御法川 修 (監督)
映画『泣き虫ピエロの結婚式』について【5/6】
2016年9月24日(土)シネマート新宿他全国順次ロードショー
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――現場の雰囲気はいかがでしたか?
御法川 どうだったのでしょう? 僕が聞いてみたいです(笑)。僕の技量では自分のことで精一杯ですからね。僕は自分が中年であることを自覚しているし、若くありたいとも思っていません。そんな自分が手がける青春映画が滑稽なものにならないか心配でした。ありふれた言葉ですが、とにかく懸命に取り組もうと。実際、台本の最初のページに「懸命に」と太マジックで記して撮影にのぞんでいたんです。それをあるスタッフに覗き見られて大笑いされましたけど(笑)。撮影が終わってしまった時は、寂しかったですね。
――20代という世代に対して何か思うところはありますか? 監督の作品はある世代そのものを撮っているようなところがある気がしていて。『人生、いろどり』(12)は老人世代の女性たちの物語でしたし、『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』(13)は30代の女性の物語でしたし。
御法川 そんなふうに僕の仕事を観ていただけるのは光栄ですが、世代にこだわったことはありません。僕なんて一作ごとゼロに立ち戻って初めからやり直す感じなので、積み重なっているものがあるのか、情けないくらい自信がないんです。僕は今年44歳になります。同じ年齢で深作欣二は『仁義なき戦い』(73)を撮り、大島渚は『愛のコリーダ』(76)を監督していたことを思うと、か細い仕事を続ける僕など死んで消えたくなります。小津安二郎や溝口健二のフィルモグラフィーを眺めると、歳を重ねるごとに手がけた作品の蓄積がその監督の人生そのものだと感じ入って憧れたりもしました。でも、僕は身の丈をわきまえています。映画の歴史の中のゴミや塵でしかなくても、丁寧に取り組んでいくだけだと覚悟を決めているんです。ただ、わずかでも僕が作る作品に共通の想いがあるとしたら、それは、人が自分の役割を全うすることの大切さです。光の当たることばかりではありませんが、小さなことも丁寧に慈しんで、自分の足元を踏み固めていく。それが、今日よりも明日、明日よりあさってを良くしていく手だてなのではないでしょうか。僕たちは今、明るい未来を信じられない時代を生きています。でも、不安を募らせて疑心暗鬼になるよりも、ちゃんと目の前の人の役割を尊重したい。目先のことに取り紛れていると見過ごしてしまうありふれたことの中に、宝石のようなヒントが隠れているかもしれません。目に見えないものを情緒的に愛でるよりも、カメラが写し撮ることのできる具体的なもの、手を伸ばせば触れられるものこそ大切にしたいんです。まなざしを深めなければ見出せないものが、この世界にはまだまだたくさんあると思うからです。
出演:志田未来、竜星 涼、髙橋 洋、おかやまはじめ、岩橋道子、佐藤恒治、粟田 麗、新木優子、螢雪次朗
監督:御法川 修 原作:望月美由紀「泣き虫ピエロの結婚式」(リンダパブリッシャーズ)
エグゼクティブプロデューサー:浅野由香 中西一雄 高木徳昭 余田光隆 プロデューサー:山本晃久 八尾香澄
スーパーバイジングプロデューサー:久保田 修 共同プロデューサー:木幡久美
ラインプロデューサー:佐藤幹也 宣伝プロデューサー:西 利一郎 撮影:池田直矢 照明:加持通明
美術:松田香代子 録音:照井康政 衣裳:植田瑠里子 小道具:武田恭子 ヘアメイク:清田恵子
助監督:長尾 楽 編集:山中貴夫 リレコーディングミキサー:浅梨なおこ 音響効果:勝亦さくら
製作:映画『泣き虫ピエロの結婚式』製作委員会 配給:スールキートス
©2016映画『泣き虫ピエロの結婚式』製作委員会
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