荒井 美早 (脚本家)
映画『空の瞳とカタツムリ』について【1/3】
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2019年2月23日(土)池袋シネマ・ロサほか全国順次公開
今作は2017年8月の湯布院映画祭で上映された後に2018年11月のFILMEXでの上映を経て公開される。スタッフとキャストに友人知人がいるので今作が公開まで苦闘の映画でもあったので応援したく脚本家の荒井美早さんにインタビューしました。応援は前提にありましたが映画としてもとても興味深い内容の意欲作に仕上がっています。 (取材:わたなべりんたろう)
STORY 誰もが一度は通る痛みを、鮮烈に描いた新しい愛の物語――祖母の遺した古いアトリエでコラージュ作品を作り続ける岡崎夢鹿(縄田かのん)は、消えない虚無感を埋めるため、男とならだれとでも寝るが、一度寝た男とは二度と寝ない。一方、夢鹿の美大時代からの友人である高野十百子 (中神円)は極度の潔癖症。性を拒絶し、夢鹿にしか触れられない。そして二人の友人、吉田貴也 (三浦貴大)は夢鹿への想いを捨てきれないまま、堅実に生きようと努めていた。学生時代とても仲がよかった三人。しかし月日が経つにつれ、バランスは少しずつ崩れていった。そんな中、十百子は夢鹿に紹介されたピンク映画館でアルバイトを始めるが、行動療法のような日々に鬱屈していく。その映画館に出入りする青年、大友鏡一(藤原隆介)は、満たされなさを抱える十百子に心惹かれていく。
わたなべりんたろう スタッフとキャストに友人知人がいるので聞いていましたが、今作は公開まで幾分時間がかった映画ですよね.。そういう作品でもあるから応援したく、このインタビューを企画しましたので、よろしくお願いします。今作は『ファイトクラブ』、『仮面/ペルソナ』、『戦慄の絆』を想起しました(それらのDVDを出す)。元々あったお父様の荒井晴彦さんのシナリオの設定を変えて脚本を書いた、という話を聞きました。
荒井美早(以下、美早) そうです。女性二人がメインである点のみを残して違うものを、というお話でした。まず、『ファイトクラブ』なのが伝わって嬉しいです。『映画芸術』2019年冬号の私のインタビューでも「女の子版『ファイトクラブ』みたいな」とそのことには触れていて、元のシナリオはA子さんとB子さん、独立した2人の話でしたが、私が書いたシナリオは、本当は2人は同一人物なのかも知れない、というニュアンスを出しました。
――そうだったんですね。
美早 女性2人がメインであることの他、縄田かのんさんが主演、斎藤久志さんが監督、タイトルは『空の瞳とカタツムリ』ということが決まっていました。ホン直しの途中三浦貴大さんに出演を打診していると聞いて俄然張り切りました(笑) 。三浦さんは実は私の幼稚園の同級生で、いつかお会いしたいと思っていた役者さんでしたので出たいと思っていただけるホンにしなければと。十百子役、鏡一役のオーディションにも立ち会いました。中神さん、藤原さんお二人とも段違いに輝いていました。でも、どなたの役も当て書きはしていないです。
――映画芸術のインタビューにあった大島弓子さんを意識したこと、ご自分が潔癖症であるということ以外に何か作品に反映させている事柄はありますか?
美早 親子関係です。他には自傷や芸術家の苦悩など、ちょっといろいろなものを詰め込みすぎたかなというのはあります。
――こちらは過去に脚本を担当された『深夜食堂』も拝見していますが、今作を男性が監督するということに対してニュアンスの理解の違いのようなことは感じましたか? また、現場には行かれましたか?
美早 今回現場にお邪魔しましたが、その場で演出に対して何か申し上げるということはなかったです。現場は監督の領分ですので。しかし、だからこそ、私の領分を侵さないでいただきたかったな、というのはあります。一点、「処女喪失」に対する男性と女性の受け止め方の差は感じました。処女の喪失は女性にとっては一大事な通過儀礼でそれからの人生を変える力すら持ちますが、男性にとってはそうではないみたいで。
――斎藤監督の映画は絵的にどちらかと言えば動きがない、日本映画的な静かな映画が多かったと思うのですが今回は動きがあって面白かったです。海外で評判が上がりそうな映画だとも感じました。潔癖症もそうですし、恋愛関係ながら「触る、触らない」が扱われている『リービング・ラスベガス』と主題が重なる部分もありますし。完成した今作を観た時はどうでしたか?
美早 1回目に観た時は初めて脚本を担当した映画ということもあり、あまりに生々しく、またあまりに淡々としていて衝撃を受けましたが、2回、3回と観るうちにあのシナリオにはこの映像がベストなのだと感じるようになりました。
――脚本家は映画に対して設計というか目論見があるかと思うのですが、その点についてはどうですか?
美早 やまだないとさんから「少女漫画とポルノグラフィは近しい」という旨のコメントを頂いたのですが、まさにそういう世界をやりたかったので、そのように受け取ってくださった方がいてありがたかったです。
――将来的に監督をする気持ちはあるのですか?
美早 ないです。適材適所。私は映画は、監督、プロデューサー、役者の三位一体だと思っています。
出演:縄田かのん,中神円,三浦貴大,藤原隆介,利重剛,内田春菊,クノ真季子,柄本明
監督:斎藤久志 脚本:荒井美早 企画:荒井晴彦 タイトル:相米慎二
プロデューサー:成田尚哉 製作:橋本直樹,松枝佳紀 撮影:石井勲 音楽:阿藤芳史 照明:大坂章夫
録音:島津未来介 美術:福澤裕二 編集:細野優理子 衣装:江頭三枝 ヘアメイク:宮本真奈美
整音:竹田直樹 音響効果:井上奈津子 助監督:岸塚祐季 制作担当:三浦義信
製作:ウィルコ/アクターズ・ヴィジョン 配給:太秦 © そらひとフィルムパートナーズ
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