矢崎仁司 (監督) 映画『無伴奏』について【3/5】
2016年3月26日(土)、新宿シネマカリテ他全国ロードショー
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――俳優さんが素晴らしかったですね。特に成海さんの響子はあの低い声がはまるなあと。口では大人びたことを話しながら、少女らしいニッコリとした表情……といったアンバランスさが、すごく合っていたと思います。
矢崎 本当にいい顔を映させてもらったなと思います。僕は嬉しくて見ているだけでした。
――俳優さんにはどんなふうに演出されるのですか?
矢崎 僕は特に演出をしないので……、できないので。ただ、「あなたを撮りたい」ということがいつも頭の中にありますから、その話はどの俳優さんにもしたと思います。「今のあなたを撮りたい。役になり切るのではなく、世界中に一人しかいないあなたと役が重なるのを見たい」というのがいつもの僕のスタイルでしょうかね。
――役作りのために原作を読んでもらったりということはされるんですか?
矢崎 僕はそういう注文は付けないんです。出会ったときに「響子が来たな」とか「渉が来たな」とか思うだけで、あとは「役のフィルターを通して、これを引き受けてくれた今のあなたを映し撮れるかな?」ということなんですよね。
――この映画には濡れ場も結構ありますよね。少女だった響子がだんだん女性として大胆になっていくという変化を成海さんも全身で表現していましたし、みなさん本当に体当たりされていました。
矢崎 俳優さんたちのやる気としては、もっとやれたと思います。作品を若い方にも観てほしいというのがあったので、R18+にはならないギリギリのところで撮っていったのですが。『神童』(07)で中学一年生の成海さんに恋をし、「このすごい俳優さんが大人の女性になるときには僕が立ち会いたい」と思っていた夢が叶ったような、それぐらいの覚悟はありましたね。
――本当に俳優さんその人を信頼されているんですね。
矢崎 ええ。今回はキャスティングが素晴らしくて。池松(壮亮)さんも斎藤(工)さんも遠藤(新菜)さんも空気感が際立っていて、カメラの横で見ていて撮影期間中幸せでしたね。
――渉が革ジャンを着ているのは、池松さんの提案とのことですね。
矢崎 はい。藤田朋子さんも原作を読んで「愛子おばさんは着物を着ている」というイメージを持たれたそうで、予算的に着物を揃えるのは厳しいなと思っていたんですけど、ご自分でいろいろ用意してくださって(笑)。役の取り組み方が本当にすごいので嬉しいです。衣装というのは大事で、衣装合わせのときには実際に着てもらい動いてもらうぐらいじゃないと、と思っています。人をシルエットで映すので、そのシルエットが役にピッタリくるかどうか、またその人の着心地も大事ですし、精神とか感情を衣装で表せるので、衣装合わせには時間をかけます。
出演:成海璃子,池松壮亮,斎藤工,遠藤新菜,松本若菜,酒井波湖,仁村紗和,斉藤とも子,藤田朋子,光石研,松嶋亮太,
中村無何有,海音,関本巧文,田中貴裕,池浪玄八
監督:矢崎仁司 原作:小池真理子
製作:重村博文,川村英己,西田宣善 プロデューサー:登山里紗,山口幸彦,楠智晴 脚本:武田知愛,朝西真砂
ラインプロデューサー:野村邦彦 撮影:石井勲 照明:大坂章夫 録音:吉田憲義 美術:井上心平
音楽:田中拓人 編集:目見田健 衣裳:宮本茉莉,江頭三絵 ヘアメイク:宮本真奈美 音響効果:佐藤祥子
助監督:塩入秀吾 制作担当:三浦義信 主題歌:「どこかへ」 Drop’s (STANDING THERE, ROCKS / KING RECORDS)
配給:アークエンタテインメント 製作:「無伴奏」製作委員会(キングレコード/アークエンタテインメント/オムロ)
© 2015「無伴奏」製作委員会 R15+
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