――ユートピア語についてもお聞きしたいです。架空の言語を作り上げたのも、それでお芝居しているのもすごいことですね。元になるのは英語なんですか？

伊藤　いろんな言語の面白いところをつまんでいったというか。数字の数え方は、片手で数えていたころの名残で5までしかなくて、その先の、例えば6を数えるときは「2×3」で表すという。だから「130人」という言葉がめちゃめちゃ長くなるんですよ。

ウダ　長かったですね～。

――（笑）。監督は演技を見ていて台詞を間違えたとかいうのはわかるんですか？

伊藤　僕はあまりわからなくて、撮影の椎名がわかるんですよ。

――ああ、アメリカ在住の椎名さんと一緒に作ったんですよね。

伊藤　僕は文法と単語作りをやったので、耳で聞いてもあまりわからなくて、そこは椎名にしかわからないような感じになっていました。

ウダ　最近片付けをしていたら『ユートピア』の台本が出てきて、撮影以来久しぶりに開いてみたんですよ。そうしたら英語の教科書みたいに自分で全部の単語にアクセント記号を書いていましたね。で、思い出したんだけど、最初に僕は「ああ、よかった」というような意味のユートピア語を話すんだけど、椎名くんに「ウダさん、そこは語尾にアクセントです」って言われて。自分では英語ふうのアクセントかなと考えて、アクセント記号をつけて憶えていたんだけど、「語尾かー」って。そのこだわりに初日にビックリしましたね。

伊藤　ていうか、発音のお手本として、椎名が全台詞を読んで吹き込んだ音声データを俳優さんに配ったんですが、現場の手違いでウダさんにだけ届いていなかったんです。でも届いていないというのもあとで知ったんです。現場で完璧に喋っているから聴いてきたものだと思っていたら「そんなのもらっていないですよ」と言われて驚いて。

――えーっ。どうしてウダさんは話せたんですか？

ウダ　英語のつもりでやっていました。台本はアルファベットで書いてあって、それがやりやすかったですね。「TH」とか、「L」と「R」とか、舌のポジションを考えて練習しました。

伊藤　主演のミキ・クラークも英語を話す人なので発音がすごく上手でした。意味がわからなくても、アルファベットで書いてあれば発音は自由自在という感じでした

――台本にはユートピア語のセリフと一緒に日本語訳も書かれているんですか？

伊藤　そうです。

ウダ　僕がすごく憶えているのは、「真実」っていう字幕がついているところは、ユートピア語では「オトノフ」、アルファベットだと「OTNOF」っていう単語なんだけど、反対から読むと「ほんとう」なんですよね。

――へえ～、そうやって単語を作っているんですか。

ウダ　そういうふうに作られていることもあるんですよね。日本語を逆から読んでいるんだなとか、台本を読んでいくとわかるんです。

伊藤　そうですね。あと英語から取ったり、あえて日本語っぽくしているものもあります。

ウダ　そう、「政府」は「エセウフ」なんですよね。

伊藤　はい、よくあるじゃないですか、別の言語同士で発音が同じで意味も似ているような単語が。そういうのを狙って。ユートピア語では「言う」とか「伝える」というのは全部「ウタ」にしたんですよね。ユートピアには歌は存在しないんだけど、言葉上はあるみたいな。

――面白い。

伊藤　こっちの世界の人たちはユートピアという世界を夢で見ているから、ユートピアの言語や文化に夢を通して影響されていて、だからほとんどの言語の元はユートピア語だ……という設定にして、椎名とがんばって作りました。