監督 仲居は狂言回しにして、観客の同調を狙い、一緒に闇を覗いているような感覚になってもらおうと思いました。管理人が仲居に対して刃を向けた時、いま見ている観客にも共に恐怖を感じてもらうよう、ああいったラストにしたんです。そして、あえて暗闇で悲鳴を奏でることによって、観客の想像力を膨らませ、恐怖を与えられたらと狙いました。

――女性の怖さを表現する上で意識したことは?

坂元監督 女性の怖さとは、過去の事をいつまでも根に持つ記憶の怖さだと思います。ふとした言い争いの時に、「あなた、あの時酔って何したか覚えてないの?もう忘れたの?何でそんな簡単に忘れられるの?だいたい、私の…」といつまでも過去の失敗をあげつられ、反省しているといくら謝っても聞く耳を持たず、結局どんな展開でも最終的には私が悪いことになり、挙げ句こんなんじゃ話合いにならないと訴えても私が逆切れしたことに……すみません。そんな女性を描いていたかどうかは定かではないですが、どちらの作品の女性にも、虐げられた憎しみと、その復讐の怖さはあると思います。

――『ひなげし』は、オムニバス全てを繋げる役割を果たしているのが興味深かったです。どういった経緯で作品を繋ぐ立ち位置の作品になったのでしょう?

坂元監督 オムニバスの各作品は、某監督が主催したホラー上映会のために、各監督が作って持ち寄ったのですが、その時には特にコンセプトの統一はありませんでした。その中から、『闇刻の宴』として5作品が選ばれたのですが、一本の作品として見ていただく時に、できたらまとまった一つの雰囲気の持続ができたらなと思いました。最初は説明が多すぎたり、『ひなげし』の話によりすぎていたのですが、製作総指揮でもある亀井監督にご助力いただきまして、いいバランスでのブリッジを配せたと思います。谷川みゆき さんの一人芝居のブリッジは、実際にはもっと長く、個人的に思い入れもあったのですが、全体のバランスのために、心を鬼にして大分カットしました。もともとは語り部的に義母が各話をつぶやくイメージだったのですが、それだと単調になってしまいますので、時間軸もバラバラにして、断片的に各話とわずかな繋がりを作る事に決めました。

――具体的には、どんな点で繋がっているのでしょう?

坂元監督 各作品との具体的な繋がりのコンセプトを言いますと、『うつしえ』はそのまま絵とその因縁についての語り出し。『子の棲む家』は赤い鉛筆と代々の親子の関係。『36℃の視線』は何者かの影と視線、並びに単純に被写体のつながり。『幽閉confinement』には時間と逃れられない苦しみ。『岩』は共依存の関係性などで各作品と繋げました。大変でしたが、任せていただけて、とても光栄に思います。

――他の監督の作品で気になったものは?

坂元監督 亀井監督の『幽閉confinement』です。セリフも全くなしで、人形だけで精神を崩壊していく少女を描いているのが面白いし、短い時間ですぐに人形が生きた少女に見えてくるのが凄い。冷静に考えると物撮りなのですが、そうは見えないところに感嘆しました。三宮監督の『36℃の視線』も、とても変わった雰囲気のホラーで、途中で出てくる様々なキャラクターがとても気になります。特にあの勧誘員はとても怖いです。演じている星野佳世さん自体を言っているわけではありません(笑)。

第2回:三宮英子監督インタビュー

( 取材:岸 豊 )

1 2 三宮英子監督3 亀井亨監督4 国沢実監督

闇刻の宴 (2015年/日本/カラー/85分/ビスタサイズ/ステレオ/ PG-12)
プロデューサー:あぶかわかれん/企画:金村英明、平田慎司
「うつしえ」 監督・脚本:坂元啓二 出演:河嶋遥伽 太三 星野ゆず YOSHIHIRO 櫻井信太郎
「子の棲む家」 監督・脚本:菊嶌稔章 出演:藤堂海 くわの空 田中良一 和田光沙
「36℃の視線」 監督:三宮英子 出演:こうのゆか 松下愛子 星野佳世 オオタブンペイ 大澤雄一 三宮英子
「幽閉confinement」 監督:亀井亨 出演:アカリ 綾乃テン
「岩」 監督・脚本:国沢実 出演:水井真希 三貝豪
「ひなげし」 監督・脚本:坂元啓二 出演:谷川みゆき 三宮英子 むう
© 映画「闇刻の宴」製作委員会

2016年4月8日(金)~4月15日(金)、下北沢トリウッドにて連日19:00より上映

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  • 出演:河嶋遥伽, 藤堂海,
    こうのゆか, アカリ, 谷川みゆき
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2016/03/25/20:53 | トラックバック (0)
岸豊 ,インタビュー
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