ウダタカキ

――おお～。神様ですよね。

ウダ　それって想像つきますけどね。小学生のときとかに友達と一緒に秘密基地を作って、その中の設定をいろいろ考えて僕らの世界を作り上げていた、それをやっているんだなと。

伊藤　そうそう、支配者になりたいというのがすごくあって。別に人を支配したいということではなく、作品を支配したいと。『虹色★ロケット』は高校生のときに作って、僕の中ではシナリオ上欠陥がたくさんあると思っていて。ファンタジーなので、現実的にあり得ないことを描いていくからどこかに絶対にしわ寄せがくるんです。「それってどうして受け入れるの？　そこはどう説明できるの？」ということを、どこかのシーンで曖昧に流したりしないとどうしようもなくて、それがあとで観て気にくわなくて。だったらものすごく壮大なんだけど、全部自分で掌握できる映画を作りたいと直後に思って作り出したのが『ユートピア』なので。把握したかったんですよね、全部を。で、ゼロから作りたくて始めたんですけど、そしたら結果的には全然制御できなかったです、デカすぎて（苦笑）。僕はもともとは漫画を描きたかった人で、漫画として作るとそれはできるんですよ。日本語で全部書いてカギカッコに入れれば異世界の言葉だっていうことにできて、それが伝わっていないということも描けるんですけど、実写映画だと微妙だなと。例えば『スター・ウォーズ』って台詞が英語じゃないですか。大宇宙で地球人じゃない人たちが英語を喋ってるのって、あの世界観だからギリギリ成立していると思うんです。そういうのもあって、ユートピア語なんて作っちゃったら絶対大変だとは思ったんですけど、やっぱりそうしないと作品の世界が保てないなと椎名との話し合いで決断し、そして作ろうと決断してから15時間ぐらいぶっ通しでスカイプでやり取りして、その日のうちに一気に作ってしまったんです。

――言語ってそんなにすぐにできるものなんですか。

伊藤　文法をその日に決めて、シナリオはある程度できていたので「台詞を変換し始めよう」と言ってなんとかやってみて、「発音するとこれは微妙だな」というところを調整したりして、文法の核になるものをその15時間で作りました。そこから1、2ヶ月かけて単語を1個1個作って文法にはめていくという作業をしました。

――俳優さんにとっても架空の言語で台詞を言うというのはまずないような体験で。

ウダ　リアクションするのが大変なんですよね。その言葉が自分にとってどういうことなのかをわかっていないとお芝居って多分できないし、相手の言葉の意味をわかっていないとリアクションが取れない。

伊藤　高木万平くんは撮影初日に知恵熱出していましたね。カメラが回るギリギリまで台本読みながら、めちゃくちゃ具合悪そうにしていて。「あーわかんねぇ」って唸っていました（笑）。

――（笑）。みんな自然なお芝居をされていますが、裏では絶対に大変な努力をしているはずですから。俳優さんたちが本当にピュアで美しいなあと。監督としては作り終えて、思い通りのものになったと思いますか？

伊藤　もちろん現場の制約はいろいろあったし、低予算なので思い通りにいかないことも多くて悔しい想いもしているんですけど、逆にイメージ通りに行ったところと、イメージを超えたところもあって。冒頭の巨木が生えた中を駆け抜けているところは、こういう画にしたいなと思ったそのものになりました。

――ウダさんは、VFXが入った完成版を観て、本当に感心されたようですが。

ウダ　ここまでのものになるとは思っていなかったですね。クライマックスの一連はブルーバックで撮っていたので、作品を観て「すごいなあ」と。

伊藤　そうですよね。役者さんたちはほとんど緑色の世界で演技していたので。

ウダ　これは誰に向けて撮ったとかそういうのはあるんですか？

伊藤　あんまり考えていなくて。