吉田浩太監督/『女の穴』

吉田 浩太 (監督)
映画『女の穴』について

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2014年6月28日(土)より、ユーロスペース渋谷ほか全国先行レイトショー/7月2日(水)より、全国全メディア同時公開

(取材:深谷直子)

『女の穴』場面6 『女の穴』場面7――ゲイの村田先生役の酒井敏也さんも、漫画からそのまま抜け出てきたようで、いちばんびっくりしました。こんなベテランの俳優さんによくこの役で出ていただけましたね(笑)。

吉田 映画化を考えた当初から「酒井さんは村田に似てるよね」という話をしていて、「でもやらないでしょ」って(笑)。でもお会いして訊いてみたら「あ、いいですよ」みたいな感じで。「お尻を出してください」って言ったら、「全然いいですよ、監督が言うならいいです」って。酒井さんは年齢も召してますしキャリアもすごいんですけど、僕みたいな若造に対してもすごく謙虚な方で、何をやるにしてもきちんとやってくれますし、素晴らしい役者だなあと思いましたね。

――素敵ですよね。とても繊細さが感じられて。こういう先生を好きになっちゃう女子高生もいるでしょうし、石川さんも酒井さんになら疑似恋愛も無理なくできたと思います。本当にみなさん絶妙なキャスティングでした。

吉田 僕も今回はハマったなと思ってて。こういうホンがあって、おそらく外れていないキャスティングができて、撮る前の段階から多分面白くなるなという気がしてたんです。こういう作品だとキャスティングにいろいろ問題が出てくるものなんですが、今回はそれがほとんどなくスムーズにいったので、純粋に映画の面白さが追求できるという気がしていましたね。エロの部分についても正直エロく撮ろうとは思っていなかったですから。エロはあっさりいこうと思ってて、ドラマ以上のものは撮ろうとしていなかったんですよ。単純に映画として作ったという感じですね。

――撮影はいつしたんですか?

吉田 去年の12月ですね。クリスマスをまたいだので本当に年末で、栃木の佐野で撮影したんですが、寒かったですね。

――静岡じゃなくて栃木なんですね。

吉田 みかん畑だけ静岡で撮ってあとは全部栃木でしたね。本当に寒くて氷点下まで普通に行ってるぐらいで。山奥だったんですよね。学校も廃校で暖房設備とかもなくて。今まで撮影した中でいちばん寒かったです。

――それは大変でしたね。でも地方の閉塞感みたいなものもよく出ていました。「女の穴」に原作にはいない福田先生の元カノが出てきて、別れても顔を突き合わせてしまったり、またくっついたりしているところだとか。

吉田 その感じがうまく出てくれたのはよかったなあと思います。僕は東京生まれの東京育ちで、地方のリアルみたいな部分は実際は知らないのでイメージで書いた部分があって。でもそういう雰囲気を感じてもらえたならよかったです。あと風景とかもありますよね、あのしょうもない中途半端な田舎道とか(笑)。ああいう世界観自体は『女の穴』の原作に元々あるんですよね。

――そうですよね、みかん畑も原作に元々あって静岡の設定ですよね。その閉塞した感じから、最後は「世界はこんなに大きいのよ」というメッセージが発せられて、映画ではそれがさらに宇宙的規模に広がっているという(笑)。

『女の穴』場面9 『女の穴』場面10吉田 あれは原作にはなかったんですけど、どうしてもやりたかったんですよね。原作だと幸子が宇宙に還っていって、福田先生は残されて元の生活をしているということで終わっていたんですけど、映画だったら宇宙での幸子を見たいだろうなと思って書きました。あとは物語としても、「女の穴」と「女の豚」は登場人物に繋がりはないんですけど、話としてはリンクしているということを提示できればなと思って、それで最後にああいうシーンを入れたという感じですね。

――吉田監督の作品としては新しい世界観ですよね。今までは等身大の現実的な恋愛を描いていたところから。

吉田 そうですね、一気に行っちゃいましたね(笑)。

――やっぱり原作から触発されたんですか?

吉田 今までの『ユリ子のアロマ』(10)とか『ソーローなんてくだらない』でも男女間のもつれとか関係性とか狭い世界を描いていたんですけど、そのあとに『オチキ』(12)っていう作品を作って、そのときにひとつ自分の中で試したかったことがあって。あの中に筋とはあんまり関係なくホームレスが出てくるんですが、彼が物語の終盤で、調子こいてた主役の一人に向かって説教をするんですよね。「あなたは今オチキにいる」というような。それをすることによって「周期」みたいな大きな世界を表現したかったというのがあって。男女間とかではなくてそれを超えたもっと大きな世界があるというような、ある世界観を提示したかったんです。『オチキ』は予算もなかったので言葉の上でしかできなかったんですけど、何か映画を形づくる規模感のようなものはもっと提示していきたいなと思っていて、そういう思いもあって『女の穴』ではそこだけにとどまらない広い世界を提示してみたという感じですね。まあそれがよかったのかどうかは分からないですけど。

――すごく今らしいというか、グローバル感が出ていますね(笑)。作品としても、世の中にはいろんな価値観の人がいて、そこでコミュニケーションのし難さにぶつかりながら想いを伝えようとする人たちの話だと思うので、それを全部包み込むようなスケールの大きいラストに本当に感動しました。

吉田 想いが伝わらないとか伝えたいとかいう葛藤は、多分ふみ先生自身のテーマでもあるんじゃないかと思うんですが、そう見てもらえてよかったです。

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女の穴 2014/95分/カラー/ビスタビジョン/R-15(セルDVD/BDはR-18)
出演:市橋直歩,石川優実,小林ユウキチ,布施紀行,青木佳音/酒井敏也
原作:ふみふみこ(リュウコミックス/徳間書店刊)
脚本・監督:吉田浩太(「ユリ子のアロマ」「オチキ」「うそつきパラドクス」)
音楽:松本 章 主題歌:MAMADRIVE「女の穴」 製作:岡本東郎,嶋田 豪,平野健一,宇田川 寧
プロデューサー:行実 良,若林雄介 アソシエイトプロデューサー:関 顕嗣 撮影:山崎裕典 照明:岩切弘治
録音:小原善哉 美術:露木恵美子 装飾:斉藤暁生 製作:バップ,アイエス・フィールド,徳間書店,ダブ
製作プロダクション:ダブ 配給・宣伝:アイエス・フィールド/アルゴ・ピクチャーズ
©ふみふみこ/徳間書店・2014映画「女の穴」製作委員会
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2014年6月28日(土)より、
ユーロスペース渋谷ほか全国先行レイトショー
7月2日(水)より、全国全メディア同時公開

2014/07/02/20:24 | トラックバック (0)
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