インタビュー
河井青葉/『私の男』

河井 青葉 (女優)
映画『私の男』について

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2014年6月14日(土)より、新宿ピカデリーほか全国公開!

10歳で孤児になった少女・花と、彼女を引き取った遠縁の若い男・淳悟。手探りで親子になった孤独な二人の禁じられた関係を描く桜庭一樹による直木賞受賞作『私の男』が、熊切和嘉監督の手により映画化された。浅野忠信と二階堂ふみが狂おしく愛に堕ちていく姿、北海道出身の熊切監督が執念で操る流氷、果敢な挑戦が生み出す圧倒的な世界に片時もスクリーンから目が離せない今年の必見作だ。一度砕けた氷のかけら同士が元のひとつの海として融け合い、大波となってまわりのものを巻き込んでいく。映画はそんな小さな犠牲者たちの懸命に生きる姿も映す。悲しく生々しい……。熊切監督は群像劇の、人間を描く作家なのだとあらためて思った。確かな俳優揃いの中で、淳悟の恋人・小町役を演じたのは河井青葉さん。多くの映画監督から愛される憂いの表情に意地をたたえて花と対峙するシーンも間違いなく本作の見どころだ。そんな河井さんに本作について伺った。(取材:深谷直子)
河井 青葉 1981年11月16日、東京都生まれ。モデルとして活動を始め、04年に吉田良子監督作品『ともしび』で初主演にしてスクリーンデビューを果たし、以降、多数のTVドラマ、映画で活躍している。熊切和嘉監督作品への参加は『莫逆家族 バクギャクファミーリア』(12)に続いて2作目となる。公開待機作に『マエストロ!』(小林聖太郎監督)がある。
河井青葉――熊切監督と組まれるのは『莫逆家族 バクギャクファミーリア』(12)に続いて2作目ですね。お話をいただいたときのお気持ちはどんなものでしたか?

河井 嬉しかったですね。熊切監督の映画にまた出たいと願っていたので。

――『私の男』の原作は読まれていたんですか?

河井 いえ、出演が決まってから読みました。

――驚かれませんでした? 原作の小町は最初とても太っているという設定で出てきますよね。

河井 そうなんです、横幅が玄関に入れなそうなほど巨大と書かれていて……、強烈な登場だと思いました。

――強烈ですよね(笑)。映画はそれとは違うんですが、小町はやはりとても印象的な登場の仕方をすると思います。舞台が紋別に移り、花役が子役の山田望叶ちゃんからいよいよ二階堂ふみさんになるんですが、二階堂さんと浅野忠信さんはなかなか一緒に映らないんですよね。淳悟の恋人の小町のほうは出ずっぱりで、花と小町、淳悟と小町、というように二人それぞれと接して不安な思いを募らせるシーンが続きます。

河井 そうですね。全体を通して観ると出番的にそれほど多いわけではないんですが、重要な役だと思います。小町にとっては、花のことも淳悟のことも、またあの土地で暮らしていくことも、すべてが憂鬱なんです。

――役作りへのアプローチとしてはどんなことをされたんですか?

河井 衣装合わせのときに熊切監督から言われたのは「河井さん、太れますか?」ということでした。東京に出て行った小町が大塩のお葬式で戻ってくるんですが、そこで体型含め見た目が変化しているのがよいのではないかと。

――ええ、ソバージュにして派手になって、確かにむっちりと重量感も出て変貌していましたが、登場するのはワンシーンですよね。そのお葬式のシーンのために太って、ほかのシーンのためにまたやせたんですか?

河井 そうです、あそこのために太ってまたやせて。でも太るほうが大変でしたね。お葬式のシーンの撮影は去年の1月後半にしたんですが、その前まで別の作品の撮影をしていたので太る期間が2週間ぐらいしかなくて。やせるのは、ほかのシーンの撮影が4月だったので2か月半ぐらい間があったんですが。

――太るにはやっぱり食べまくるんですか?

河井 そうです、寝る前にバナナを食べたりお餅をすごくたくさん食べたり。でも太ったことが見た目に出るまでには時間差があるんですよね。撮影が終わってからドンと肉が付きました(苦笑)。なので、マーロン・ブランド方式で綿を頬に詰めたり、肉じゅばんを着たりもして何とか。

――あのワンシーンのためにそこまで。

『私の男』河井 変化のインパクトがあった方がよいと思いました。私の骨格的に、少し太ったくらいだと今より健康的に見えてしまう心配もあったので、むしろやせて、やつれた感じにするという案もあったのですが、美意識のあった小町が激太りしているというほうが、やはり面白いということになりまして。

――画面ではほんの一瞬しか映らないところにもいろいろな背景があるんですね。そういうことを通して役作りをしていって。

河井 内面的なものは作ろうとして作れるものではないですが、外見的な部分を作ると役に近づけると思うので。

――内面的なものは作ろうとしても作れないというのは、この作品だと特にそうですよね。花と淳悟という相手がいての演技ですし。

河井 ふみちゃんと浅野さんというあの二人が本当に素晴らしいので。あの二人がいてくれるだけで、私はそれに反応していけば大丈夫だっていうふうに思えるんですよ。

――二階堂さんはすごかったですね。中学生のあどけない表情をしているかと思えば、とても不気味に挑発的なことを言ってきて。

河井 本当に才能があふれ出ていますね。ふみちゃんのことはものすごく好きで、本当に可愛らしい人だと思っているんです。でも対決する二人のシーンになると本当にムカついてくるというか(苦笑)、私を怒らせるような表情で、どんどん仕掛けてくるんです。

――その河井さんの戸惑いがそのまま小町の戸惑いとして現れていますよね。

河井 一瞬小町のほうが優位に立っていても、次の瞬間にはすぐに逆転してしまって。恐ろしいです。

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私の男 2013年/日本/129分/5.1ch/シネマスコープ/カラー/デジタル/R15+
出演:浅野忠信、二階堂ふみ、モロ師岡、河井青葉、山田望叶、高良健吾、藤 竜也
監督:熊切和嘉 脚本:宇治田隆史 音楽:ジム・オルーク 撮影:近藤龍人
原作:「私の男」(桜庭一樹/文春文庫刊) 製作・配給・宣伝:日活 © 2013「私の男」製作委員会
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2014年6月14日(土)より、新宿ピカデリーほか全国公開!

私の男 (文春文庫) [Kindle版] 私の男 (文春文庫) [Kindle版]
2014/06/13/16:11 | トラックバック (0)
深谷直子 ,インタビュー

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