――丁寧に取り組まれた作品から、今回も前向きに生きようというエネルギーのようなものを受け取りました、監督は今回の映画作りを通してどんなことを思われましたか？

御法川　この作品が作られることを可能にしてくれたプロデューサーについて話をさせてください。僕にラブストーリーを撮らせようと最初に声をかけてくれたのは、八尾香澄さんという、大ヒット公開中の『四月は君の嘘』（16）やドラマの『重版出来！』（16）などを手がけた方で、僕の前作『すーちゃん　まいちゃん　さわ子さん』のプロデューサーでもあります。撮影環境を整えてくれた山本晃久さんは、松江哲明監督が手がけた異色のドラマ『その「おこだわり」、私にもくれよ!!』（16）などを手がけた方。お二人とも 30代の優れたプロデューサーです。もうひと方、スーパーバイジング・プロデューサーとしてクレジットされている久保田修さんは、『ジョゼと虎と魚たち』（03）や『メゾン・ド・ヒミコ』（05）、『のぼうの城』（12）といった名作を送り出した方です。この三人のプロデューサーが抱く映画に対する考え方や人間観を吸い取り紙のように吸収すること、それが僕の大きな課題だったと思います。映画が大勢の集団作業によって作られることは誰でも知っていることですし、僕自身も助監督として働いてきたので分かっているつもりですが、それでも「映画は監督のもの」という「作家主義」をすり込まれています。でも、監督そのものがひ弱では映画がやせ細るばかりです。僕は自分を鍛え直す場として、『泣き虫ピエロの結婚式』に取り組んだのです。映画の「語り口」という時、それを小説の「文体」に置き換えるとしたら、『泣き虫ピエロの結婚式』の文体は久保田プロデューサーのものだと言えます。その文体を駆使して、僕が「撮る」ことはできるのか必死に励んだ成果が、この仕上がりです。決して僕がプロデューサーの言いなりになったということではなく、素朴な言い方になってしまうけれど、今本当に勉強したいんです。僕の小賢しい作為を消したところで、一体どれくらい映画のために力を尽くせるのか、自分を試してみたかったんです。この作品は全国で拡大公開される規模の作品ではありませんが、四つの企業が数千万円もの資金を投じて成り立った貴重なプロジェクトです。とても監督個人で責任を負えるものじゃありません。今、IMAXに代表されるラージからスマホで撮影してしまうようなスモールまで、映像作品が生み出される環境は多種多様です。「分かる、分かる」ってところだけを頼りにして、自分が理解できないところは無視していると、変化に取り残されるのは作り手の方です。だからここ数年、テレビドラマやCMの仕事も積極的に取り組んでいるんです。1日でも多く撮影現場に立って、「ヨーイ、スタート！」と「カット！」の間だけ呼吸しようと心に決めて、泳ぎを止めたら死んでしまう回遊魚のつもりで走っています（笑）。一筋縄ではいかないことばかりですが、だからこそ面白い。生き残れなければ身を亡ぼすだけですけどね。その闇を思うと背筋が寒くなるほど怖い。だから安易な道へ流れないように、厳しく自分を見てくれるプロデューサーとの仕事が重要なんです。監督の思いつきなんか許されない、一つひとつ精査して考えぬくことを強いられる現場を求めて、たゆまず励んで行こうと思っています。映画ファンの方々が目にする「INTRO」という媒体なので、あえて言葉にしておきたいと思います。

――ありがとうございました。みなさんの情熱を込めて、丹念に作り上げた「映画」が多くの方に届いていくよう、私も精進を重ねたいと思います。