上西雄大監督『ねばぎば 新世界』

上西 雄大 (監督) 映画『ねばぎば 新世界』について【2/4】

2021年7月10日(土)より新宿 K’s cinema ほか全国順次公開

公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)

『ねばぎば 新世界』場面画像3/西岡德馬 『ねばぎば 新世界』場面画像4/田中要次
――映画のもう一つの主役が新世界という街ですよね。監督にとってもなじみ深い街なのでしょうか?

上西 はい、大阪人はみんな新世界に串カツを食べに行きますので(笑)。

――ではお二人にとっての原風景のような街なんですね。

上西 そうですね、赤井さんにとってはまさに生まれ育った街ですし、僕は十三という同じようなにおいのする街の焼肉屋の息子だったので、なじむ感じがありますね。

――そんな二人に新興宗教団体が絡むというストーリーはどのように発想されたんですか?

上西 赤井さんをイメージした勝吉は拳でしか自分を表現できないまっすぐな男で、闘う相手がヤクザとかフロント企業だとVシネのようになるし、まあ想定できる相手なんですけど、敵がいびつであればあるほどまっすぐ立ち向かう姿がフィーチャーされるだろうと思いました。

――確かにすごくいびつで、得体の知れない気味悪さが漂っていました。宗教団体についてはリサーチなどされたんですか?

上西 オウム真理教の問題というのが僕の中にまだ残っていて、それをそのまま持ってきたわけではなく僕が作り上げた架空の宗教団体なんですけど、起きた出来事など参考にしました。

――信者の祈りの言葉や動作がとても異様でしたね。

上西 お経の「インクラモイゾ」というのは、僕が目をつぶってパソコンのキーボードを打って出てきたのがそれだったんです。すごく適当で申し訳ないんですけど(苦笑)。

――そうなんですか(笑)。逆に読むと何かの言葉になるんじゃないか?などと考えてしまいました。

上西 台本をお渡ししたら、信者役の役者から「これは何語ですか?」とか「どういう意味ですか?」とかいろいろ質問が来て、正直に「目をつぶって打って出てきた言葉で、意味はないんです」と。ただ、有森也実さんが「インクラモイゾ……」とすごく完成した形で唱えられたので、あれはすごいなあと思いました。

――本当に凄みがありました。有森さん、西岡德馬さん、田中要次さんと、脇を固める俳優も名優揃いですね。

上西 「赤井さんとこういう映画を撮ります」と言ってお声がけすると、赤井さんの人徳だと思うんですが、みなさん快く引き受けてくださいました。超豪華メンバーになりました。

――演出面で心がけたのはどんなことですか?

『ねばぎば 新世界』場面画像5/菅田俊 『ねばぎば 新世界』場面画像6/有森也実上西 物語の真ん中に赤井さんの魅力を置いて、赤井さんがど真ん中をずっと攻めて走るという作品にしようと思いましたので、演出もそういう点に終始したという感じです。僕は監督をしながら出演もしましたので、演じる上では赤井さん演じる勝吉を慕い、勝吉のそばでなければちゃんと立っていられないような人間をやり続けました。

――どの人物もとても人間臭いですよね。勝吉もいい人間であるというだけではなく、ちょっとエロなシーンもあって(笑)。

上西 そうですね、スナックのママと2階に上がっていったりして。人間を描くことが僕は好きで、どのキャラクターもきちんと人間の裏側も描いて、人間味があるように演出したつもりです。

――宗教団体から逃げてきた武という少年を主人公たちが手助けするというのが物語の柱となっていて、それは『ひとくず』に重なりますね。

上西 親子の愛、家族の絆というのは今まで撮った作品すべてに埋まっていますね。家族の問題を書こうとすると、やはり子供が犠牲者になるというところに目が行って、今回も子供が出てきています。勝吉は子供を守るということに対してもまっすぐに守ろうとするし、武のお父ちゃんが嵐の海に飛び込むのは、子供をシンプルに愛してあげられるのがもともとの人間の姿だということを表現しています。コオロギは「子供はバリッと強い父親を求めているもんだ」と言いますが、そこには自分がかつて子供だったとき父親といい親子関係を持てなかったことへの悲しみがあって。僕の映画には登場人物が多いんですが、それは「人で人を描く」ということを僕の脚本はやるからなんです。どの役もみんながみんな、相手役がどういう人間かを描くために存在する、というふうに意識して作っているところがあります。

1 2 34

ねばぎば 新世界 (2020/JAPAN/Stereo/DCP/108分)
出演:赤井英和,上西雄大,田中要次,菅田俊,有森也実,小沢仁志,西岡德馬,坂田聡,徳竹未夏,古川藍,金子昇,神戸浩,
長原成樹,リー村山,堀田眞三,伴大介,谷しげる,剣持直明,國本鍾建,上山勝也,柴山勝也,草刈健太郎
監督・脚本・プロデューサー:上西雄大
撮影:前田智広、川路哲也,下元哲 照明:小山田勝治 録音:廣木邦人 音楽:ナ・スンチョル
編集:目見田健,ナ・スンチョル 制作:徳竹未夏,中村秀哉 助監督:山中太郎,上林大地
題字:小林良二 アクション監修:リー村山 ヘアメイク:山畑里奈,南原彩 衣装:中谷昌代,西川莉子
主題歌:吉村ビソー「 comme ca de 大阪」 制作: 10ANTS 配給: 10ANTS 渋谷プロダクション
©YUDAI UENISHI
公式サイト 公式twitter 公式Facebook

2021年7月10日(土)より新宿 K’s cinema ほか全国順次公開

2021/07/04/19:12 | トラックバック (0)
インタビュー記事
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

主なキャスト / スタッフ

記事内容で関連がありそうな記事
キャスト&スタッフで関連がありそうな記事
メルマガ購読・解除
INTRO 試写会プレゼント速報
掲載前の情報を配信。最初の応募者は必ず当選!メルメガをチェックして試写状をGETせよ!
新着記事
アクセスランキング
 
 
 
 
Copyright © 2004-2024 INTRO