川口潤監督『狂猿』

川口 潤 (監督) 映画『狂猿』について【3/4】

2021年5月28日(金)よりシネマート新宿ほかにてロードショー!以降順次公開

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『狂猿』場面画像7 『狂猿』場面画像8
――撮影を進めるうちに葛西さんへの向き合い方も変化していったと思いますが、変わるきっかけって何かありましたか?

川口 やっぱり葛西さんが魅力的な人なので、それで僕も変わったのかもしれないですね。最初のクリスマスの試合を撮ったときは、リングから離れてこわごわ撮っていたんですけど、その後欠場に入るのでしばらく血まみれになるようなこともなく……。どっちかというとコロナ以降一緒に過ごしたことが大きいかな。緊急事態宣言で、葛西さんが思い描いていた形とは違う復帰戦に向かっていたとき、もう気持ちが一緒になっていたのかもしれないです。「傷がすごい」とかよりも、葛西さんの気持ちの方に寄り添っていたのかもしれない、今思うと。

――6月にコロナの状況下で初めて行った復帰戦で、試合にも負けてしまい、お客さんを熱狂させることもできなかったと反省する葛西さんの姿があるんですが、そこで葛西さんも本当に変わった気がしました。

川口 そうですね、あれは多分本音で。その前2カ月ぐらいコロナで身動きが取れなくなって、近所の公園でトレーニングをされてましたけど試合はできなくて。気持ち的にもやってられないし身体もブヨブヨになっていた時期に、急遽興行を再開しよう!という動きになり、「これじゃいかん」というモードに入っていったようです。で、復帰戦からはみるみる身体が締まっていくと同時にいい試合をしたいという感じになっていって。僕のほうもコロナの状況は初めて体験するわけで、「お客さんが声を出せないのはしょうがないですよ」とか言いながら、そのへんから葛西さんの方に気持ちが入っていったのかもしれないです。後楽園の試合を撮るころには僕も「やっとちゃんと撮れるな、やったるぞー!」という気持ちで。そんなモチベーションと共にどんどん試合の撮影にも慣れていって、そういう気持ちがリンクしていた気がします。

――復帰戦以後の試合では葛西さんがどんどん高まっていくのが感じられました。負けたときのほうが「まだ伸び代がある」と嬉しそうにしているという。「年齢には縛られないで活動していく、死ぬ直前が最盛期」という言葉もすごく前向きだなあと。

川口 本当に「まだまだ俺はいけるな」と思ったんだと思います。後楽園での試合でチャンピオンに負けたりもしていますけど、でもプロレスラーとしての魅せ方、ファンの期待度は全然負けないなという自信があって、だからああいう言葉が出るんだと思います。もしかしたらコロナで2ヵ月まったく試合をしなかったのは、ある意味コンディションを整えるという部分では必要だったのかもしれません。それまで相当身体を酷使していて、それは身体もボロボロになるだろうし、調子が悪いときは確実に気持ちも落ちるから、ひょっとしたらいい充電期間になっていたのかもしれないです。

――デスマッチは敵味方の関係であっても一体感もあって、そこもいいですね。映画の中で、デスマッチが初めてプロレス大賞ベストバウトを獲った2009年の伊東竜二戦のことが語られますが、証言者がみんな興奮していて、「みんなで血を流し合って獲ったように思っている」という言葉にとてもグッときました。インディーズならではの気概があって、それが川口監督らしいなとも思いました。

川口 陽の当たらない世界ばっかり撮っているなんて言わないでくださいよ(笑)? 僕はこういう人たちがメインになってほしいと本気で思いながらやっています。まあそういうところに何か共感はしましたね。最初「なんで俺がプロレスなんだろう?」と思いましたけど、撮り出したら共感できるところばかりで、きっとそういう運命だったんですね。

――あと川口監督らしさが出ているのは、私生活に入り込んでいくところですね。今回も北海道の実家に行ってお母さんにお話を聞いて。たまらない見どころになっています。

『狂猿』場面画像9 『狂猿』場面画像10川口 お得意の北海道シリーズですね(笑)。「雪が好きだねえ」とか言われそうだなと。

――(笑)。劇中で流れるハードコアな音楽も絶妙でした。監督が好きな曲を選んだんですか?

川口 そうです。葛西さんの入場テーマがCOCOBATの「DEVIL」なんですよ。こういう音楽が鳴っている映画だったら面白いなあと思ったし、デスマッチ自体がプロレスにおけるオルタナティブだから、オルタナティブなロックが絶対合うなと思って。撮りながら頭の中で鳴ってた曲も何曲かあって、それを合わせたいなとやっていきました。あと、この映画は世界中のデスマッチファンが観るだろうなと思ったんですよ。そのときに国産の名曲たちが響いてほしいなと思って。世界中の愛すべきボンクラどもが「おお、なんだこの曲は!」と思ってくれたら最高だなと(笑)。だからホンモノをズラリと揃えました。

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狂猿 (1.78:1/カラー/ステレオ/107分/2021年/日本/PG12)
出演:葛西純,佐々木 貴,藤田ミノル,本間朋晃,伊藤竜二,ダニー・ハボック,竹田誠志,杉浦 透,佐久田俊行,登坂栄児,松永光弘 ほか
監督:川口 潤 撮影:川口 潤,大矢大介,鳥居洋介,村尾照忠 録音:川口 潤
編集:川口 潤,築地亮佑(COLORS) MA:三留雄也 Art Work:BLACK BELT JONES DC
写真撮影:岸田哲平,中河原理英 制作:アイランドフィルムズ 企画:佐藤優子
製作:葛西純映画製作プロジェクト(スペースシャワーネットワーク+ポニーキャニオン+プロレスリングFREEDOMS)
配給:SPACE SHOWER FILMS ©2021 Jun Kasai Movie Project.
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2021年5月28日(金)よりシネマート新宿ほかにてロードショー!
以降順次公開

2021/05/26/18:33 | トラックバック (0)
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