上西雄大監督『ねばぎば 新世界』

上西 雄大 (監督) 映画『ねばぎば 新世界』について【3/4】

2021年7月10日(土)より新宿 K’s cinema ほか全国順次公開

公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)

『ねばぎば 新世界』場面画像10/上西雄大、赤井英和 『ねばぎば 新世界』場面画像7/上田琳斗、剣持直明
――上西さんが演じたコオロギという役は、劇団テンアンツの『コオロギからの手紙』という演劇の主人公と重なりますね。時代設定も違いますし、まったく同じキャラクターというのではありませんが。

上西 時代も環境も違うんですけど、表現する人間のキャラクターをそのままこっちに持ってきました。

――演劇版のコオロギは教育を受けていないから字が読めないという設定で、この作品では失読症というふうに変わっているんですが、そういう弱さを持つ人物として再度登場させているわけですよね。

上西 そうですね。ハンディを持っている人間がそれをどう乗り越えるか?というところだとか、問題を抱えて苦しんでいる人間がどうバランスを取っていくか?というところにこそ人間が見える気がするので、そういうことを常に作品の中に埋めています。

――失読症とはどんなものかというのも今までよく知らなかったです。穴を通して本が読めたときのコオロギがとても嬉しそうでしたね。

上西 失読症というのは、字を覚えることはできるらしいんです。だけど文字が並ぶと記号にしか見えず、言葉として読むことができない。劇中のエピソードは、実際にそういうことをした人がおられたわけではなくて、あくまでも映画の中でコオロギがそうであったということです。

――そこで初めて読む文章が宮沢賢治の『雨ニモマケズ』で。それも「ねばぎば(=Never give up)」っていうことなんですよね。メッセージがどこまでも一貫していて、上西監督はやはりいい脚本を作られるなあと思いました。

上西 ありがとうございます。これはニース国際映画祭で最優秀脚本賞もいただいたんですよ。脚本で賞を獲ったのはこの作品が初めてで、僕にはすごく意外だったというか。脚本的には相当ベタに作っているんです。

――一見すごくわかりやすい人情ものなんですけど、ここまで描かないだろうというような人間臭さだとか、いろいろなことが起こりながら強いメッセージによって貫かれているところだとか、観ていて「おおっ」となりました。

上西 そうですか、ありがとうございます。やっぱり「ねばぎば」ですよね。これを作ったときはコロナでこんな環境になるとは思っていなかったですけど、上映の段になったらまさに「ねばぎば」で、それを予見していたなと。

――観たら元気が湧いてきますね。アクションもすごかったです。本気で殴り合っている感じで、痛そう!と思うところも多かったです。リー村山さんがアクション監修をされていて、赤井さんや上西さんはもちろん、徳竹未夏さんや古川藍さんも魅せてくれました。

上西 今ふうのすごいアクションをやる気はまったくなくて、昭和の映画に出てくるアクションをやろうと、昭和感を出すことに終始心を置きましたね。赤井さんはキレもスタミナもハンパないです。僕のシーンは編集でうまく加工したりしました。徳竹さんはもともと身体能力が高くて、アクションは得意なんですよ。彼女のブルース・リーを思わせるカットはなかなか面白かったですね(笑)。古川さんは赤井さんにボクシングの指導をつけてもらって。なかなかない経験だと思いますね。

――ロケ地についてもお聞きしたいです。通天閣がいろいろな表情を見せてくれましたね。

『ねばぎば 新世界』場面画像8/赤井英和、柴山勝也、上山勝也 『ねばぎば 新世界』場面画像9/草刈健太郎上西 通天閣には最大限に協力してもらいました。神戸浩さんが「通天閣、オイオイ!」って言うところ、あれは通天閣の普通は人が入れないところに入れてもらって、通天閣になって神戸さんを見下ろしている「通天閣目線」のショットなんです。

――そんなにレアなアングルなんですか。あと老舗映画館の新世界国際劇場がとても雰囲気ありました。

上西 映画館の存在を見せたいから、寄らないで全部引きで撮りました。

――そうですよね、喧嘩が始まっていくんですけどカメラはずっと固定のままで。

上西 アクションよりも映画館を見せたくて(笑)。

――ああいう感じの映画館は東京にはないので、ずっと残ってほしいですね。この映画の上映もできたらいいですね。

上西 新世界国際劇場でやることも考えたんですけど、洋画の映画館なので。どうしようか?と考えて、封切りは『ひとくず』でお世話になったなんばパークスシネマさんなどでかけることにしました。名画座なのでゆくゆくはあそこで上映できるようにしたいなあと思います。

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ねばぎば 新世界 (2020/JAPAN/Stereo/DCP/108分)
出演:赤井英和,上西雄大,田中要次,菅田俊,有森也実,小沢仁志,西岡德馬,坂田聡,徳竹未夏,古川藍,金子昇,神戸浩,
長原成樹,リー村山,堀田眞三,伴大介,谷しげる,剣持直明,國本鍾建,上山勝也,柴山勝也,草刈健太郎
監督・脚本・プロデューサー:上西雄大
撮影:前田智広、川路哲也,下元哲 照明:小山田勝治 録音:廣木邦人 音楽:ナ・スンチョル
編集:目見田健,ナ・スンチョル 制作:徳竹未夏,中村秀哉 助監督:山中太郎,上林大地
題字:小林良二 アクション監修:リー村山 ヘアメイク:山畑里奈,南原彩 衣装:中谷昌代,西川莉子
主題歌:吉村ビソー「 comme ca de 大阪」 制作: 10ANTS 配給: 10ANTS 渋谷プロダクション
©YUDAI UENISHI
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2021年7月10日(土)より新宿 K’s cinema ほか全国順次公開

2021/07/04/19:13 | トラックバック (0)
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