宮崎大祐監督監督『大和(カリフォルニア)』

宮崎 大祐 (監督)
映画『大和(カリフォルニア)』について【2/7】

2018年4月7日(土)より新宿K’s cinema ほか全国順次ロードショー

公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)

『大和(カリフォルニア)』場面1
――サクラは鬱屈したものを抱えている女の子で、アメリカからやってきた素直で自由なレイに最初は反発するけど打ち解けて仲良くなっていきます。二人の関係でそういう化学反応を描こうと?

宮崎 そうですね、人間ってもちろん自分で変わる努力はしなきゃいけないけど、人の影響でしか変われないって僕は思っていて。全然思いも寄らないところから人が来て、「あ、いつの間にか自分変わっちゃった」というのが描きたくてああいう関係性になりました。

――サクラは本当に劇的な変化を遂げていきますね。韓さんはかなり感情移入されたのではないでしょうか?

宮崎 韓さんって常に役に入り込んでいる印象があるんですが、普段は本当にケロッとしていて、僕のほうから何か言うと「それならできます、多分大丈夫です」という感じの静かなお嬢様。それがスタートするとガーッとこのキャラクターになるのが本当にすごいです。今回は俳優のアイディアを取り入れながら作りたいというのがあったので、1回思うままやってもらって、僕が「こうやってもらいたい」というのを出して、それが面白いと思えばみなさんも取り入れてくださいましたし、向こうが面白かったら「じゃあそれにしましょう」とか、「もう1パターンやってみましょう」とか。だいぶみなさんもクリエイティヴに参加している印象があったのではと思います。

――そこで脚本を変えていくようなこともあったんですか?

宮崎 いや、脚本はちゃんとあるんですけど、演技に関してゆとりを与える感じでやってみたのがよかったと思います。この映画以来、僕の演出スタイルも、役者のいいところを引き出して「用意スタート」から「カット」までの時間に収める作り方に変わったというか、ある種その俳優のドキュメントとして映画を作るようになりました。

――テイクも結構重ねたのでしょうか?

宮崎 映画制作ではしばしば1テイク目がいちばんいいと言われていて、そういう場合も多かったですけど、その定説に囚われすぎているところもあったので、時間の余裕がある日は敢えて長めに撮らせてもらったりしました。ある種今までの自分の映画の既製概念とか、一般的に「こう作るといい」と言われていることとの対決だった気がします。自分が仕事をしてきて「こうやるといいんだ」というのを1回壊してみると。

――何か心境の変化があってそうしたんですか?

『大和(カリフォルニア)』場面2宮崎 いや、毎回チャレンジしているというだけのことですね。

――キャラクターでは片岡礼子さんが演じるお母さんも素敵でした。

宮崎 片岡さんにこの間お会いしたら「映画のお母さんがすごくいいお母さんで大好きなの! あのお母さんを目指してる」みたいなことを言ってくださいました(笑)。女性ならではの懐の深さと同時に変にお母さんぶらない、より対等な関係を世界の人たちと結ぼうとするみたいなイメージで作りました。

――理想のお母さんですね。終盤のレイと二人でサクラを探しに行くシーンがとてもよかったです。でもアビーという米兵の恋人を持つお母さんもすごく引き裂かれているわけですよね。どの人物もあまり説明はないのですが、背負っているものを感じさせます。

宮崎 人間って考えれば考えるほどすごく複雑で、それを映画って2時間ぐらいの尺に収めなくちゃいけないので、いろんなことを切り落として記号化していくことになるんですが、やっぱり切り捨てる痛みをすごく感じてしまうんですよ。単純に悪いやつって世の中に絶対にいないですし、単純にいいやつも絶対にいなくて、各キャラクターそういう要素を入れつつ、その複雑さを逐一説明していくとすごく退屈な映画になってしまうので、自分の中では足りないなと思うところもあるんですけど、あれぐらいの案配になりました。この映画は9日間で撮ったんですが、撮影期間が2週間以上あれば本当は3時間以上の映画にしたいなと思っていたんです。もともとはそういう話だったんです。人間関係がまたいろいろ出てくる話で。

――じゃあ群像劇にするつもりだったんですか?

宮崎 そうです。ある街を舞台に、そこで生きる人たちの群像劇を考えていました。今のはサクラにフォーカスしていますけど、サクラ以外も入ったものでした。

1 2 34567

大和(カリフォルニア) ( 2016/日本・アメリカ/カラー/119分/アメリカン・ビスタ/5.1ch )
監督・脚本:宮崎大祐(『夜が終わる場所』監督、『孤独な惑星』脚本)
出演:韓英恵,遠藤新菜,片岡礼子,内村遥,西地修哉,加藤真弓,指出瑞貴,
山田帆風,田中里奈,塩野谷正幸,GEZAN,宍戸幸司(割礼),NORIKIYO
音楽:Cherry Brown GEZAN 宍戸幸司(割礼)NORIKIYO のっぽのグーニー
撮影:芦澤明子(J.S.C.) 照明:小林誠 美術:高嶋悠 編集:平田竜馬 音響:黄永昌
サウンド・デザイン:森永泰弘 スタイリスト:碓井章訓 ヘアメイク:宮村勇気 助監督:堀江貴大
制作主任:湯澤靖典 カラリスト:広瀬亮一 プロデューサー:伊達浩太朗,宮崎大祐 キャスティング:細川久美子
製作:DEEP END PICTURES INC. 配給:boid 協賛:さがみの国,大和フィルムコミッション
© DEEP END PICTURES INC.
公式サイト 公式twitter 公式Facebook

2018年4月7日(土)より新宿K’s cinema ほか全国順次ロードショー

2018/04/07/19:02 | トラックバック (0)
インタビュー記事
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

主なキャスト / スタッフ

記事内容で関連がありそうな記事
キャスト&スタッフで関連がありそうな記事
メルマガ購読・解除
INTRO 試写会プレゼント速報
掲載前の情報を配信。最初の応募者は必ず当選!メルメガをチェックして試写状をGETせよ!
新着記事
アクセスランキング
 
 
 
 
Copyright © 2004-2024 INTRO