福間 健二 (監督) 映画『秋の理由』について【5/5】
2016年10月29日(土)より新宿K's cinemaにてロードショーほか全国順次公開
公式サイト 公式twitter (取材:深谷直子)
――透明感と陰影のある映像も美しかったです。撮影の鈴木一博さんとは何本も一緒に組まれていますが、今回の撮影で感じたことは?
福間 いつもそうなんだけど、僕はショットを撮りに行くんですよね。あるシーンを撮るときに、いちばん大事なのはこれだというのを撮ればもういいと思っているところがあって。でも映画はそうじゃないでしょう、シーンがあってシークエンスがあって、流れでしょう。そこで鈴木一博が芝居の流れだとかを見てくれていて、それが分かっているから、僕も気楽に「これだけ撮る」というのが言えるんですよね。そこは他の監督とカメラマンの関係と比べていい感じになっていると思います。「ここは大事だ」というのが分からない撮り方になっている映画というのが結構多いと思うんですよね。あるいは大事なものを撮ったのに、大事ではないものが前後に重なっていて、きちんと掴めた感じになっていないものが。この映画は全部で250ショットぐらいあって、全部頭に入っているけれど、本当に「これは撮りたい」というのを撮っていきました。秦(岳志)くんの編集も小川(武)さんの音響もそういうふうになっています。秦くんの編集というのは基本的にドキュメンタリーの編集で、「何が出てきても大丈夫」ということでやっているので、僕のほうでも「こうしたい」というより「ああ、こうなったか」っていうのを活かしたいということで、また実際現場で起こることは驚かされることの連続でした。
――監督は60代のうちに映画を10本撮りたいということをおっしゃっていますね。
福間 はい、まだ3本しか撮っていなくて(苦笑)。「10本撮りたい」と思っているから3本とか4本とか撮れているのかもしれないけど。少しずれてもいいからどんどん撮りたいと思っています。そして、やっぱり分からないことをやらなきゃね。自分で「こうなってこうなる」と予想できることはもういいから。『秋の理由』は今までの作品と比べて実験性が少ないと思われるかもしれないけど、普通さに近づいていって、でもやっぱり普通じゃないという作り方。そういうふうに実験性とか冒険性というのが来ているんじゃないかなと感じていて、そういうことができたんじゃないかと思っています。
( 2016年9月8日 新宿ケイズシネマで 取材:深谷直子 )