片山享監督『轟音』

片山 享 (監督) 映画『轟音』について【3/4】

2020年2月15日(土)より池袋シネマロサにて単独公開ほか順次全国公開

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片山享監督画像3 『轟音』場面画像7
――大宮将司さん演じるひろみの不倫相手の野村は、強引な感じが出て生々しいキャラクターになりましたね。

片山 大宮さんにしかできない野村になりました。あの強さといいますか存在感といいますか、唯一無二です。でも、記号的ではなく、ちゃんと人間として存在できている、そこに「生きている」と思います。

――福井弁も難しそうですね。

片山 僕が福井弁のテープを作ってキャストに渡しました。安楽と太田さんは圧倒的にうまかったです。でも僕は福井弁にはまったくこだわっていなくて。方言より大事なものがいっぱいあるので、それにこだわって芝居ができなくなるぐらいなら方言なんてどうでもいいですと。あと、この映画には37人のキャストが出ているんですが、隅々まで濃いじゃないですか。実は28人が福井在住の方なんです。

――そうなんですか。みなさん個性的で生き生きしていました。演技経験が乏しい方には監督が演技指導をして。

片山 “演技指導”というのは僕の中ではないんですよ。そのまま、今のその人自身の感情でお芝居するための演出をする感じです。日本では、もちろんすべてがそうだということではありませんが、監督が偉くて俳優はその下、のような妙な順列がえてしてあって、どうしても「監督の言うことは絶対」みたいなことになりがちなんです。というか、そう思っている役者さんが大多数なんです。そうなるとわからないことがあっても訊けず、自分の生理と違っていても監督の意図に応えようと「嘘」をつくことになります。やらされることに「生」は感じないから僕は嫌なんです。芝居は演出次第で十分に変わると思っています。僕は、別にそのために監督をしているわけではありませんが、そういうことも証明していかなくちゃいけないと思っています。芝居ってこういうことなんじゃなかろうか?と。

――本当にそうですね。

片山 ちなみに、福井の方々はスタッフとしても随所で手伝ってくださいました。撮影は深夜に及ぶことがほとんどだったのですが、福井の方々も残って手伝ってくれて。翌日も仕事がある人たちだから「もう帰ってくださって大丈夫ですから」と何度も言ってるのに、ずっと付き合ってくれて。だから撮影の深谷(祐次)さんとかは「福井ってなんなんですか?」って言ってました。たぶん映画に熱い街なんです。そして人に熱い街なんです。そんなこともきっと画面に表れている気がします。魂というか、そういう意味でもいい映画にしなきゃと思いました。福井が嫌いだなんて言ってた自分を殴ってやりたいです……。

『轟音』場面画像8 『轟音』場面画像9
――(笑)。この映画では、音も印象的に使われていました。浮浪者の男が爪を切る音や、誠の前を自転車が横切る音にハッとしました。

片山 音で持っていかれる感じを大事にしたいなと思っていて、環境音を徐々に大きくしていくようなことはよくやります。自転車が画面に入ってきたのはたまたまでしたが、安楽もちゃんとそっちを見て台詞の言い方を変えているし、これ使おうって。仕上げのときに現場の音ではなく自転車の効果音を足してもらって、スピーカーのこっちからこっちに抜けさせて。劇場のいいスピーカーで聴いたらそのへんが揺れるような低い音も入っているので、ぜひ劇場で観てほしいですね。

――『轟音』というタイトルにしたのはなぜですか?

片山 なんでそうしたのかは忘れてしまいました(苦笑)。でも最初に脚本を書いたときからこのタイトルで、タイトルインするところも初稿から脚本に書いています。単純に聴こえる音ではなくて、体の中で鳴る音、感情的な音をテーマにしたくて衝動的にそういうタイトルにしたんでしょうね。

――「轟音」の「ゴウ」という音が重いですよね。人間の「業」にもつながりますし。

片山 たまたまなんですけど英語の"Go on"、「続いていく」というのもテーマになっています。

――撮影期間が短かったそうですが、何日間だったんですか?

片山 6日間です。絶対やっちゃいけないです。編集がまた鬼のように早くて、次の日には多分粗編ができていました。

――仕事が早いですね。カナザワ映画祭がプレミア上映ですよね。

片山 はい。でも、いろいろな映画祭に敬遠されてきました。好きと言ってくださる人もありがたいことに多いんですが、暴力描写が嫌がられるようですね。僕の実力不足なので仕方ないんですけど、でも別に暴力を振るいたくてそうしている人の話ではないことぐらいはわかってほしいなと思いました。多分海外の方がいけそうな手応えがあります。昨年は他の作品で結構映画祭に行きました。

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轟音 (2019/日本/99分/カラー/16:9/ステレオ/DCP)
出演:安楽涼,太田美恵,大宮将司,岸茉莉,中山卓也,柳谷一成,松林慎司,片山享,宮田和夫 他
プロデューサー:夏井祐矢・宮田耕輔 撮影/照明:深谷祐次 録音:マツバラカオリ
特殊メイク:北風敬子 サウンドディレクター:三井慎介 カラリスト:安楽涼
監督・脚本・編集:片山享
© Ryo Katayama Film
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2020年2月15日(土)池袋シネマロサにて単独公開
ほか順次全国公開

2020/02/13/17:43 | トラックバック (0)
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