千葉 美裸 (女優)
映画『夜だから Night,Because』について
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2014年11月8日(土)より、新宿バルト9ほか全国順次公開
『結び目』(10)、『百年の時計』(12)、『赤×ピンク』(14)と、近年、矢継ぎ早に脚本作を世に送る港岳彦氏のオリジナル脚本に、邦画界の最前線で活躍する気鋭のスタッフ・キャストが結集して製作された『夜だから Night,Because』。抗いがたい過去の呪縛よって精神の地下室に監禁された男女――ふたりは、昼間でも夜の底のように真っ暗な部屋で求めあい、愛ゆえにぶつかりあい、のたうちまわる。まるでイエスに出会ったゲラサの男のように憤激し、感情を激発させる。夜だから、互いの肉体を通じて実存を確かめあうしかないからだ。こうした命がけの道行きを、シンガーでもある女優・千葉美裸は、文字通り体当たりで演じきっている。その決然たる姿勢には心底、心うたれた。名手・早坂伸の撮影、宇波拓の音楽も素晴らしく、必見の一作だ。(取材:後河大貴 撮影:牧五百音)
<ストーリー> 東京の酒場でダンサーをしているエリカ(千葉美裸)はある夜、ステージ上で、刃物を手にした女に切りつけられる。取り押さえられた女の顔を見て、エリカは息を呑んだ。女は、エリカの不倫相手である振付師の妻だったのだ。事件後、ステージに立てなくなったエリカは東京を離れて京都府宮津市に身を寄せるが、酒に溺れる生活へと堕ちていく。そんなエリカを救ったのが、地元で工場勤務をしているタイチ(波岡一喜)であった。武骨で優しいタイチに、エリカは徐々に心を開いていく。だが、やがてタイチの心に潜む闇が顔を出しはじめ、ふたりは破滅的な方向へ押し流されていく――。
――本作に出演されるに至った経緯をお聞かせ願えますか。
千葉 『非金属の夜』(12)という映画に出演したさい、カメラマンの早坂伸さんとご一緒したんです。その後、『夜だから』が制作されるにあたり、撮影・共同プロデューサーの早坂さんから、「主演候補に挙がっているから、監督面接を受けてほしい」とお聞きして。でも、いざ会場に行ってみたら、劇場を貸し切ってのオーディションだった(笑)。かなり吃驚したんですけど――動揺した状態のまま、とにかくオーディションは受けたんです。事前に送って頂いた脚本が凄く気に入って、大体の台詞を覚えていたのが幸いでした。
――気に入られたのは、“エリカ”というキャラクターですか?
千葉 エリカというよりは、港岳彦さんの脚本ですね。脚本じゃなく小説を読んでいる感覚に近くて、世界観にとりつかれてしまったというのが、一番適当な表現だと思います。
――とりつかれた要因を、もう少し具体的に教えてください。
千葉 やっぱり、素晴らしかったのはセリフですね。エリカはお酒を飲んで酔っ払うと、波岡一喜さん演じるタイチに対して、かなり酷い言葉を吐くんです。「なんで私が好きなの?」とか、「私のどこがいいわけ?」とか。女性だったらおそらく誰しもが、自分に自信がなくなった瞬間に、男性に聞きたくなることがあると思うんです。でも、こういう言葉って、日常ではタブーじゃないですか。それをエリカは、躊躇なく吐き出していく。こんなにも女の醜さや、生な感情を見せられる――表面的な美しさではなく、本当の意味での女性を演じられる機会はないだろう、と。これまでの作品でも、部分的にはあったんですよ。凄く意地悪だったり、弱虫だったり。ただ、すべてをさらけ出すっていうのは、なかなかできないことで。だから、「この脚本だったらできるんだ」と思った瞬間に、もう、完全にのめり込んでしまって……。初めて脚本を読んだ次の日には、役作りを始めていたんです。
――一筋縄ではいかない、難しい役だったと思われます。どういったアプローチをされたんでしょうか。
千葉 最初の印象としては、エリカは、不倫をしていたことや、過去のボーイフレンドを不幸にしてしまったことで、強い罪悪感を抱えている女性だと。それを表現するために、例えば日常での遅刻だったり、ちょっとした失言だったり――小さな罪悪感をたくさん見つけて、自分のことをどんどん責めるようにしました。
――役を射止める前から、そんな工夫をされていたんですか。
千葉 そうですね。もう、「自分が選ばれなかったらどうしよう?」といったことは、考えないようにしていました。「私に決まってる。もし他に候補者がいるとしたら、叩き落してやる!」って(笑)。
監督:佐藤福太郎 プロデューサー:大原久澄 脚本:港岳彦
撮影、共同プロデューサー:早坂伸 音楽:宇波拓
出演:波岡一喜,千葉美裸,小宮一葉,舩木壱輝,Velma,吉田憲章,香住美弥子,森永竜矢,小林美萌,
畑中大空,小林大星,漆原悠日,目黒かなめ,樋口帆波,杉村亮太,中山穂風良,行永理茶
制作:Jill Motion 宣伝・配給:キャンター © MONOCEROS
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