神谷 亮佑 (監督) 映画『Tribe Called Discord:Documentary of GEZAN』について【3/4】
2019年6月21日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開
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――映画にはライブツアーの部分しか収められていないのですが、旅の後半にはスティーブ・アルビニとともにレコーディングをしていますよね。アルビニの印象はいかがでしたか?
神谷 プロフェッショナルだなと思いました。きちんと休憩を取るんですよ。時間が限られているから、GEZAN のメンバーは結構焦りながら「こうしよう、ああしよう」とかやっているんですけど、アルビニは休憩をきっちり取って、戻ってきて作業する。ずっと「ノー・プロブレム」って言っていて、ベストなコンディションで仕事をすることを大事にしているんだろうなと思いました。
――GEZANのほうは、ライブツアーを経てのレコーディングで、曲に込める想いに変化があったのではないかと思います。
神谷 レコーディングした曲はもともとできていた曲ですけど、その場で入れた歌詞もあって、できあがっていく感じでした。旅の体験を生かしていたと思います。そうじゃないとあの音楽にはならない。
――帰国後、監督はなんと失踪してしまうのですが、このときはどんな想いだったのでしょうか?
神谷 旅から各々持ち帰ってきたものがあると思うんですけど、彼らにはライブやいろいろな作業があって、その中で消化していって。僕は僕で編集して、ずっとこの旅の映像と向き合っていて、「何も終わっていないのに、なんでこれを編集できるんだろう?」と思って闇に入っていきました。
――編集作業はまず自分の部屋で映像を見直して、という感じですか?
神谷 そうです。それで闇に(苦笑)。毎日撮っていたので素材もめちゃめちゃありました。
――それはちょっと嫌になりますよね。5人で旅をしていたのに、一人で自室に閉じこもって。しかもあの部屋で……(苦笑)。監督を探しにきたのはマヒトさんですか?
神谷 そうです。失踪する前、マヒトの家で作業をしていてカメラを置いてきてて。
――なるほど、それで撮影を。ちゃんと撮っているのがすごいですよね。マヒトさんのほうにも映画作りの勘が働いたというか。
神谷 そうですね、単純に『監督失格』(11)的なノリもあったのかもしれないですね。
――ちょっと「演出か?」と勘ぐりたくなるような映像なんですけど、GEZANだったらこんな奇跡があってもおかしくないなと。とにかくこれで映画がまた面白くなって。
神谷 プロデューサーをしてくれたカンパニー松尾さんも、あそこがあったから気に入ってくれたのかな?と思います。アメリカツアーって、バースでできているじゃないですか。ここはパンク、ここはネイティブと。その中にここ日本の汚い部屋で悩んでいるやつっていうバースがあるというのは面白いところで。
――(笑)。監督も葛藤していたと。カンパニー松尾さんとはどんなやり取りをしたんですか?
神谷 最初に作ったバージョンは、アメリカツアーから日本に帰ってくるところで終わりだったんです。まずそれを松尾さんに映画館に送っていただいたんですけど、「これではまだ足りない」と映画館に断られて。そういう反応があることは嬉しかったんですけど、やっぱり自信がなくなって、悩んでいろんな形にしていたら、松尾さんに「ドキュメンタリー病にかかっているよ。無理やりオチを作ろうしている」と言われて。それで落ち着いて現状を見ると、GEZANはGEZANで全感覚祭(GEZANの自主レーベル「十三月」が主催する投げ銭制の野外フェス)に向かっている。それをちゃんと撮ろうと撮って、ああいう形になりましたね。個々の様々なコミュニティのバースがまずあって、それが全感覚祭という開けたいろんな人たちの集まりで全部集結すると。
(2019 年|日本|カラー|ビスタ| 88 分| DCP|映倫審査区分:G)
製作:十三月 プロデューサー:カンパニー松尾 監督:神谷亮佑 音楽:マヒトゥ・ザ・ピーポー
主演: GEZAN<マヒトゥ・ザ・ピーポー、イーグル・タカ、カルロス尾崎・石原ロスカル>,神谷亮佑
出演:青葉市子,テニスコーツ,原田郁子,THE NOVEMBERS,行松陽介,UC EAST,
Imai,踊ってばかりの国,HIMO,呂布カルマ,やっほー 他
デザイン:マヒトゥ・ザ・ピーポー cover photo:池野詩織 題字:STANG
配給・宣伝: SPACE SHOWER FILMS © 2019 十三月/SPACE SHOWER FILMS
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