森 義隆監督/『聖の青春』

森 義隆 (監督) 映画『聖の青春』について【5/6】

2016年11月19日(土)丸の内ピカデリー・新宿ピカデリー他全国公開

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福間 健二監督3
──今回、2時間の映画にするにあたって、交通整理がなされた脚本だと感じました。原作を読むと村山さんが少年時代の師匠との話がとてもよくって。

森 いいんですよね、その話でもう一本映画が撮れるんですよ(笑)。

──あの部分のエピソードを削ることは勇気がいることかなと思うのですが。

森 勇気がいりましたね。

──でもそこを大胆に削って、羽生さんとの関係に絞って、まるで初恋の好きな子を誘うように村山が羽生を飲みに誘うシーンもありますけど、そのあたりはどういう意図があったのでしょうか。

森 恋愛のようになっていったのは結果論なんですけど、大事にしていたのは、村山の人生を事実通り完全再現することを目的にするのではなく、我々が思った彼の魂の形を提示することでした。その両方の方法がありましたが、後者を選んだことからまずはじまっていて。それを演じる俳優の魂を含めて撮る映画にしよう、伝記ではなくて魂の形を描こうと決めました。その方向に踏み込んだ時に、そのためには最後の5年間に絞る必要がありました。原作にあまりにいいエピソードが多すぎて、ドカッと行くしかなかった側面もあります(笑)。

──すべてをやろうとすると、薄くなってしまいますもんね。

森 やっぱり自分の一番最初の取っかかりだった、29歳で死んだ村山さんは最後に何を思っていたのかなということを濃密に描くためには、断腸の思いで師匠とのエピソードや10代の話を全部切り落としました。

──映画では村山と羽生ふたりの特別な関係がより明確にされた分、森監督はこれまでの映画でもライバル心と友情の狭間みたいな男同士の関係を描いてきましたが、その関係が今回は最も美しい形で結実しているように感じました。

森 狙って男同士の話にしたわけではないんですよね(笑)。村山さんの映画なので、彼を描くことを追求していったら、気づいたら自然に羽生さんの存在が浮上してきたんですよ。村山さんという人間が一番闇の部分に抱えていた何かを吐露できるとしたら誰なのかと考えた時に、親でも師匠でもなくて、彼が勝負に生きた男だったとしたら、最高峰の勝負ができる人に自分の心を吐露できるんじゃないかなっていうのがぼくらが今回提示した村山の魂の形の肝でした。その結果、また同じように男ふたりの物語になったという感じです。

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聖の青春 (2016年/日本/カラー/123分)
出演:松山ケンイチ,東出昌大,染谷将太,安田顕,柄本時生,鶴見辰吾,北見敏之,筒井道隆/
竹下景子/リリー・フランキー
原作:大崎善生(角川文庫/講談社文庫)
監督:森義隆『宇宙兄弟』『ひゃくはち』 脚本:向井康介『クローズEXPLODE』
主題歌:秦 基博「終わりのない空」 AUGUSTA RECORDS/Ariola Japan
© 2016「聖の青春」製作委員会 配給:KADOKAWA

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2016年11月19日(土)丸の内ピカデリー
・新宿ピカデリー他全国公開

2016/11/08/19:35 | トラックバック (0)
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