福永壮志監督監督『リベリアの白い血』

福永 壮志 (監督)
映画『リベリアの白い血』について【6/7】

2017年8月5日(土)よりアップリンク渋谷にて大好評上映中!ほか全国順次公開

公式サイト 公式Facebook (取材:深谷直子)

『リベリアの白い血』場面7 『リベリアの白い血』場面8
――その後どんどん複雑になっていくキャラクターをビショップさんは見事に演じ切っていました。素晴らしい俳優さんですね。

福永 ええ。彼はこれからも俳優をやりたいという気持ちはあるんですけど、今回の撮影後にリベリア系の女性と出会いまして、恋に落ちてそのまま結婚しまして、で、赤ちゃんを産みまして……(笑)。その女性が市民権を持っている方なので彼も永住権を申請中で、今テキサス州のヒューストンで暮らしていて、俳優をやりたいとは言っているんですけど、そこには映画産業がなかなかないのでニューヨークなりロサンゼルスなりに行って、英語のアクセントもアメリカ式のものを身につけないとできる役は限られますからまずはそこからなんですけど、なんせちょっと幸せそうなんで……(苦笑)。それを僕が無理やり連れていくのもどうか?というのがあって、彼のほうから歩み寄ってくれるのを待っているところなんですけど、歩み寄ってきてくれたらできる限りのことをしたいと思っています。素晴らしい才能の持ち主なので。

――そうなんですか! 映画とは違ってアメリカンドリームが起こったんですね(笑)。

福永 それなんですよ。不思議なもので、映画が彼の本当の人生になってしまって。いとこ役のロドニー(・ロジャース・ベックレー)もアメリカに留まってタクシードライバーをしながら映画の企画を進めています。

――監督が彼らの道を開いたことになりますね。

福永 もちろん本人の意思で残っているんですけど、ちょっと責任を感じる部分はあります。でも彼らは彼らで新しい道や幸せを見つけて進んでいるので。この映画のプロデューサーであり共同脚本家のドナリ・ブラクストンとはずっと一緒にパートナーとして映画作りをしているんですけど、彼と冗談交じりによく話すのは、「この映画はいろいろ映画祭に行ったりもしたけど、いちばんの貢献ってこの二人がアメリカ人になったことなんじゃないか?」ってことです(笑)。

――(笑)。今お名前の挙がった監督の映画制作パートナーのドナリさんは、本作の音楽を手がけたタイヨンダイ・ブラクストンの弟さんなんですね。タイヨンダイの静謐な音楽も印象的でしたが、どういう狙いで使ったのですか?

福永 いちリスナーとしてファンだったんですけど、タイヨンダイの電子音楽が作品に違う息吹を吹き込めるんじゃないかと思いました。この映画はパッとあらすじだけ聞くと「悲しいアフリカの映画か」と思われてしまうと思うんですよ。それは絶対作りたくなかったですし、そういう同情とかいった視点では見ていないし。クリエイティブな面でも変わったことをしたかった……と言うとそれだけのためにしているように思われそうですが、そうではなく別のレイヤーを足すことで違う世界なんだけどつながるということを表現したかったんです。そこにドキュメンタリー風の撮影のスタイルもあれば、電子音楽という生のものと離れた音楽もあって。ゴムも自然のもののはずなんだけど、人工的に作られた森で採取され、製品には人工的に作られた美しさがある。そういう違う世界をつなげるような音楽にしたかった。タイヨンダイにもそういう理由で電子音楽を乗せたいということを伝えて作ってもらいました。映画の中では2曲、3ヶ所しか使っていないんですが、実際にはもう何曲か作ってくれました。

――音楽が付いていない部分の音響もよかったと思います。

福永 音響はオーディオのミックスを結構こだわりましたね。1週間ぐらいやっていたかな。音楽家でもあるイーライ・コンさんという人が、ブルックリンの自宅にしっかりしたスタジオを作って自主でやっているんですけど、ものすごくセンスのある方で。いちばんこだわったのはやっぱりオープニングですね。

――暗闇の中からカンテラの光がだんだん近づいてくるシーンですね。

福永 はい。真っ暗な中で音だけ先に聴こえてきて、ちょっとずついろんなレイヤーが足されていって、どんどん音で包み込むようになる中でだんだん光が増えていって……というのをすごく微妙なところまでバランスを取ってやってくれました。あと、洗車のシーンには音楽が付いていて、洗車の音と上手くシンクロさせないとぶつかり合ってしまうんですけど、お互いを高めるように調和したものになっていました。音楽のセンスがあるから耳の聴こえのよさというのも意識した音響をやってくれました。

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アップリンク渋谷にて連日ゲストトークショー開催
8月12日(土) 13:40の回【上映後舞台挨拶】登壇:福永壮志監督
15:30の回【上映後舞台挨拶&短編併映】『ノート・フロム・リベリア』(25分)登壇:福永壮志監督
21:05の回【上映後トークショー】登壇:中井圭(映画解説者)、小林涼子(女優)、福永壮志監督
8月13日(日) 15:30の回【上映後舞台挨拶】登壇:福永壮志監督
20:50の回【上映後トークショー】登壇:菊池健雄(映画監督)、福永壮志監督
8月14日(月) 15:30の回【上映後舞台挨拶】登壇:福永壮志監督
20:50の回【上映後トークショー】登壇:カラテカ 矢部太郎(お笑い芸人)、福永壮志監督
8月15日(火) 20:50の回【上映後トークショー】登壇:山本政志(映画監督)、福永壮志監督
8月16日(水) 20:50の回【上映後トークショー】登壇:亀山亮(写真家)、福永壮志監督
8月17日(木) 20:50の回【上映後トークショー】登壇:入江悠(映画監督)、福永壮志監督
8月18日(金) 20:50の回【上映後トークショー】登壇:武正晴(映画監督)、福永壮志監督
リベリアの白い血
(原題: Out of My Hand/2015年/米国/88分/リベリア語・英語/ビスタサイズ/5.1ch/カラー/DCP)
出演:ビショップ・ブレイ,ゼノビア・テイラー,デューク・マーフィー・デニス,
ロドニー・ロジャース・べックレー,ディヴィッド・ロバーツ,シェリー・モラド
監督:福永壮志 撮影:村上涼,オーウェン・ドノバン
音楽:タイヨンダイ・ブラクストン (元 BATTLES) 製作総指揮:ジョシュ・ウィック,マシュー・パーカー
製作:ドナリ・ブラクストン,マイク・フォックス 共同製作:早崎賢治,マーティー・ラング
脚本:福永壮志,ドナリ・ブラクストン 照明:ロイ・ノウリン,トム・チャベス
録音:マイク・ウルフ・シュナイダー 音響:アン・トルキネン,イーライ・コン
編集:ユージン・イー,福永壮志 美術:スティーブ・グリセ,イオアニス・ソコラキス
衣装:キャシディ・モシャー 配給・宣伝:ニコニコフィルム 協力:Uplink ,Normal Screen,松下印刷,蔦 哲一朗
後援:アフリカ日本協議会,アジア・アフリカ協会 © 2017 ニコニコフィルム
公式サイト 公式Facebook

アップリンク渋谷にて大好評上映中!
8月26日、27日 福永監督の地元・北海道伊達市
伊達信用金庫コスモスホールにてプレミア上映会(監督挨拶あり) 公式情報
9月2日よりディノスシネマ札幌劇場(初日監督挨拶)、ディノスシネマ室蘭、
9月9日より亡くなったカメラマン・村上涼さんの育った四国・高松ソレイユ2にて
2週間限定上映(初日監督挨拶)ほか全国順次公開

2017/08/09/21:46 | トラックバック (0)
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