宮崎 大祐 (監督)
映画『大和(カリフォルニア)』について【5/7】
2018年4月7日(土)より新宿K’s cinema ほか全国順次ロードショー
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※作品の結末に触れるネタバレ的言及があるためテキストを白反転させています。
作品鑑賞後にご確認下さい。
――ラストで女の子が出てくるのもちょっと唐突な気がしましたが、未来に引き継ぐ感じがして、この終わり方はとてもよかったです。
宮崎 あの女の子は一応その前ののど自慢大会のシーンから出てくるんです。あのラストがやりたかったんですよね。人があまりいないのが哀しいですけど、そんな大和の駅前で、チャップリンじゃないけど希望がある終わり方にしたいなと思ってああいうラストにしました。確かにここを「よくわからない」とか「唐突だ」とか言う人は多いです(苦笑)。本当に、編集の方にも「最後大丈夫ですか? つながってます?」って言われたんですけど「大丈夫です」って。
――(笑)。
宮崎 この映画って後半多重にチャレンジがあって。まずサクラが喧嘩で倒されて廃墟に行った、バンドが演奏してた、なんだか彼女がつぶやいた……と、そこで映画が終わってもいいんですけど、それがまず1個めのベットで、そのあと彼女がラップにもならないものをつぶやき上げるのが2個めのベット。3個めのベットは「ありがとう」で、4個めが子供が出てくること。この4つのポイントすべてにノれるととんでもない恍惚が得られる作品だと思います(笑)。毎回1ヶ所はああいう賭けをするんです、自分の信仰のために。だからこそ賛否両論分かれるんですが。好きか嫌いかベットが2分の1の確率だとするならば、今回は4回あるので16分の1の方しか楽しんでもらえないかもしれないんですけど、それでもやった甲斐はあると思います。
――確かに終盤は不思議なことの連続でした。あと、1ヶ所だけ監視カメラの映像が使われていることにも「あれっ?」と思いましたが、どんな意図があるのですか?
宮崎 いろんなまなざしがあるというのを入れたくて。映画というのは「ここから観てください」とお客さんを固定するアートであるわけですよね。カメラのアングルがお客さんの目になり、映画館で観ているときはそのまなざし固定になってしまうという。ただ、世の中にはいろんな目があるということを忘れないようにしたいという意味で、ああいう映像を入れています。この間大阪アジアン映画祭でお披露目した『TOURISM』(18)という作品は、そういうまなざし、「これ誰が見てるの?」という目線の映像で80分ぐらいいく話で。「気持ち悪い」と言う人もいましたが、「いい意味で奇妙で面白かった」と言ってくださる方が多くて、それは賭けが1回だけだったせいもあるのかもしれませんけど、おおむね好評でした。
――あはは。
宮崎 いつになくわかりやすいコメディで。毎回違うことをやって、そのたびにお客さんに挑戦しています。正直普通の話を普通に撮ることもできます。お仕事で「こういう脚本でこう撮ってください」と言われたら普通以上にカッチリ撮ります。でも今回はインディペンデントのこういう枠でそう撮る必要はないなって。
――依頼されたものを職人的に撮るつもりもありつつ、監督ご自身としてはやはり自分のテーマで撮る作家的な監督でありたいとお思いなのでしょうか?
宮崎 いや、ここまではたまたまそうだっただけで。映画を作るのってスタッフを集めるのもすごく大変で、いろんな人に金銭どうのというレベルではなく多大な迷惑をかける作業だと思うので、そこでそこそこのものをこういう小さな枠で狙ってもあんまりみなさんに返りがないなって。「わりとよかったよ」で終わるのか、9割の人に無視されても1割の人が泣き崩れて人生観が変わったみたいな映画にするのか、というところで僕はこの枠だったら後者を選んだ。まあタイミングもありますけど。ただ、繰り返しますが、お仕事である程度の人が「そこそこよかった」と言ってくださるラインを目指してくれというのであれば、それをやる覚悟と技量はあると自分では思っています。
監督・脚本:宮崎大祐(『夜が終わる場所』監督、『孤独な惑星』脚本)
出演:韓英恵,遠藤新菜,片岡礼子,内村遥,西地修哉,加藤真弓,指出瑞貴,
山田帆風,田中里奈,塩野谷正幸,GEZAN,宍戸幸司(割礼),NORIKIYO
撮影:芦澤明子 音響:黄永昌 サウンドデザイン:森永泰弘 プロデューサー:伊達浩太朗
音楽:NORIKIYO Cherry Brown GEZAN 割礼 のっぽのグーニー 配給:boid © DEEP END PICTURES INC.
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