川口潤監督『狂猿』

川口 潤 (監督) 映画『狂猿』について【2/4】

2021年5月28日(金)よりシネマート新宿ほかにてロードショー!以降順次公開

公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)

『狂猿』場面画像3 『狂猿』場面画像4
――映画は2019年12月25日のブラッドクリスマスという葛西さんのプロデュース興行で始まるんですが、マスクをしているお客さんが目についてしまって。このころから新型コロナの影響ってあったんだっけ?と思いました。

川口 2019年12月の段階ではコロナのコの字もほぼなかったですよね、多分。お客さんが普通にお酒を飲んでたりとかして。マスクは風邪対策とかだと思います。

――その試合は葛西さんが長期欠場に入る直前の試合で、そうそう予定調和的に進むかどうかはわからないと思うんですが、一応そこから復帰戦までを追うという企画として始まったと。

川口 そうですね、話をもらった時点で葛西さんがしばらく長期欠場をすることになり、5月ぐらいに復活をする、もしかしたら4月にアメリカ行きが決まるかもしれない、それを追って年内に公開するイメージでいきましょう、みたいな話だったんですよ。元々は、ですけどね。

――葛西さんは撮影当初から自分の弱みの部分も見せていますよね。「団地暮らしで金銭的に助かっているけど、一家の主として家を持ちたい」とか。元々そういう部分をオープンに見せてくれる方なんでしょうか?

川口 インターネット上で見る限りではそういうことを普通に言ってますね。もしかしたら映像では初かもしれないですけど、決してファンにとって初めて見る葛西さんの姿ということはないと思います。

――この映画は、スポーツ映画の王道のような展開を辿るものになっていると思うんですよね。年老いたり負傷したりして一線を退いた選手が、家族のため再帰に賭ける、というような。

川口 まあわかりやすいと言えばわかりやすい。

――葛西さんはセルフプロデュース力のある方だと思うので、そういう物語を目指して映画に入っていったんじゃないかな?と。映画をドラマチックにするためというより、復帰戦に向かって自分を奮い立たせるために。

川口 ああ、それは間違いなくあると思います。葛西さんはプロレスラーなので、本音をさらしながら、自分の中で描いているドラマが絶対あるはずで。「モチベーションが下がってきている」というようなことも洗いざらい話して、一方には大歓声の中復帰するというイメージがあったと思うし、僕もそのイメージにそのまま乗ってやろうみたいに思っていました。プロレスってある種ミステリーじゃないですか。みんな知ってはいるけど暗黙の了解として共有しているものがあると思うんですよね。そこを暴くドキュメンタリーを作るつもりはなかったんです。暴かれる方向に転がっていくならそれでもいいんですけど、僕の方でそれをしようという意識は持っていなかった。で、たまに葛西さんが自己演出で何か転がし始めたなというのを感じたときもあったけど、その葛西純をそのまま撮ろうと思いました。

――音楽のドキュメンタリーを撮るときとの違いはどんなところに感じましたか?

川口 試合はわりと同じように撮りましたね。ただ勝手が違うので。音楽の映画で破片は飛んでこないですよね(笑)。最初に撮ったクリスマスの試合はめちゃめちゃ怖くて、カメラもすごく遠いんですよ。でも最後の方に出てくる試合はすごく近いです。現場を何度か体験して「ここまで行ってもOKなんだな」って掴んでいった感じです。試合以外はミュージシャンのドキュメンタリーを撮るのと同じ感覚で行っていますし、同じ感覚で話をしています。ただプロレスラーの考えに触れるのも初めてだし、さっき話したようなプロレス独特のセルフプロデュースみたいなものもあるので、そういうのは知らないものとして素直に聞きましたね。

――デスマッチを近くで見て発見したことはありますか?

『狂猿』場面画像5 『狂猿』場面画像6川口 「傷はホンモノ」ってあらためて思いましたね。葛西さんが劇中で言っていますけど、子どものころテレビでプロレスを見ていたら、お父さんが「今の技は当たってねえよ、あんなの痛くない」とか言っていたって。プロレスの楽しみ方ってそういうのを含めてだと思うんですけど、葛西さんは多分そのとき「そういうことを言わせない、本物の痛みが伝わるプロレスをやりたい」と思ったんでしょうね。で、あの傷はまさに本物の傷で、身体の張り方がハンパないなって。これは誰も真似できないことだと思うし、デスマッチっていちばん本当のプロレスだなって思いながら撮っていました。

――関係者の証言の中にも「こんなに危険なことができるのは羨ましい」という言葉が出てきましたね。私もそれはすごく感服しました。痛みや恐怖が枷にならないというのは強いなあと。超人的なことが平気でできてしまう。

川口 言ってみればスタントマンと変わらないですからね。それをショーとして魅せている。すごいもんだなあと思いました。試合で大怪我をしても帰りの車の中で普通にインタビュー受けて喋ってくれるし、他の選手のお見舞いで病院に行くシーンがありますが、見舞ってる葛西さんもめちゃくちゃ血だらけで、怪我人が怪我人を見舞ってる、わけわかんないなって(笑)。今まで見たことのない世界なので僕としてはすごく面白かったです。

1 2 34

狂猿 (1.78:1/カラー/ステレオ/107分/2021年/日本/PG12)
出演:葛西純,佐々木 貴,藤田ミノル,本間朋晃,伊藤竜二,ダニー・ハボック,竹田誠志,杉浦 透,佐久田俊行,登坂栄児,松永光弘 ほか
監督:川口 潤 撮影:川口 潤,大矢大介,鳥居洋介,村尾照忠 録音:川口 潤
編集:川口 潤,築地亮佑(COLORS) MA:三留雄也 Art Work:BLACK BELT JONES DC
写真撮影:岸田哲平,中河原理英 制作:アイランドフィルムズ 企画:佐藤優子
製作:葛西純映画製作プロジェクト(スペースシャワーネットワーク+ポニーキャニオン+プロレスリングFREEDOMS)
配給:SPACE SHOWER FILMS ©2021 Jun Kasai Movie Project.
公式サイト 公式twitter 公式Facebook

2021年5月28日(金)よりシネマート新宿ほかにてロードショー!
以降順次公開

2021/05/26/18:32 | トラックバック (0)
インタビュー記事
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

主なキャスト / スタッフ

記事内容で関連がありそうな記事
メルマガ購読・解除
INTRO 試写会プレゼント速報
掲載前の情報を配信。最初の応募者は必ず当選!メルメガをチェックして試写状をGETせよ!
新着記事
アクセスランキング
 
 
 
 
Copyright © 2004-2024 INTRO