マッテオ・ガローネ (監督) 公式インタビュー
映画『ドッグマン』について【3/3】
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2019年8月23日(金)、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開
――タイトル「ドッグマン」にこめられた意味は?
ガローネ監督 スーパーマンを彷彿させるような、皮肉な意味も込めたかった。ドッグマン、スーパーマンだけれど、マルチェロは全くスーパーマンではないという。アンチヒーローじゃないですか、そういうことで、皮肉の意味も込めてドッグマンというタイトルにしたんです。
――映画の中で、犬という生き物にこめられた意味は何でしょうか?
ガローネ監督 犬というのが、二人の人間が、ものすごい暴力でもって対決しているのを眺めていて、彼ら自身が恐れをなしているような、存在として描きたかったというところもあるんですね。犬が人間の残虐性を目撃して驚いている。
――犬たちは素晴らしい動きと表情を見せますが、 犬たちへの演技指導はどのようにしたのでしょうか?専門家がついていたのでしょうか?
ガローネ監督 ついていました。トレーナーの人たちがいて、演技の指示というのは、トレーナーを介して、犬たちにやってもらって。あとマルチェロ・フォンテもドッグトレーナーとトリマーのところで修業をして。何週間かかけて慣れて行った。なので、マルチェロは犬といい関係を築いていました。
――冒頭の荒々しい犬など、マルチェロ・フォンテさんはとても恐かったと思いますが。
ガローネ監督 あのシーンはメタファーとして、これからマルチェロが、暴力にどういう風に相対していくかということを、どういう風に手なづけるじゃないですけれどね、扱っていくかというメタファーとしてのシーンです。
――シモーネのメタファーですか?
ガローネ監督 というよりは、シンボリックな意味で、暴力そのもの。シモーネとマルチェロの関係性を象徴するようなという意味合いがありました。暴力に対して暴力では相対せないということで、マルチェロは、最初はなだめていきますよね。頭を使って狡猾にそれに対抗していくというシーン、なだめていくシーンという 象徴的な存在として、あの犬のシーンがあるということです。
――『ゴモラ』もそうでしたが、暴力に抗い切れない、そこから抜け出せない人達を主人公としておられますが、監督が幸せとは言い難い主人公や人生の不条理をテーマとして描くのは何故でしょうか?
ガローネ監督 『ゴモラ』は5つの物語で構成されていて、 5つの全く異なる問題をテーマとして提示しているので、一般化はできないと思うんですね。ただ、『ドッグマン』で描きたかったのは、一人の平凡な男の姿、間違いも犯すし、だけれども人に好かれたいという部分もある、皆とよくやっていきたいという部分もある。私たちの多くに似ているようなある種平凡な男を描きたかったんだと思います。その平凡な私に似ている誰かが、望むべくもなく、暴力のメカニズムに巻き込まれていく。望んでもいないし、気がつかないうちにじわじわと暴力のメカニズムに巻き込まれていく姿というのを描きたかったんですね。マルチェロというのは、個人的に非常に身近に感じるというところかあるし、わかるし、理解できる。誰しも私の描く人間というのは、シミの無いホコリの立たない人間では決してないんですけれど、ヒーローでは決してないですし。でも、 あくまでも人間的で、自分も投影できるような人物たち、過去の登場人物も、思うので、その一人がマルチェロであると。
――撮影中に最も印象に残ったエピソードがあれば教えて下さい。
ガローネ監督 撮影はとても順調で、予定していた期間より早く終わりました。事故もなかったですし、幸せな気持ちで撮影を終えることが出来ました。
――若い頃などによく見た、あるいは影響を受けた映画や、監督などはいますか?
ガローネ監督 日本だと溝口監督が大好きです。 影響はかなり受けています。イタリアでは、ロッセリーニとフェリーニ。フランスでは、ジャン・ヴィゴ。
――日本では 8 月に公開されますが、日本の観客へのメッセージをお願いします。
ガローネ監督 8 月なんて、映画館へ行くの? 日本では。イタリアでは誰も行かないよ。
――夏休みもあるし、行きますよ。
ガローネ監督 よかった。8月にイタリアで公開される映画というのは、つまりは誰にも見せたくない映画だからね(笑)。観客には、感情を揺り動かしてほしいですね。物語の中に入り込んで行って、その瞬間、瞬間を、あたかも追体験するような経験をしていただきたい。映画を楽しみつつ、それからドラマを体感しつつ、感情を揺さぶられて、笑って泣くようなそんな結果が得られたら、監督としては何よりの喜びです。
監督:マッテオ・ガローネ(『ゴモラ 』、『リアリティ』、『五日物語~3つの王国と 3 人の女~』 )
出演:マルチェロ・フォンテ、エドアルド・ペッシェ、アダモ・ディオジーニ
原題:DOGMAN | 2018 年 | イタリア=フランス | イタリア語 | カラー | シネマスコープ | 5.1ch | 103 分 | PG12
字幕翻訳:石井美智子 配給:キノフィルムズ/木下グループ | 宣伝プロデュース: ブレイントラスト
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