ニホンオオカミの狛犬がいる渋谷・宮益御嶽神社で
金子 雅和 (監督)
長谷川初範(俳優)
映画『リング・ワンダリング』について【1/4】
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2022年2月19日(土)より渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
『アルビノの木』が海外映画祭で高い評価を得た金子雅和監督の新作『リング・ワンダリング』が、2月19日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国で順次公開される。味気ない東京の工事現場で見つけた動物の骨、そして不思議な少女との出会いによって、過去と現在、幻想と現実を行き来し神秘的な体験をする漫画家志望の若者の成長を、詩情豊かに描き出している。森泉岳土が手がける陰影に富む劇中漫画は、荘厳な大自然の中で実写化され、そこで繰り広げられる猟師とニホンオオカミのシンプルな対決も見どころとなった。映画の自由さにあふれる必見作だ。猟師・銀三を演じた長谷川初範さんと、金子雅和監督に本作についてうかがった。 (取材:深谷直子 撮影協力:宮益御嶽神社)
長谷川 初範 1955年6月21日生まれ、北海道出身。横浜放送映画専門学院(現・日本映画大学)二期生。同校演劇科在籍時の 77年、今村昌平制作の舞台「ええじゃないか」で初舞台を踏む。 78年フジテレビ「飢餓海峡」でドラマ初出演を果たし、TBS「ウルトラマン 80」(80年)で初主演。91年にはフジテレビの大ヒットドラマ「101回目のプロポーズ」で主人公の恋敵役を演じ 一躍脚光を浴びる。その後も舞台、映画、TVと幅広く活躍。金子雅和監督作品には『アルビノの木』(16)に続いての出演となる。
STORY 漫画家を目指す草介は、絶滅したニホンオオカミを題材に漫画を描いているが、肝心のオオカミをうまく形にできず前に進めない。そんなある日、バイト先の工事現場で、逃げ出した犬を探す不思議な娘・ミドリと出会う。転倒しケガをしたミドリを、彼女の家族が営む写真館まで送り届けるが、そこはいつも見る東京の風景とは違っていた……。草介はミドリとその家族との出会いを通じて、その土地で過去に起きたことを知ることになる。東京の土地に眠る、忘れられた人々の想いがよみがえる、幻想譚である。
――『リング・ワンダリング』、すごく面白く拝見しました。私も”土地の記憶”というものにとても興味を持っていて。作品のスタートになったのは、『アルビノの木』(16)の次の作品は東京で撮りたい、という監督の想いだということですね。
金子 はい。『アルビノの木』は山の話で、過去の短編映画も自然をテーマに描くことが多く、今までは長野や山形などで撮ってきましたが、僕自身は東京生まれ東京育ちなので、一度は自分のルーツの土地で映画を作りたいと。そこで、この東京の地面の下に埋もれた記憶をテーマに撮ろうと、企画をスタートさせました。
――東京オリンピックでの開発とも結びついて。
金子 企画を始めたのは2017年ぐらいからなんですが、ちょうどオリンピックに向かって開発がますます進み、東京の風景がどんどん変わっていく時期でした。まさにスクラップ&ビルドというか、土地の下に埋もれていた記憶が上塗りされていく感じ。ちょうどこのあたり(シアター・イメージフォーラム)、青山周辺も空襲が激しかったらしくて、表参道から原宿の方に向かうところに石灯篭があるんですが、そこにも焼け焦げた跡があります。東京は過去が見えにくいけれど、ひとつ裏返せば過去が埋もれている……というところから着想しました。
――企画を立ててからの間に新型コロナの流行があり、東京オリンピックも計画通りの形では行われず、現実の世界が一変したようなところがあると思うのですが、撮影はいつされていたんですか?
金子 撮影は2020年の1月、2月だから、2年前の今ごろですね。
長谷川 ちょうどコロナの前ですね。
金子 そうですね。クランクアップが2月24日だったんですが、その翌週には撮影をやるような雰囲気ではなくなっていましたので、ギリギリのタイミングでした。ただ、世界が一変してしまう前に撮影したこの映画の中で、安田顕さん演じる青一が戦中の生活に対して「早く元通りの暮らしになればいいがね」と言う、その戦中の閉塞感と今の僕らの閉塞感が被るなと。意図せずですが、映画に描かれていることと今の時代がリンクしているところがあるなと思います。
――映画には大きく3つのパートがあって、現在と過去、そして長谷川さんが出演している劇中漫画の実写化の部分ですが、どういう順番に撮影したんですか?
金子 まず長谷川さんのシーンを長野の木曽でまとめて撮りました。というのは、劇中の漫画を実際に描いていただいた漫画家の森泉岳土さんがとてもアーティスティックで緻密なスタイルで描かれる方なので、事前に明確な資料がほしいとご要望があって。それで漫画の実写化となるシーンを先に撮って、場面写真をお送りし、コマ割りもある程度こちらで作って描いていただいた感じです。
――長谷川さんは『アルビノの木』に引き続きの出演で、役柄としても同じ猟師の役を演じられましたね。
長谷川 はい、また声をかけていただいて。バージョンアップした猟師の役で(笑)。
金子 真っ先に声をかけさせてもらいました。僕は脚本を書くとき当て書きはしないんですが、キャスティングの段階になったら真っ先に「この役は長谷川さんにお願いしたい」と思ったので。
――映画の他のパートとはまったく違う世界にどのように取り組みましたか?
長谷川 百年以上前のワイルドな世界をどうやって描くかな?と。撮影場所が本当の大自然の断崖絶壁の場所ですから。合成とかもなく、本当に崖っぷちに立たされたり、崖の上を鉄砲を持ってガーッと走っていったり、あとは滝が落ちていく隣を登っていくとか……。あれはビビりました(苦笑)。朝早かったから凍っていて滑るし。でも僕は雪国で育ってますので、生まれ育った場所を思い出したような感覚がありました。僕は大人になってからはジェントルマンふうの役柄をやることが多いんですが、どちらかと言うと本性はああいう人間なんです。だから監督にそれを引き出していただいたという感じ。なんで長谷川さんがこの役を?と意外に思う人が多くて、僕だとわからない人もいるぐらい。
――渋くてカッコいいなあ……と思いながら観ていましたが、すごい挑戦だったんですね。監督の方で気をつけたことは?
金子 もちろん山の撮影に習熟したプロのセーフティの方が現場にいて、綱はつけています。
長谷川 命綱も持っているだけというような(苦笑)。空中に足を踏む出すシーンでは引っ張ってもらっていました。
金子 要求としては結構大変なことをしていたかもしれないですね(苦笑)。でも、長谷川さんとご一緒した山のシーンは正直非常に楽しくやっていて。画としては大変なものが映っていますけど、自分では大変だったという印象がなくて、とにかく面白く充実していました。
長谷川 僕のシーンは監督がカメラを回していたんですよね。
金子 そうなんです。現在と過去という時空がありつつ、さらに漫画という三つ目の異相があるので、ちょっとルックというか質感が変わったほうがいいだろうという狙いで僕が撮りました。
長谷川 微妙に違っていますもんね。
金子 そうですね、アングルとかも。
長谷川 やっぱり違う世界になっているなというのを感じました。百年以上前が同じ世界のはずがないから違和感があった方がいいんですよね。
出演:笠松将,阿部純子,片岡礼子,長谷川初範,田中要次,品川徹,安田顕,伊藤駿太,横山美智代,古屋隆太,増田修一朗,細井学,友秋,桜まゆみ,石本政晶,ボブ鈴木,比佐仁,山下徳久,大宮将司,平沼誠士,伊藤ひろし,納葉,川綱治加来
監督:金子雅和 脚本:金子雅和,吉村元希 劇中漫画:森泉岳土 音楽:富山優子 撮影:古屋幸一
照明:吉川慎太郎 美術:部谷京子 録音:岩間翼 音響:黄永昌 VFX:高橋昂也
スタイリスト:チバヤスヒロ メイク:知野香那子 イメージボード:金子美由紀 助監督:土屋圭
制作主任:名倉愛 アソシエイトプロデューサー:松井晶子 ラインプロデューサー:武石宏登
キャスティング:大松高 エグゼクティヴ・プロデューサー:松本光司
プロデューサー:塩月隆史,鴻池和彦 製作協力:中山豊,中田直美
製作:リング・ワンダリング製作委員会(Monkey Syndicate、ラフター、プロジェクト ドーン、cinepos、kinone)
©2021 リング・ワンダリング製作委員会 配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト
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2022年2月19日(土)より
渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
- 監督:金子雅和
- 出演:松岡龍平, 東加奈子, 福地祐介, 増田修一朗, 尾崎愛
- 発売日:2019/1/5
- おすすめ度:
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