矢崎 仁司 (監督)
映画『スティルライフオブメモリーズ』について【2/5】
2018年7月21日(土)新宿K’s cinemaほか全国順次公開!
※K’s cinema毎週水曜16:40の回は女性限定上映回
公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)
――脚本作りにはかなり時間をかけられたのですか?
矢崎 伊藤さんと朝西(真砂)さんが2年間ぐらい書いてくださって。
伊藤 片鱗も残っていないですけどね(笑)。脚本はふつう因果にしたがい川上から川下へ流れていくものですが、この映画の脚本は、登場人物が理由を説明されず、ただ渦に呑みこまれていくんです。
矢崎 すごく面白いシナリオ作りができたなと思うのは、撮影の石井(勲)さんも照明の大坂(章夫)さんも中村早さんもシナリオに意見を言って、みんなで一緒に作ったということですね。
伊藤 ただ、矢崎さんと最初に脚本で決めていたシーンがあって、それはラストでした。トンネルに入ると、今まで主人公の二人が撮った性器の写真が数百枚現われ、フィルムが燃え上がって終わるというラストを二人で考えました。これがすごく面白いなと思って。そんなに長い時間見せ続けて、どういうふうに受け取られるかはお客さんにしかわからないじゃないですか。特定のイメージを伝えるために、お客さんをコントロールし、どこかに導いていくというのが監督の仕事だけど、それを放棄して、「たとえお客さんに石を投げられようとも性器を25分見せたいんだ、反応がわからない映画が面白いんだ」と。アナーキーな監督だと思いましたね。
――映像詩のような映画でした。最初に探されたという湖もそうですが、今までの作品に出てきたモチーフも多く織り込まれていますね。
矢崎 マッケローニや四方田さんのような「知の塊」の人たちに私なんかが挑むには直感で勝負するしかないと思って、とにかく直感を信じようと。湖というのも、例えば女性器のイメージに重ねてというようなことではなく、素直に湖が見てみたいという感じでロケハンに行きました。螺旋階段にもすごく意味があるとかいうわけではなく、ロケハンをしている間に自然にそういうものが集まってくるというか。本当に直感でいろんなものを撮らせてもらった現場でしたし、もっと言うと現場で生まれることの方が多かった。撮影中に俳優さんが作る空気であったり、そのときに生まれてくるものを映し撮らせてもらったみたいな、非常にインディーズに近い映画の作り方をさせてもらいました。今までは「現場は消化してください、現場で創造しないでください」と言われ続けてきましたが、今回は現場で創造することをすごく許してもらえて、スタッフも俳優さんたちもそこで生まれることを共有してくれた。そんな作り方ができた映画なんです。
――安藤政信さん、永夏子さん、松田リマさんの演技が素晴らしかったです。体温が感じられるように生々しく、ドキュメンタリーのようでした。
矢崎 僕もある意味ドキュメンタリーを撮っているような感覚で今回撮っていました。安藤さん、夏子さん、リマちゃんが作る空気みたいなものがすごくて、どう撮ってもこの空気は大丈夫だなという。そういった意味でドキュメンタリーだったなと。
出演:安藤政信,永夏子,松田リマ,伊藤清美,ヴィヴィアン佐藤,有馬美里,和田光沙,四方田犬彦
監督:矢崎仁司
製作:プレジュール+フィルムバンデット プロデューサー:伊藤彰彦・新野安行
原作:四方田犬彦『映像要理』(朝日出版社刊)
脚本:朝西真砂+伊藤彰彦 写真:中村早 撮影:石井勲 照明:大坂章夫 音響:吉方淳二 美術:田中真紗美
衣裳:石原徳子 ヘアメイク:宮本真奈美 編集:目見田健 助監督:石井晋一
キャスティング:斎藤緑 企画協力:生越燁⼦
配給:「スティルライフオブメモリーズ」製作委員会 © 2018Plasir/Film Bandit
公式サイト 公式twitter 公式Facebook