インタビュー
御法川 修監督/『泣き虫ピエロの結婚式』

御法川 修 (監督)
映画『泣き虫ピエロの結婚式』について【1/6】

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2016年9月24日(土)シネマート新宿他全国順次ロードショー

第4回感動大賞を受賞した同名のノンフィクションを基にした『泣き虫ピエロの結婚式』が、9月24日より公開されている。クラウンの見習いをしている佳奈美と透析患者の陽介の出会いと恋愛、そしてわずか50日の結婚生活までを描く悲恋の物語だが、観たあとの印象はさわやかだ。彼を支えたい一心で恋にまっすぐ進むヒロインの姿を夢中で見守り、限られた時間を満ち足りたものにする愛の力の大きさに、あたたかい余韻がいつまでも続いていく。志田未来、竜星涼、新木優子という若手俳優とともに原作の世界に新たな息を吹き込み、幸せな映画体験をさせてくれる作品に仕上げたのは御法川修監督。崔洋一、村川透、古厩智之など多くの映画監督の助監督として映画作りに携わり、自身も近年『人生、いろどり』、『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』などの佳品を生み出して監督としてのキャリアを着実に重ねている御法川監督にインタビューを行い、作品への想いやとても丹念な映画作りについて、映画に対する熱い情熱も吐露していただいた。 (取材:深谷直子)
御法川 修 1972年、静岡県出身。数々の作品の助監督経験を経て、2007年に映画『世界はときどき美しい』で監督デビュー。同作品は、第19回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門に出品されるなど、国内外で高く評価される。劇映画のみならずドキュメンタリー『SOUL RED 松田優作』(09)や、テレビドラマ「いつかティファニーで朝食を」(15)、「きみはペット」(16)など、幅広く手掛けている。近年の劇場公開作に『人生、いろどり』(12)、『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』(13)など。繊細な日常描写をおりまぜながら感動的に描きあげる手腕に注目が集まっている。

STORY みんなを笑顔にすることを夢見る見習いピエロの佳奈美が恋したのは、笑顔を忘れた透析患者の陽介でした。自分の運命を嘆き、人と深く繋がることを避けてきた陽介に出会った佳奈美は、彼を笑顔にするため、どんなときでも笑顔でいると決めます。佳奈美の明るさに触れ、次第に心を許していく陽介。いつしか二人は結婚の約束をします。しかし、式の前日に倒れた陽介。余命わずかな陽介は、愛するがゆえ、佳奈美との別れを決意します。再び笑顔を失った陽介に、佳奈美が贈ったものは…?
御法川 修監督1
――『泣き虫ピエロの結婚式』は、ベストセラーとなった望月美由紀さんの手記を映画化した作品ですが、原作を読まれたとき、監督はどんなことを感じましたか?

御法川 最愛の人を亡くすという悲しい実話なんですけど、さわやかな読後感を味わった原作の魅力は、愛する人のために全てを投げうって尽くす姿の清々しさにあったと思います。その「清々しさ」が、とても貴重なことのように感じられたのです。今、僕たちの暮らす社会は誰もがマスコミ目線で、事件が起こると識者でもないのに何か一言モノ申したい人で溢れて、他人への警戒心ばかりが広がっています。こんな窮屈で寂しい時代だからこそ、清々しい人の懸命な姿を見てみたい。そう思ったんです。この原作にある、いっさいの逃げ道を断って愛する人に尽くす女性の潔さを、映画として観客へ届けてみたい、と。

――そういう作品を映画化する上ではどんなことを意識されましたか?

御法川 この実話を脚色する上で最初の課題は、観客がいつまでも見守っていたいと感じるような、チャーミングなヒロインを造形することでした。韓流ラブストーリーに登場するバイタリティ溢れるヒロインたちを頭の片隅に置きながら、「泣き虫ピエロ」というタイトルとは裏腹のメソメソしていない元気な女性像を生み出すことに時間をかけました。今は原作ものを扱うと「原作に忠実である」ことを求められますが、映画は原作の再現のために存在するわけではありません。この原作と向き合って、何を「映画」として抽出するべきか、「映画をつくる」ってどういうことなのか、もう一度考え直す契機にしたいとも思いました。というのは、僕が初めて映画の現場に携わり、震えながらカチンコを叩いた日から25年が経ちます。初めて監督した映画からは10年。今40歳を過ぎて、やっと初めて映画監督に向かっている、そんな心持ちでいるからです。何か分かったつもりになっているだけで、自分は映画のことを何も知らない。そもそも「映画」と口にしたときに、その言葉が指し示す「映画」の在り様が大きく変化しているのを痛感しています。恥ずかしいモノ言いですが、勉強し直す心構えで、この作品に取り組んだつもりです。その想いから、「端正な映画」でありたいと考えました。今っぽいラブコメ的な味付けのない、折り目正しいクラシックな味わい。脚本を作る段階から完成尺は90分と決め、必要にして十分なカットだけを撮るストイックな姿勢を崩すまいと決めていました。僕自身は単純な人間なので、目に見えない感傷的な気分に溺れやすいのですが、目の前の具象を的確に切り取って、観ている人の心に更なるものを触発させるんだ!と。演出している時の心意気は、そうだったんです。

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泣き虫ピエロの結婚式 (2016/88分/カラー/アメリカンビスタ/5.1CH)
出演:志田未来、竜星 涼、髙橋 洋、おかやまはじめ、岩橋道子、佐藤恒治、粟田 麗、新木優子、螢雪次朗
監督:御法川 修 原作:望月美由紀「泣き虫ピエロの結婚式」(リンダパブリッシャーズ)
エグゼクティブプロデューサー:浅野由香 中西一雄 高木徳昭 余田光隆 プロデューサー:山本晃久 八尾香澄
スーパーバイジングプロデューサー:久保田 修 共同プロデューサー:木幡久美
ラインプロデューサー:佐藤幹也 宣伝プロデューサー:西 利一郎 撮影:池田直矢 照明:加持通明
美術:松田香代子 録音:照井康政 衣裳:植田瑠里子 小道具:武田恭子 ヘアメイク:清田恵子
助監督:長尾 楽 編集:山中貴夫 リレコーディングミキサー:浅梨なおこ 音響効果:勝亦さくら
製作:映画『泣き虫ピエロの結婚式』製作委員会 配給:スールキートス
©2016映画『泣き虫ピエロの結婚式』製作委員会
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2016年9月24日(土)シネマート新宿他全国順次ロードショー

2016/10/03/19:41 | トラックバック (0)
深谷直子 ,インタビュー

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