真利子 哲也 (監督)
映画『ディストラクション・ベイビーズ』について【2/5】
2016年5月21日(土)よりテアトル新宿ほか全国公開
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撮影中の真利子哲也監督 ――監督は東京生まれですが、郊外や地方都市を舞台にした映画をよく撮られていますね。
真利子 そうですね。この作品の前に『FUN FAIR』(13)という短編映画をマレーシアのマラッカで撮ったんですが、そのときもそこに住みたいぐらいにその場所が好きになっちゃったんですよ。松山もそうなんですけど、行くたびに惚れてしまう(笑)。東京生まれだからというのがあるのかもしれませんが、東京以外のものにすごく憧れがあって。取材を始めた当時、四国にはセブンイレブンがなくて、住んでる人はそういうものが来たらいいなと思っているんでしょうけど、何もかもあるわけではないからこその人間味のようなものに気付かされるんです。
――柳楽優弥さんの野性的な風貌が主人公にピッタリでした。柳楽さんをキャスティングすることは早くから希望されていたんですか?
真利子 そうですね。3、4年前に企画の中身が何となく見えたところで柳楽優弥という名前は出していて、いよいよやるぞとなったときも最初に会ったのが柳楽さんでした。撮影は5月の初夏のころで、暑い中ハードに動き回る大変な現場でしたが、柳楽さんは身体を鍛えて現場に臨んでくれて、それで他の俳優にも火が点いてどんどん現場が盛り上がっていったので、主演を柳楽さんに頼んでよかったなと思いました。
――親から見捨てられた兄弟という設定は、柳楽さんのデビュー作である『誰も知らない』(04)にも重なるものがありますが、そこはキャスティングのときに意識されなかったのでしょうか?
真利子 そこまでは考えていないですね。でもこの映画でも、柳楽さんが演じた主人公の「泰良」という名前は最後しか出てこないんですよ。劇中ずっと「あいつはヤバい」というような言い方をされてきて、最後に警察官に「お前は芦原泰良だな」と言われるまで、弟の将太や親代りの近藤以外、誰も名前を知らなかったと。映画の宣伝上、資料などには柳楽さんの役名を出していますが、脚本の仕掛けとしては泰良の名前は最後まで台詞として言わないまま書きました。
――それは、社会の中で無名の存在であるということを意図しているんですか?
真利子 いえ、「あいつ」とか「お前」とか「兄ちゃん」とか、一人のキャラクターの見え方が人によって違っていて、あるときひっくり返ったりもする、ということがやりたかったんです。暴力そのものもそういうものだと思います。暴力は日常生活においては絶対にダメなものとされているけど、ところかわって、例えば戦争中だとかは肯定される。それを象徴するのが泰良という男で、人によって見え方が違うという。「誰も知らない」という言い方はちょっと違うんですけど、そういうことをやりたかったですね。
監督・脚本:真利子哲也 脚本:喜安浩平 音楽:向井秀徳
出演:柳楽優弥 菅田将暉 小松菜奈 村上虹郎 池松壮亮 北村匠海 三浦誠己 でんでん
製作幹事:DLE 制作・配給・宣伝:東京テアトル 制作協力:キリシマ1945
© 2016「ディストラクション・ベイビーズ」製作委員会
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