メイキング：村上涼撮影監督

――説教を聞いてみんながどんどん熱狂的になっていくのがすごかったですね。それを捉える村上さんの撮影がまた臨場感にあふれるもので。

福永　彼はドキュメンタリーをたくさん撮っていた人だったので、手持ちで瞬間的に反応してカメラで捉えるというのは得意でしたね。あのシーンに関しては、僕もモニターを見ながら観客みたいな状態で興奮していました。シーンのセッティングをしたのは僕だけど、想像していた以上のものになったので、みなさんのおかげですね。

――普通のドラマ部分の演出はどのようなことに気を配りましたか？

福永　リベリア人は感情表現が豊かだから、演技をしようとするときにそれ以上にやろうとするので、大げさな演技になってしまうことが多いんです。リハーサルを2週間ぐらいやったんですけど、それは大げさな演技を抑えるという作業でした。

――初めての長編映画で外国人の方に演出をつける監督というのもなかなかいないでしょうね。劇映画は今までにも撮られていたんですか？

福永　はい、短編はそうでした。編集としてはドキュメンタリーもかなりやっていたのでドキュメンタリーにもすごく興味はあって、ドキュメンタリーの要素とフィクションの要素をうまく織り交ぜた映画の制作に今は興味がありますね。

――俳優もプロの方と素人の方を織り交ぜて起用するような？

福永　そうですね。というのは、教会のシーンがとても気に入ってくれたとおっしゃってくださいましたけど、ああいうのは書くことができないものだと思うんですよ。本当に現地のことを知って、現地の人たちに出会って、出会った本人たちの魅力を引き出せたから撮れたシーンだと思うんです。あの台詞も本人以外書けるものではない。そういうことで伝えられることだとか感動とかがあって、自分もそれに心動かされるので、そういうことをやってみたいですね。

――リベリアからニューヨークに渡っていくシスコ役を演じたビショップさんは、今まで海外で演技をするという経験はあったのでしょうか？

福永　ないです。今回の撮影でニューヨークに行ったのが、彼にとってアフリカを出る生まれて初めての経験でした。だからニューヨークに着いてすぐのシーンは、撮影に来て1週間後ぐらいに最初に撮っているんですけど、自分に重なった部分もあると思います。

――ではそこもドキュメンタリー的に、演出として狙って撮られたんですね。

福永　はい、最初に撮るのはそのシーンと決めていました。