――葛西さんは「試写会で観るたびに発見がある」ということをSNSでおっしゃっていて、映画をすごく気に入られているようですが、どんな感想をもらいましたか？

川口　細かい感想があったわけではないですけど、映画でしっかり見せている２試合の切り取り方が新鮮だったといちばん最初に見てもらったときに言われました。スピード感がすごくて驚いたと言っていましたね。

――ライブ感がありました。川口監督はやっぱり編集テクニックも冴えているなあと。

川口　テクニックって自分で言うのはアレですけど、試合の編集は超楽しんでやっていますね。でも映画全体の編集は大変で、毎度地獄としか思えないです。試合映像はもっと長く見せたいところを泣く泣く切りましたね。

――確かに。映画としてすごく面白いけど、試合を丸ごと見たくもなりました。

川口　もちろんこれで生のデスマッチを見たいと思ってもらえたなら嬉しいです。でも僕はそれが目的ではなく、映画として完成させたいだけでした。

――とても燃える映画になりましたね。公開が楽しみです。

川口　ありがとうございます。この映画を観に来てくれるのはプロレスファン中心になるとは思うんですけど、こんなにリアルに血が出ている人を映す映画はないので、ホラーファンとかにも観てもらえるんじゃないかなって（笑）。劇映画の血は血糊なので、本物の血がこんなに流れる映画はないですよ。

――あ、私も友達にそういう勧め方しました。「すごく痛い映画観た。こんなのめったに観られないから観たほうがいいよ！」と（笑）。

川口　（笑）。本物の血が見られる刺激的な映画として観てもらえたら嬉しいですね。僕の映画って世の中的にはニッチな世界を扱っていることが多いと自分でもわかっているのですが、でもそこには誰でも共感できるようなシンプルな真実がいろいろ映っていると思っていて。プロレスラーが「やっていくしかない」と言って生きていく姿を見て、個人事業主だとか、学校で友達がいない人とか、それに限らず一般の人誰でも、特に今はコロナの状況をみんな共有していて、でもやっていくしかないので「やるからにはとことんやろうぜ」と思ってもらえたらなと思います。子供が見て「うわーっ！なにこれ、本物？」とか言われるのがプロレスの醍醐味というか、何も知らない人からしてみるとある意味見世物であることをレスラーのみなさんも自覚しているんですよね。老若男女、女性のファンも多いですからね。本能に訴えかけてくる映画として、たくさんの人に刺さることを願っています。