インタビュー
マッテオ・ガローネ監督/『ドッグマン』

マッテオ・ガローネ (監督)
公式インタビュー
映画『ドッグマン』について
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2019年8月23日(金)、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開

社会のダークサイドに斬り込み、人生の不条理を見つめる作品で世界の映画祭で高く評価されているイタリアの鬼才マッテオ・ガローネ。現在ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで公開中の最新作『ドッグマン』も、犬のトリミングサロンを経営する犬好きな心優しい男が、暴力に抗えないまま転落していく姿を描き、2018 年カンヌ国際映画祭で主演男優賞とパルム・ドッグ賞を、2019 年ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞では作品賞・監督賞ほか最多 9 部門受賞している。本作『ドッグマン』に関するマッテオ・ガローネ監督の公式インタビューをお届けする。
マッテオ・ガローネ Matteo Garrone 1968年、イタリア、ローマ生まれ。カメラマン助手として働いた後、1996年に短編映画『Silhouette』で賞を獲得する。その翌年には、長編映画監督デビュー作『Terra di Mezzo (Land in Between)』を自身の制作会社で製作、トリノ映画祭で審査員特別賞 とCipputi賞を受賞する。1998年に長編映画2作目『Ospiti(Guests)』がヴェネチア映画祭で上映された他、アンジェ映画祭のスペシャルメンション賞、ヴァレンシア映画祭の最優秀作品賞、メッシーナ映画祭のコダック賞を獲得する。長編映画監督3作目の『Estate Romana (Roman Summer, 2000)』もヴェネチア映画祭で上映。2002年には『剥製師』 が第55回カンヌ国際映画祭の監督週間で上映され、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞の脚本賞と助演女優賞を受賞。また、(イタリア映画記者組合)シルバーリボン賞編集賞、ゴールデンCIAK賞編集賞、フェリーニ賞のプロデューサー賞、プロダクションデザイン賞、撮影賞、配給賞にも輝く。さらにパソリーニ賞では審査員特別賞を獲得する。2004年には『Primo Amore (First Love)』が、第54回ベルリン映画祭銀熊賞(音楽賞)を受賞し、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞の作曲賞も受賞する。2008年にはカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に初めて出品した『ゴモラ』が審査員特別グランプリを獲得し、ヨーロッパ映画賞5部門(作品、監督、男優、脚本、撮影)、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞7部門、シルバーリボン賞2部門、シカゴ映画祭の脚本賞に輝いた他、ゴールデン・グローブ賞、英国アカデミー賞、セザール賞の外国語映画賞にノミネートされる。2012年と2015年には、それぞれ『リアリティー』 (2度目の審査員特別グランプリ受賞とダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞3部門受賞、ナストロ・ダルジェント賞3部門受賞)と『五日物語 -3つの王国と3人の女-』 (ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞7部門受賞)がカンヌ国際映画祭コンペティション部門で上映される。新作は、再びマルチェロ・フォンテとタッグを組む『Pinocchio』(19)。
STORY イタリアのさびれた海辺の町。娘と犬をこよなく愛する温厚で小心者のマルチェロは、質素ながらも「ドッグマン」という犬のトリミングサロンを経営し、気のおけない仲間との食事やサッカーを楽しむ日々を送っている。だが一方で、その穏やかな生活をおびやかす暴力的な友人シモーネとの従属的な関係から抜け出せずにいた。ある日、シモーネから持ち掛けられた儲け話を断り き れなかったマルチェロは、その代償として仲間たちの信用とサロンの顧客を失ってしまう。娘とも自由に会えなくなったマルチェロは、元の幸せだった自分の日常を取り戻すためにある行動に出るが――。
『ドッグマン』マッテオ・ガローネ監督 『ドッグマン』場面1 『ドッグマン』場面2
――本作の発想の源は何ですか?

ガローネ監督 この『ドッグマン』 という映画はですね、 1980 年代の終わりに(通訳注:1988年なんですけれど)、イタリアで実際にあった事件を題材にしているんですね。12 年前に、この事件に想を得て脚本を書き始めたんです。ですが、その 12 年の間に、何度も脚本を書き直して、端緒となる事件を再解釈したり、再構築していって、今回の映画に至ります。実際の事件に想を得た作品ではあるのですが、実際の事件からは自由な形の方向性を取った作品と言えると思います。

――脚本について。

ガローネ監督 だいたい自分が映画を撮る時は、脚本を書き始めるんですけれども、実際、俳優さんたちと撮影を始めると、俳優さんたちの意見も取り入れながら、どんどん脚本を変えていくという手法をとるんですね。撮影がスタートしてから、何度も何度もコミュニケーションを重ねて、変えていったというのと、あと主演のマルチェロ・フォンテとも何度もアイデアを重ねていって、彼にあたかも服を縫い付けるように、彼の人となりに即した形で、特に最後のシーンに関しては、現場で方向性を決めて行きました。

――結果的に実話の部分は残っていますか?

ガローネ監督 実際のイタリアの事件は、当時世間を騒がせた陰惨な殺人事件だったのですけれど、実話に想を得たというものの、映画の方向性としては全く違う独立した方向性になっていると思うんです。ただ、実話に基づく要素というのは、登場人物たちですね。主人公のマルチェロ・フォンテ演じるマルチェロ役というのは、実際に犬のトリマーやドッグシッターをやっていた実在の人物です。彼がシモンチーノ と呼ばれていた暴力的な男との関係性の中で、抗えない暴力のメカニズムの中に、陥っていくということになるんですけれど、登場人物以外はストーリ ーの展開自体は自由に羽ばたいていったと言えると思います。結局は、一人の男が、暴力のメカニズムの中に陥ってしまった。しかも彼自身は全く暴力性とは無縁であるような人物であったにもかかわら ず。 こういった実際の事件に想を得たということで、かなり 暴力的なものではないかと、思われがちなんですけれど、そうではなくて、特に前半は愛情ですとか、彼の生活、彼の優しさが描かれていると思います。ちょっとクスッと笑ってしまうようなコミカルなところもあると思うんですね。一人の男性が皆に好かれたいと思っていた。その男性が陥ってしまった暴力を描いた映画だと認識しています。

――ロケーションがとても雰囲気があり、特に夕景が美しいですが、 舞台となった町はどこでしょうか?

ガローネ監督 ナポリから 40 キロくらい離れた小さな町なんですけれど、そこがこの物語を語るにあたって、最適だ、理想的だと思ったんですね。と言うのも、ちょっとウエスタンの映画のような雰囲気も醸し出していて、一つのコミュニティがあって、マルチェロはその中で、住民たちとも関係性を持っていて、彼にとってもとても重要な仲間がいる、住民たちがいるというコミュニティを描きたかったんですね。大きな大都市というよりは、小さな共同体ということで、場所を選んだというのがあります。

――ロケハンで見つけられたのですか、それとも監督と縁がある場所なんですか?

ガローネ監督 すでに 2001 年の『剥製師』と 2007 年の『ゴモラ』 のロケをやった場所なんですね。なので自分にとっては、ホームタウンのような場所なんです。ヴィラッジョ・コッポラ、コッポラ村という地名です。

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ドッグマン
監督:マッテオ・ガローネ(『ゴモラ 』、『リアリティ』、『五日物語~3つの王国と 3 人の女~』 )
出演:マルチェロ・フォンテ、エドアルド・ペッシェ、アダモ・ディオジーニ
原題:DOGMAN | 2018 年 | イタリア=フランス | イタリア語 | カラー | シネマスコープ | 5.1ch | 103 分 | PG12
字幕翻訳:石井美智子 配給:キノフィルムズ/木下グループ | 宣伝プロデュース: ブレイントラスト
©2018 Archimede srl ? Le Pacte sas
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2019年8月23日(金)、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開

2019/08/24/19:31 | トラックバック (0)
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