――内容的には、この作品には監督の今までの作品同様、自殺だとかの「死」も多く描かれる作品ですね。

矢崎　小池さんの作品はほとんどエロスとタナトスがベースになっていますからね。私というと「死」ってなるみたいですけど（苦笑）。あの時代はゴロンと隣に死があったような時代だったと思うんですよね。

――そうですね。死が身近というのも、現代でも同じだと思いますし。

矢崎　そう、あの時代だからというのではなく、今の若い人が観ても共感できるものだとも思いますし。あんなふうに友達がいなくなったりというのもあると思いますよ。

――あとは、震災以降、誰もが生や死に対する意識を改めただろうとも思いますし。矢崎監督が震災後撮られた『1＋1＝1 1（イチタスイチハイチ イチ）』（12）にも、そういう変化を感じました。

矢崎　『1＋1＝1 1』は珍しくやりたいと思ってやったというか、自分の映画には絶対テーマを持たないと決めているんですけど、『1＋1＝1 1』にはちょっとだけそのことを考えてしまったので。一人と一人は二人にならない、一人と一人だ、と珍しく考えてしまって。

――『1＋1＝1 1』のあとも『××× KISS KISS KISS』（15）という自主に近い映画を撮り、一方で今回のような規模の大きな商業映画も作られていますが、映画作りに対しても、何か変わったところはあるのでしょうか？

矢崎　どんな規模の映画も僕の中で1本の映画を撮るということに関しては基本変わらないです。出会った人と一緒に映画を作りたいというだけです。

――後進を育てたいなどの想いもあって、若い映画人と関わられていたりするのかな？と思ったのですが。

矢崎　そんな意識もないですね。表現者に年齢は関係ないです。本当に出会った人と映画という旅に出るだけです。ラッキーなことにいい出会いに恵まれているので、それを大事にしていくだけですね。『×××』は、横浜シネマノヴェチェントで毎週金曜日に上映中ですし、大阪シネ・ヌーヴォやシネマテークたかさきでも公開します。スタッフもほぼ同じなので、二つの映画を観比べてほしいですね。

――はい。監督の以前のインタビューを読んで感動したことですが、「映画作りはそのときのスタッフ、キャストでしかできないドキュメンタリーだ」ということをおっしゃっていましたよね。

矢崎　本当にそんなつもりですね。スタッフ一人欠けてもできなかった映画になればいいなと思ってやっています。

――本当にみなさん渾身で作った素晴らしい作品になったと思います。では最後に、お客さんへのメッセージをお願いします。

矢崎　変化するときって美しいと思うんです。夜が朝になったり、昼が夜になったり。それと同じように人が変わるとか時代が変わるとか、その瞬間が美しいので、成海さんが変化する美しさを見にきてほしいと思います。本当に美しいです。