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北尾和弥監督作品

私はどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか、そしてあなたは……

『私はどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか、そしてあなたは・・・』画像 『私はどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか、そしてあなたは・・・』画像画像1

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2023年2月11日(土)、シアターイメージフォーラムにて公開

INTRODUCTION

繰り返される言葉とイメージの連鎖が、 眠った感覚を覚醒させる

共に暮らしていた男が突然姿を消した。

部屋に残された無数の写真。
女は写真に写った場所を探し始める。

不安定さを増す現代の東京を写真を手に彷徨い歩きながら、
女は4人の人物に出会い会話を重ねていく。

失うことへの不安、焦燥、自らが信じていたものへの疑問……
様々な想いを掻き立てられながら、次々と立ち現れる“問い”に内なる対話を深め、
女は、自らの中にあったはずの何かを埋め戻そうと足掻く。

なぜ、何に、足掻くのか。

彼女のたどり着く先とは……

そしてあなたは――

観る者を思考に導く哲学的で詩的な言葉の嵐と、リアリティーの次元から引き剥がされたような演技、大胆に景色を切り取る様な映像が不思議な魅力を醸し出し、世界の映画祭で高い評価を受けた本作。
その中でも特に高く評価されたのは、現代の東京をディストピア的に捉えたその映像美と、研ぎ澄まされた音響だった。

監督/撮影を務める北尾和弥の都市をフレームで抉り取るような画面構成や光と影の捉え方は、そこにある景色を全く別の劇空間へと変質させ、全てアフレコで再構築され徹底的に無駄を削ぎ落としながらも雑味たっぷりな音響が、静かにその空間を漂いながら時にフレームを壊してしまいそうなほどに鋭く襲い掛かる。
これらはアンドレイ・タルコフスキーやタル・ベーラ、アピチャッポン・ウィーラセタクンらを思わせる不思議な時空感覚、マルグリット・デュラスやストローブ=ユイレ、更にはハル・ハートリーの影響をも感じさせる浮遊するような言語感覚と相まって、映画に独自の世界観と圧倒的な強度をもたらし、言葉や文化の壁を超えて観客の心に爪痕を残した。

都市を彷徨いながら『何か』を探す女を演じるのは、パフォーマー/アーティストとして活躍する石川理咲子(Ree)。その身体による表現力は、漂白されて構築され直した歪で美しい世界の中に儚くも屹立し、唯一存在を許されたかのように光と闇の狭間を闊歩する。

『私はどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか、そしてあなたは・・・』

この映画は、多様で複雑なテーマを持つ歪で大きな塊だ。
観る者全てがすぐに “普通ではない” と感じる映画だろう。
『私はどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか、そしてあなたは・・・』画像画像2 しかしただの “異質な映画” ではない。
これは、他ではまず感じる事のできない異様で刺激的な “全く新しい映画体験” を産み出す、未だ誰も見たことがない装置なのだ。

体験せよ――。思考せよ――。

COMMENTARY
  • 監督/北尾和弥コメント
    ――なぜ今、この映画なのか――
    我々の社会は、いまだかつて無い程に複雑化した問題に溢れています。
    その一つひとつを挙げる訳にはいきませんが、世界中に答えの出ないままの多くの社会問題が存在し、戦争も無くなりません。考えても、解決不能に見えるたくさんの問題の網に絡め取られ、身動きが取れなくなってしまいます。そうして少しずつ、重要なことを考える作業をやめてしまってはいないでしょうか?解決に至らない問題を考えるのは辛いことですが、それでは何も変わらなくなってしまいます。必要なのは、答えが出ない問いを考え続けること。そして他者と対話することです。考える事は、人間に対話の為に必要な想像力を与え、対話は次なる問いを与えてくれます。そうして少しずつ、人は見えない道を先へ先へと進んでいくのです。
    この映画は、劇中に登場する溢れるほどの言葉で、観た人それぞれが認識する問題とどこかで結びつき、思考の波の只中へと導いていきます。そして対話を実践し、様々な別の問いを炙り出し、またそれを思考する……その作業を繰り返し、観客と共に思考し、共に夜の闇を歩くようにして、 考えることの重要性と対話の可能性、そしてその不可能性を認識させてくれる。観た人が何かを思考する端緒になろうとしているのです。
    「誰かの中に新たな思考を生み出すかもしれない」
    「その思考は、ひょっとしたら新たな社会を導き出す力になるかもしれない」 そんな可能性を、私はこの映画の中に見つけようとしています。
  • 主演/石川理咲子コメント
    この作品は、私の人生そのものだと思った――
    本当に美しい制作だったと思う。野原で美しい蝶を見つけた子供が、無我夢中でそれを追いかけるように、ただただひたむきに、自分が思う通りのことを表現し、最善を尽くした。
    そしてそれは世界中で評価された。
    私はダンサーとして、 感情や環境が変化する時の、筋肉の動き、皮膚、内蔵の感覚……そういったものを常に注意深く感じて表現していた。
    切り取られた風景の中に自分がいる……私にとってはこの上もない喜びだった。
    周りの空間に溶け込みたいが、確かに存在したいという不思議な欲求が、存分に満たされた。
    アーティストとして何かを創る時や表現する時、私はいつも、荒野をさ迷い、目の前に険しい岩山が立ちはだかっているように感じる。荒れ地を進み続け、あの手この手を使って頂上を目指す。そうしてある一つの何か、つまりは 一つの結論のようなものに何とかして辿り着くのだが、それは正しいものなのか、結局のところ分からない。なぜ追い求めるのかも分からない。それはとても孤独な作業で、全て一人で乗り越えたと思いがち だが、実は色々なものに助けられている。耐え難い苦しみのように感じるが、それはそれで一つの物語に過ぎず、また新たな一歩を踏み出す。この作品は、私の人生そのものだと思った。
    共感できる、できない、感動する、しないは重要なことではなく、体験すること、感じることが大切なのだと思う。せっかく生まれてきたのだから、 良いも悪いも越えて、すべての感覚や思考を刺激してあげたいと私は思っている。
    皆様にもそうして頂きたい。そうすることで、生きていることを実感し、そこから、感謝や喜びの感情がほとばしることを願っている。
『私はどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか、そしてあなたは・・・』画像画像3 『私はどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか、そしてあなたは・・・』画像画像4
     
  • アラン・ロブ=グリエを彷彿させる記憶と存在の関係をめぐる哲学的な問答、陰影を美しく計算されつくした映像が全編を支配し、これまでに見たことがない東京が浮かび上がる。
    (北尾監督の師匠である) 帯谷有理監督から受け継いだと思われる音の設計へのこだわりがより立体的に物語を構築。
    この不穏な137分は、劇場で観ることで内なる深淵と対峙する贅沢な体験になるだろう。――佐々木 誠(映像ディレクター/映画監督)
  • 常に波のように存在している音。
    それはこの映画を装飾しているのでも、登場人物の心情を映し出しているのでもない、東京の音風景。
    普段意識されていないその音は、都市風景を切り取ったような映像と共に異常なほどの存在感を示している。
    哲学的で内的な思考は言葉として発される。
    言葉は音となることではじめて、外界や他者との繋がりを持つための媒体となり得るのかもしれない。あらゆる感覚を幾重にも重ねたこの作品の世界に足を踏み入れると、鈍く痛々しい現実と、ふと訪れる非現実の境界が曖昧になるような、不思議な感覚の渦の中に巻き込まれていくことになるだろう。
    ――大塚 姿子(音楽・サウンドアート研究者)
  • 静謐すぎる強度。
    空気音、固体音が、構図と共にいちいち美しい。
    台詞も、休符も。
    たった一つ、持続する楽音の手触りでさえ。
    倍速視聴の時代で失われた、耳の解像度を取り戻そう。――侘美 秀俊(作曲家)
  • 人生のこと、社会のこと、宇宙のこと、あらゆるものの隙間に存在する感覚、背反しつつ共存している要素たちが、孵化する直前のサナギのような手触りで頭をよぎっていく。
    それは決して未熟を意味しない。
    この作品の裏にあるのは強靭な哲学と意志であり、禅的とも言える諦念だ。
    ストイックな脚本、ミニマルな役者の動き、表情、言葉、一連の連動と間の強弱がそれらを危ういバランスで成立させている。 しかし、そんなこじつけなど無用なくらい、圧倒的に画が美しい。
    インダストリアルな東京の無機質感と、登場人物たちのニヒルな佇まいが見事に合致した緊張感あふれるシネマトグラフィが、「画面に身を委ねる」というプリミティブな映画的欲望をたっぷり満たしてくれる。
    本当はみんな知っているはずだ。
    良い作品を撮るために、金なんかいらないということを。
    ――太田 光海(映画監督/文化人類学者)
CREDIT
出演:石川理咲子,高橋恭子,小野塚老,那木慧,鴻森久仁男
撮影助手:加賀賢三,榎本杏里 現場録音:青木伸仁 助監督:鴻森久仁男 演奏:小高寛
編曲:石川潤 カラー・コレクション・アドバイザー:山口登
監督・脚本・撮影・編集:北尾和弥
日本/2019 年/カラー/16:9/ステレオ/DCP/137 分 製作:CNSS
配給:『私はどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか、そしてあなたは・・・』配給宣伝チーム

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2023年2月11日(土)、シアターイメージフォーラムにて公開

2023/01/28/17:23 | トラックバック (0)
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